第014話 キャラクター作成が終わりました
よろしくお願いします。
「じゃあ、最後の特典の話をするわね。5つ目の特典はキャラクター作成とは関係が無くて『すでにプレイヤーが到達している街に移動できる権利』なのよ」
さっきの『住人モード』は、「ホントに有効にするの?」とお姉さんに止められかけたんですが、最終的に「そうね……」と納得してくれました。
「大きな街の広場には『タウンポータル』という移動装置があるの。街と街とは、そのポータルで行き来できるんだけど、一度行ったことがある街じゃないと移動できないのよ。東日本サーバだと『ゴースト』の街まで到達しているプレイヤーがいるから、貴方も『ゴースト』の街までは移動できるようになるわ」
それは便利です。
「牧場するのに向いた街はありますか?」
「3つ目の街『サンスト』が農業の街って呼ばれているわ。畑にできる土地も売ってるから、その街に行くのが良いと思うわよ」
農業の街!
すぐその街に移動できるんですか。
これは、すごく良い良い特典ですね。
◇
《キャラクター作成が終了しました》
「これでキャラクター作成は終了ね。……って、住民モードを有効にしちゃったからメッセージも表示されないんだっけ」
やっと終わりました!
すごく時間がかかったような気がします。
「この後はどうしたら良いんですか?」
周りは海ですし、どうしたらいいんでしょう? どこかに移動するんでしょうか?
「貴方の場合、特別にキャラクター作成に割り込んだから、ゲームを始めるには一度ログアウトしなくちゃいけないのよ。ログアウトは、メニューから『ログアウト』を選ぶのよ」
メニューを開いてみると『ログアウト』があります。右上の時刻を見ると、もう23時半を過ぎていました。そろそろ寝ないと明日起きれなくなりそうです。
「ありがとうございました」
お姉さんにお礼を言います。
「……貴方、あまり特典とかに興味がなかったみたいだから、押しつけになっちゃったんじゃないかしら?」
「そんなことないです。ちょっと大変でしたが、一人でキャラクターを決めるより楽しくできたと思います」
聞いていたキャラクター作成とは違いましたが、一緒に髪型の話をしたり、服を選んだり、疲れることもありましたが楽しい時間でした。
お別れだと思うと、寂しいです。
「そう? じゃあ、キャラクター作成に人型のインターフェースを用意するように提案してみようかしら……」
お姉さんも、少し寂しそうです。
「貴方と話をしていてね、私の作るイベントは独りよがりだったかなって思ったわ。楽しんで欲しい、私の創ったものを誰かに楽しいって言って欲しい、そう思ってた。でも、貴方はチートな特典より、髪型とか服を選んでる方が楽しそうだった。景品増やして豪華にすればユーザに喜んでもらえると思ってたのに、そうじゃなかった」
VRギアは高いですし、まだ入手が難しいそうなので、いまこのゲームを遊んでいる人は、すごくゲームが好きな人なんじゃないかと思います。わたしは暇なときにちょっとゲームをするくらいだったので、このゲームの平均的なプレイヤーではないかもしれません。わたしじゃなかったら、お姉さんのイベントも豪華な特典も純粋に喜べたんじゃないでしょうか。
ナツだったらどうだったでしょう? ちょっと聞いてみたい気もします。
「ここに来たのが貴方で良かったわ」
ホントですか? わたしは、お姉さんのイベントを台無しにしませんでしたか?
「この世界はゲームだから、いえゲームだからこそ。創った人がいて、この世界を選んで遊んでくれる人がいる。運営は、この世界の神様だけど、現実の神様と違って新米だし、ただの人間だわ。でも、創った世界を、住人を愛している。そしてなにより、この世界を訪れる『旅人』に、この世界を楽しんでもらいたいと思ってる。私はちょっとやり方を間違えちゃったかもしれないけど、その気持ちに嘘はないわ。それを感じてくれたら……」
お姉さん、笑顔です。
でも、会った頃の笑顔と違います。
「この世界も、貴方にきっと優しいわ」
◇
「また会えます?」
「また会えるように頑張ってみるわ」
メニューを開いて『ログアウト』の文字を、ちょんと押しました。視界にうっすらと靄がかかっていきます。ログインのときとは違うんですね。
お姉さんに小さく手を振ります。
お姉さんも振り返してくれました
「……あっ!」
少しずつ視界が薄れていく中で、お姉さんの焦った声が聞こえた気がしました。
お読みいただきありがとうございました。
ようやく導入部とした第1章が終わりました。長々とお付き合いありがとうござした。ここまで書けたのも、読んでる人がいるというプレッシャーと、読んでくれてる人がいるというモチベーションのおかげでした。本当にありがとうございます。
次回は第1章のまとめページ(予定地)として、次々回から第2章に入ろうと思います。なんだか投稿前に考えていたペースとは違ってきています。今後もどうなっていくかわかりませんが、よろしくお願いします。
ちなみに、お姉さんが女神風の格好していたのは、名前が「目上メグミ」なのでシャレのつもりでした。ハルが名前を聞いてくれなかったので、お姉さんも言い出すタイミングがありませんでした。




