第018話 マイホームが必要です
よろしくお願いします。
「ごめんなさい……」
お姉さんが帰ってきました。
「で、土地は買ってくれるんですか?」
牧場にして動物たくさんを飼うわけですから、広ければ広いほど良いですよね。財布の中のお金も減らせますし、ここは買えるだけ買ってしまいましょう。
「買いたいです。ちなみに、1面ってどのくらいの大きさなんですか?」
もし小さいなら、100面じゃ足りないかもしれません。
「えっと、1面は10m×10mです」
……全然ピンときません。
「とりあえず100面買います!」
足りなかったら買い足しましょう。
「え? 本気ですか?」
なんで驚いているんです?
「おばあ……支部長が『土地をそんなにまとめて買うやつなんていない』って言うんです。でも、支部長が頑張って土地を準備したのに買ってくれる人が全然来ないので、もし買ってくれる人が来たときは大量に買ってもらおうと考えたんです。大は小を兼ねるって言いますし。私も正直『100面は無いかな?』って思ってたんですが、本当に買ってくれるんですか?」
「はい」
「お金はありますか?」
「はい」
「『ホーム』もありますか?」
「……はい?」
ホームって何でしょう?
「ないんですか? 商業ギルドの決まりで『ホーム』を持ってない『旅人さん』には、土地を売ることができないんです」
え?
「『旅人さん』は、この世界と『旅人さん』の世界を行き来しますよね? 『旅人さん』がこの世界にいないときも、土地に所有権を持たせたままにしておくには『ホーム』が無いとダメなんです。土地と離れた場所でも良いんですが、この世界のどこかには必要なんです」
え?
「その『ホーム』というのは、どこで買えるんですか?」
「『ホーム』は『マイホーム』を買うか建てるかするんです。そうすると、そこが『ホーム』になるんです。『マイホーム』を買うには『マイホーム購入券』、建てるには『マイホーム建築許可証』が要ります。どちらも発行しているのは『ロクスト』の街のギルドなんです」
◇
「お、嬢ちゃん。その顔はダメだったみたいだな」
商業ギルドから出て、ションボリ歩いているわたしに声をかけてきたのは、ポリスさんでした。
「はい。『旅人』は『マイホーム』を持ってないと、土地を売ってもらえないそうなんです」
土地を買っていく人がいないのは、そのせいですよね。
「うーん、やっぱりか。うろ覚えだったけど、そうじゃないかと思ってたんだよ」
さっきポリスさんが、わたしの住んでる場所を気にしていたのはそのためだったんですね。あと、もしかしてわたしが商業ギルドから出てくるのを待っていてくれたんでしょうか?
「で、どうするんだ?」
「『ゴースト』の街に行ってみます」
プレイヤーは、まだ『ゴースト』の街までしか到達できてなくて、現在『ロクスト』の街との間にある迷宮とBOSSモンスターを攻略中なんだそうです。
「そうか。ま、街道はそのうち解放されるだろう。今は焦らずにできることをすると良い。この時間帯はたいていここにいるから、何かあったら何でも聞きに来な」
そうですね。
焦っても仕方ないですよね。
今日はもうログアウトします。
また明日、頑張りましょう!
お読みいただきありがとうございました。




