第021話 広場で少し待ちます
よろしくお願いします。
「つまり、早くロクストの街に行きたいから、大勢の冒険者を雇って攻略に協力させるために、ポンと500万Gを出そうってことなんだな?」
ポリスさんがまとめてくれました。
その通りです。
「500万Gじゃ足りませんか?」
「いや、足りるかどうかなら、かなりの数の冒険者を雇えるが……。なんというか、その金の使い方がな。まぁ嬢ちゃんの金だし、別に良いんだが。うむむ」
なんか悩んでしまいました。
「ちょっと待てるか? 1時間くらいだ」
わたしが頷くと、ポリスさんがメニューを操作します。そして、ボンヤリ光った後消えてしまいました。ポータルで移動したんでしょうか。傍から見るとこんな感じなんですね。
◇
さて。待ってる間どうしましょう?
広場から離れるのは良くないですよね。
今、広場には20人くらいの人がいますが、相変わらずプレイヤーはいなさそうです。ゆっくり歩いてるご老人や、おばちゃんや職人さんっぽいおじさん達ですし、もしこれがプレイヤーだったとしたら、かなり凝ったプレイですね。
せっかくなので話でも聞いてみましょうか。
「この街についてかい? うーん、そうだね。昔は農業が盛んだったから『農業の街』なんて呼ばれているけど、今はほとんどの農家が自分の食べる分を作ってるくらいなんだよ。農作物を売り出してるのは、数人の地主とそこで働く小作人くらいかな。だから『旅人さん』には期待してるんだよ」
「これかい? リンゴだよ。知らないのかい? 食べると甘い果物なんだよ。 値段? 1個16Gだよ。高いだろ? 昔は育ててる農家もあったんだけど、今は森の中にたまに生ってるのを採ってくるくらいで数がないんだよ」
「農業のことは農業ギルドで聞くと良いよ。北門の近くにあるよ。え? 広場じゃないのかって? 昔は北門の外に畑が多くてね。そのときに建てたからなんだよ」
「南北は山に囲まれておるし、街の周辺に強いモンスターが出ないから街を護る結界の効果で、充分モンスターを追い払えるんじゃ。だから街の外にある畑もモンスターの被害はないわけじゃ。普通の獣はくるがの」
「この街は4メートルくらいの壁に囲まれていて、東西南北にそれぞれ門がある」
「商業ギルドが売り出している山の麓から街までの土地は、本来は国の所有物なんだけど商業ギルドが管理を移管されているんだ」
「大通りの先には東西南北の門があって、東門から出て街道を進むとニーストの街があるんだよ。西はヨンストがあるよ」
「んー。街の端から端まで歩いたら15分はかかるね」
「神様にお祈りするなら教会だよ。教会の横に孤児院があるよ」
「どこの街でもそうだが治安の悪いエリアがある。嬢ちゃんみたいなのはあまり近寄らない方が良い。この街だと北東の辺りがそうだな」
「町の南北にある山は、北の山がサンノース山、南がサンサウス山だ」
気づいたら人が集まってました……。
◇
「嬢ちゃん、待たせたな」
ポリスさんです。
おや?
誰か連れてますね。
「こんにちは、僕はヒョーク。ポリスさんの友人だよ」
そう名乗ったのは、大学生くらいの男の人でした。地味なローブのような服、ボサボサっとした黒髪、耳が尖っているのでエルフでしょか。ポリスさんに比べると背はあまり高くありません。ちょっと皮肉げな笑顔のせいで、大人というよりイタズラ好きな小学生の男子のような感じがします。
その男の人が真顔でこちらを見ました。
「君は何者だい?」
視線が一瞬左手の指輪に向けられた気がします。思わず手を後ろに回して隠してしまいました。
お読みいただきありがとうございました。




