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第005話 種族を決めます

よろしくお願いします。

「じゃあ、始めるわね」


 お姉さんが手元のパネルで操作すると、横に大きな鏡が出てきました。その鏡の中に『わたし』が映っています。ゲームの中なのにちゃんと『わたし』の顔になってますね。体には、袖や裾の長い、黒いウェットスーツのようなものを着ていました。


「まずは名前ね。何にする?」


「『ハル』でお願いします」


 そのままなんですが、ゲームではいつも『ハル』にしています。違う名前にすると名前が表示されたときに自分のことってわからないときがあるんですよね。ちなみに、ナツも『ジェプロ』では『ナツ』にしたと言ってました。


「『ハル』ね。登録っと」


《名前が『ハル』に決定しました》


 鏡の中の『わたし』の上に『ハル』と表示されました。なるほど、キャラクター作成で決めたことが、この『わたし』に反映されていくんですね。


「こんな風に名前が頭の上に出るんですか」


「ゲーム中では出ないわよ。このゲームは、できるだけリアルっぽいのを目指してるから、名前どころか、NPCやモンスターにマーカーも出ないし、HPやMPのゲージも出ないのよ」


 これなら人の名前を間違えなくて良いと思ったんですが、ちょっと残念です。


「同じ名前は、127人いるわね」


 結構いるんですね。

 100万人もいるなら、127人は少ない方でしょうか。


「次は性別ね。女の子よね?」


 もちろんです。


まれにだけど誤判定があるのよ。男性が女性になるなら面白くて良いんだけど、女性が男性って判定ケースの方が多くてね。もし貴方が男の子だったら、『VRMMOのキャラクターが可愛すぎる、男の娘なんてありえない』みたいな話ができるんだけど」


 なんですかそれは……。


「じゃあ次は種族ね。さあ、ここで1つ目の特典よ! なんと好きな種族を選ぶことができるのよ! これはスゴいわね! やったわね! 私、エライ!」


「普通は選べないんですか?」


 弟のナツは種族を蜥蜴人族リザードマンにしたと言ってました。蝙蝠人族バットマンとどちらにするかで、かなり悩んだそうです。「きっと竜人族ドラゴニュートに進化する」とかなんとか意味のわからないことを言ってました。でもトカゲって、どんな姿になってるんでしょうね?


「……ノリが悪いわね。通常はね、80の種族の中からランダムに5つの種族が出てきて、その中から選ぶのよ」


「じゃあ、なりたい種族があっても、なれないことがあるんですか?」


 でも、種族って80種類もあるんですね。蜥蜴人族や蝙蝠人族があるくらいですから、そんなものなんでしょうか。


「ええっとね。キャラクター作成とそのあとのチュートリアルは、ログアウトすれば途中で止めることができるの。その場合キャラクター作成の最初からになるんだけど、出てくる種族がリセットされるから、エルフになりたいって人は、エルフが出てくるまでログアウトとログインを繰り返すわけ。ただね、フルダイブ型だとログインやログアウトに数分かかるから、回すのはかなり大変なのよ。でも、ずっとキャラクター作成をやり続けてる人もいるし、それで作りたいキャラを作った猛者もさもいるのよ」


「あの気持ちの良いログインを繰り返すわけですか……」


 それはちょっと危ない感じがしますね。


「あら、気持ち良かった? 思考加速の適性が高いのね」


「思考加速?」


「そう。フルダイブ型VRのひとつの側面として、肉体の制限が外れることによって通常よりも思考を加速することができるの。思考加速の適性が低いとログイン時の体感時間は短くなるわ。気持ち良いとか感じる間もないわね。体感時間で5秒も続いたら適性が高いわね」


 30秒くらいあった気がするんですが。


「適性は低いより高い方が良いわよ。それより種族を選びましょう」


 そうでした。


「好きな種族を選んで良いんですか?」


 自由に選べるならエルフにしましょう。

 森に住んでるイメージありますし、植物とも相性が良さそうです。


「ふふふ、それだけじゃないのよ。この特典はなかなか出てこないレアな種族を選べるだけじゃなくて、竜人族や魔人族みたいな特殊な種族も選べるのよ」


「えっと。エルフでお願いします」


「ええ、なんでっ? 確かにエルフは出にくいけど、頑張って回せば出せるし、せっかくなんだから、もっとレアなのにしましょうよ! 種族によって能力値の初期値も違うんだから。竜人族とか強いわよ、たぶん」


 なんか変に目立っちゃいそうですしね。


 ◇


「うーん。あ、そうだ。これなんかどう?」


 しばらくパネルを操作しながら悩んでいたお姉さんが、パッと顔を上げました。わたし以上に真剣に選んでくれてます。なんだか申し訳ない気持ちになりますね。


「ハイエルフですか?」


「そう。名前からしてエルフの上位だし、見た目もそんなに変わらないと思うわ。イベントのNPC用の種族みたいだけど、たぶん大丈夫でしょう」


 そう言ってお姉さんが操作すると、鏡の中の『わたし』の姿が変わっていきます。髪の毛が青に近い銀色になって、肌がかなり白くなりました。耳もニョキっと尖ってます。


「で、こっちがエルフ。ほら、あんまり変わらないでしょ?」


 お姉さんが操作するたびに鏡の中の『わたし』の姿が切り替わります。たしかにエルフもハイエルフもあまり違いがありません。ハイエルフの方が肌が白くて、髪に艶があるくらいでしょうか。これならエルフと言っても通りそうです。それに、こうして並べられると、綺麗な方を選びたくなりますよね。

お読みいただきありがとうございます。


導入部はもっと短くなる予定だったんですが。

もうしばらくお付き合いくださいませ。

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