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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編シリーズ( ・∇・)

最後の地球人

作者: 葛之葉

「また手作りハンバーグだけかよババア! たまにはステーキ肉とか買ってこい!」


 僕は今母親に対して貧乏な夕御飯しか出さない事に怒りを覚えていた。

 僕、厚木啓友の家は所謂母子家庭で、母一人子一人の家庭だ。


 なんでこんなに貧乏な生活を送らないといけないんだと、母に普段から怒りをぶつけている。


 テーブルから落ちたハンバーグと皿を悲しそうな表情で拾う母。

 僕はそんな母親を無視してカップラーメンを作り、それを持って部屋に戻っていた。


 カップラーメンを食べながら部屋でテレビを見ていた僕は、いきなり場面が代わり緊急放送に切り替わり何事かと思いテレビを凝視した。


『本日、最後の地球人の生き残り二名を発見しました、〇〇県〇〇市〇〇町にすむ厚木啓子四十六歳と厚木啓友十七歳です、発見次第抹殺してください』


 ‥‥‥は?


 厚木啓友って‥‥‥この土地に住むこの年齢って‥‥‥

 何? ドッキリかな?

 辺りを見渡すが隠しカメラみたいなのは見当たらない。


 その時、階段を凄い勢いで誰かが上がってきた。


「啓友! 逃げなさい!」


 慌てた表情で母が叫んだ。


「何言ってんだよババア、逃げるって何だ‥‥‥」

「良いから早くしなさい! これお弁当と着替えだから!」


 意味がわからない。


「後で母さんも行くから裏山の開けた場所まで走りなさい!」


 普段の母からは信じられない力で外に追い出された。


 仕方なく僕裏山を登った。

 ふと、後ろが気になり家を見ると沢山の人間が取り囲み、家は火に巻かれていた。


「な、何だよ! どうなってんだよ!」


 ババア‥‥‥母は大丈夫なのか!?

 家に向かおうとした時、山の下から懐中電灯の光が無数にこちらに向かい近付いてきた。


 あまりにも訳の解らない状況に恐怖し、母を心配しながらも僕は奥へと逃げ出した。


 そして、目的の場所に辿り着いた僕は母の作ったお弁当を食べる為に蓋をあけた。


 中には夕御飯に出ていたハンバーグとご飯が無理矢理詰め込まれていた。


 僕の分は昨日駄目にした筈だから、恐らく母が自分の分を慌てて詰めたのだろう。


 昨日までは普通に学校に行って、家に帰ったらゲームをして‥‥‥何でこんなことになったんだろう。


 母の手作りのハンバーグは冷めていたが、とても温かく感じた。


 僕が座り込んで顔を埋めついたら、母が僕を呼ぶ声が聞こえた。


「啓友! 無事なのかい!」


 母さん‥‥‥僕は涙が溢れて止まらなかった。


「啓友、こっちに来なさい」


 母が岩に付いていた不自然な突起を押すと、中から人が一人入れる程度のカプセルが出てきた。


「この中に入りなさい!」


 無理矢理僕を押し込むと母が蓋を閉じた。


「もうアイツ等を騙しきれない、アンタだけでも!」


 何を言ってるのか解らないよ母さん。


「母さんも!」


 僕は叫ぶが、母さんは手に持っていた角材を構えて背を向けた。


「啓友、貧乏な家で御免なさいね、最後位は母さんアンタの為に頑張るから」


 何言ってんの?

 最後って何だよ!


「居たぞ! 地球人の生き残り共だ!」


 ああ、何かが来た、人間に見える何か(・・)が。


 母さんの足が震えている。

 それでも逃げようとしていない。


「母さん開けて! これを開けて!」


 母さんは無言で何かのボタンを押した。


 カプセルが消えてゆくなか、母さんが人間に見える何か(・・)に襲われている姿が見えた。


 やめろ! やめてくれ!


 僕の声は誰にも届かなかった。


ーーーーー


『本日、異星人による地球侵略が開始されました、市民の皆様、最後まで希望を捨てず‥‥‥』


 僕は三十年前に売っていたテレビを、テレビ以外に何も無いアパートの一室で横目に見ながら、全身に武器を纏い手に持つナイフを眺めていた。


 仇は撃つからね母さん、だからそっちに行ったらまたハンバーグを作ってください。


 それじゃ、行ってきます。

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