第016話 所持金を確認します
よろしくお願いします。
たぶん、サンストの街に着きました。
たぶんなのは、また噴水のある広場に立っているのですが、さっきの街の広場と見た目があまり変わらないからです。かなり距離はありますが、街を挟むように山が聳えているのが見えるので、さっきの街ではないことはわかります。それにこの街の広場には人があまりいません。鎧を着ている人は数人程度です。話しかけたら「ようこそ、サンストの街へ」とか言ってくれませんかね?
念のため、もう一度メニューを開いて『ポータル』から『サンスト』を押してみます。
視界が変わって移動しました。
やはり山が見えます。
ここがサンストで合っていたようです。
同じ街の中でもタウンポータルは使えるんですね。ちょっと面白いです。
メニューを開いたまま広場から通りに出ると、メニューから『ポータル』の文字が消えました。どうやら『ポータル』が使えるのは、噴水のある広場の中だけのようです。ちなみにメニューは何か選ぶか、忘れると閉じてしまいます。自分の意思で閉じることもできます。
タウンポータルを使うと、広場のどこに出るかはバラバラのようですが、いつも噴水に背を向けています。
調子に乗って何度も試してしましたが、これ使用料とかかからないんでしょうか? コッソリ何か引かれてたら、ちょっと怖いですね。
◇
サンスト:15時32分02秒
東日本:21時32分02秒
タウンポータルで遊んでいたら、いつの間にか30分くらい経ってました。恐ろしいですね。これが思考加速の効果なんでしょうか。
それと、メニューの時計の横に街の名前が出てたんですね。全然気付いてませんでした。とりあえずこれで、ここがサンストの街であることは間違いないようです。
わたしがサンストの街に来たのは、農業の街だと言うことと、畑にできる土地を売ってると聞いたからです。
いつも遊ぶゲームだと、最初から少しの土地が用意されてることが多いのですが、弟のナツがたまに勧めてくるゲームだと生産がサブで、土地を入手するまでストーリーを進めないといけないことがよくあります。今回もまず、買うか借りるかして、土地を確保しようと思います。
お姉さんが、装備品の特典の代わりにお金をくれると言ってましたが、そのお金で土地を買ったり借りたりできるでしょうか? そもそも、わたしは今いくら持っているのでしょう?
『ハルの財布』
所持金:2,000G
メニューの『アイテム』、おそらくこれがアイテムボックスなんだと思いますが、その中に財布が入ってました。所持金は2000G。単位はGのようです。お金の価値がよくわかりませんが、これで土地は買えるでしょうか? 1Gが1ドルくらいなら……。それでも土地は買えない気がします。
アイテムボックスには、他にもアイテムが入ってました。
『スーパーレアギフトボックス』
何が出るかは、あなたの運しだい!
『鳩の手紙:装備品代』
幸運な貴方へ。初期装備品の特典の...
『鳩の手紙:お詫び状』
幸運な貴方へ。ごめんなさい。チュ...
すっかり忘れてましたが、『スーパーレアギフトボックス』がありましたね。これ、土地が買えるくらい高く売れる物が出ないでしょうか? あと、他にも『鳩の手紙』というのが2つあります。鳩? 伝書鳩ってことでしょうか? 鳩のサブレが浮かびましたが関係ないですよね?
とりあえず広場の隅に移動して、一つ目の『鳩の手紙』を押してみます。
《『5000000G』を入手しました》
ホワン、という変な音と共に、手紙が出てきました。白い無地の便箋1枚で、日本語で何か書いてあります。
『幸運な貴方へ。初期装備品の特典の代わりのお金を贈ります。あなたのメガミより』
変な文面ですが、内容からしてお姉さんからの手紙のようでした。
お金?
さっきの2000Gでしょうか?
アイテムボックスを見ると、財布の中の所持金が増えていました。
『ハルの財布』
所持金:5,002,000G
「ふぇ!?」
ビックリして、思わず変な声が出ました。
辺りを見回してみますが、幸いこちらを見ている人はいません。たぶん。
もう一度手紙を読み返そうと思ったんですが、いつの間にか持っていたはずの手紙が無くなっています。アイテムボックスにも『鳩の手紙:装備品代』がありません。もしかして1回しか読めないんでしょうか? スパイの手紙みたいですね。
それにしても5百万G……。
どう考えても大金ですよね?
お姉さんは『トッププレイヤー相当の防具が買えるだけのお金』って言ってましたが、トップのプレイヤーというのはこんなに稼ぐのでしょうか? それともゲームの中だと、これくらいは大した金額じゃないのでしょうか?
◇
気を取り直して、もう一つの『鳩の手紙』を押してみます。1回しか読めないと思うと緊張しますね。
《『5000000G』を入手しました》
《称号『小金を持つ者!』を取得しました》
再び、ホワン、と手紙が出てきました。
『幸運な貴方へ。ごめんなさい。チュートリアルがあったのに帰してしまいました。幸い、キャラクター作成は終わっていたのでイベント自体は無くなりませんでした。待ってたんですが、ログインしてこなかったので、お詫びに私の全財産を贈ります。運営のキャラクターがゲームの中で遊ぶために渡されたお金なので、汚れたお金ではありせん。何かに役立ててください。あと、お願いだからこのことは黙っておいてください。ボーナスの使い途が決まっているメガミより』
『ハルの財布』
所持金:10,002,000G
「ふぇぇ!?」
また変な声が出てしまいました。
仕方ないですよね。
お読みいただきありがとうございました。




