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7.幻影なのか憧れなのか押し付けでないと思いたいものに

 煩わしいと、煩いとのしつけられるように、幾たびもされたことがある、彼という人物の話をしようと思う。今でも時々思い出すからだ。彼のことを思い出す度に、いくつもの感情の動きを与えられた方だと、不可思議に思う。人の心の動きとは本当に不思議だ。今でも、彼に私が感じていた感覚が何なのかと問われるとうまく答えることが出来ない。私も彼も、決してお互いを友人だと認めることもなかったし、お互いある意味嫌いあっていたけれど、私は、かなり一方的に何でも彼に話しかけていた。はた目から見れば、私は、搾取されている側に見えていただろうと思う。彼はとんでもない日常を送るある意味普通じゃない方だった。私は、搾取される代わりに、彼から感情の搾取をしていたのだろうと思う。はた目から見れば、それは異様な関係だろう。それか、広い世間から見ればよくある話でもあるのかもしれない。私には、……当事者でありながら、その判断がつかない。ただ、嫌ってもいるが、私は、彼にとても大きな親しみを感じていたし、なんでも、一方的に彼に話し続けた。私は、彼に会った当時、心の状態が異様な有様であり、死を望み続けていた時期だった。今でも、完全に望んでいないとは言えないが、当時のように、まるで喫茶店にお茶でも飲みに行くというような軽い感覚で、簡単に死へと行動する状態ではない。彼は、異様な方だったが、搾取する代わりに、カラリとしたところがあり、私からの度々の一方的な連絡をあまり気にしない方で、心の機微を読み取ることが男性でありながら、異様に鋭かった。自らの性質……人に対し妙な安心感を与える性質を理解し、利用しているような自分の魅力を最大限に使っているような人物でもあった。声がとても耳に心地よく、心がけだけは、深く優しい……けれど、それらはほとんどが口だけの……そういう方だった。

 今にして思えば、私が、彼をそういう方だと決めつけてしまっていたことも原因なのかもしれない。私が彼に与える心の負荷は相当のものであったと思うし、彼の視点から見れば、彼から接触を切らなかっただけ感謝しろという気持ちであるだろう。彼が、私と関わっている間に一緒に傍にいることになった女性のお陰で、彼の性質は良い方向に傾いたのだと彼は最後の方で私に吐き出したことからもわかるように、やはり、私と彼は、友人にもなり切れない”もどき”であったのだろうと思う。搾取しあいながら嫌いあいながら離れられない関係。そしてそれらは、”もどき”であった。友人とは決して言えない、よくわからない関わり。

 幻影なのか、憧れなのか押し付けでないと思いたいものが、私が彼に向けていた感覚なのだろうと今になって思う。彼から与えられた様々な感情の価値観への気づきは、私の心をとても軽くし……そして、信じていたものを全て無くし、空白にさせる位には、彼は私の人格の再形成に深く関わる方であったことは確かで、私が根っこの部分で彼に対して、とても大きな感謝を感じていたことも確かだった。あまりにも大きな感情が入れ代わり立ち代わり、彼と関わると膨れ上がる為、何度その感情が歪みそうになったかもわからないほどだ。彼が私に一度言ったことがある。お前と関わると、俺は宇宙の中を漂っているような放り出されるような感覚になる、だから、うざくて嫌なのだと。意味不明だが、私も彼と接すると、なんともいえない奇妙な感覚に支配されるので、……それはひどくなんというか共感したのを覚えている。私は、何も見えておらず、敢えてなにも見ようとはしてこなかった。そのために、それを思う度に、私は彼とは相性が悪すぎると感じたものだ。毒にしかならないだろうに、自分から切ろうとはしないめんどくさがりで適当な彼を何度憎みたくなったかわからない。……今は、やっと離れられたわけだが、……なんというか、やはり、今も時々思い出す。彼は、今でも、時折、私が理解できないような空間に思考を漂わせているのだろうかと。

 憎々しく親しみを感じて今でも思い出すとイラっとくる彼にこの文章をささげようと思う。

 ……まぁ、彼がこの文章に気づくことなど、私が死んでも無いと思うが、その方が良い。ネットの海に行 先が不明なこの文章が漂う方が、彼にささげる文章としてはふさわしいと感じるから。

 私は、きっと、彼に感謝している。

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