第013話 住民モードを有効にします
よろしくお願いします。
「じゃあ、実際に『防具』を装備してみましょうか。メニューを開いて『装備』を選んでみて」
あれ?
「メニューってどうやって開くんですか?」
「あ、フルダイブ型は初めて? この手のメニューは開こうと思えば開くわよ」
そうなんですか!
……メ、メニューよ開け!
「わっ」
目の前の空間に、ノートくらいの半透明なパネルが浮かびました。ファンタジーですね。
「ふふふ。体だって思い通りに動くでしょ? どっちも同じよ」
そう言われても不思議な感じがします。
メニューのパネルには左側に『アイテム』『アクティブスキル』『ステータス』『装備』『フレンド』『設定』『ログアウト』という文字が、右上には時刻が2つ表示されていました。『アイテム』『アクティブスキル』『フレンド』『設定』は、文字の色が暗くなっています。
「時刻が二つあるでしょ? 左側がゲームの中の時刻で、右側が現実の時刻よ」
??:23時22分35秒
東日本:23時22分35秒
なんで二つあるんでしょう?
「この空間は別だけど、ゲームの中と現実は6時間ずらしてあるのよ。ほとんどのユーザが夕方から夜にかけてプレイするわけだしね」
確かに夜にログインして周りが真っ暗だったり、お店が閉めってたら困りますね。
「NPCも生活してるから、ゲームの中で夜の時間帯は閉まってる店が多いわ。ただ、天候はまだ実装されてないからずっと明るいけどね」
◇
「メニューを開いたら『装備』を選択してね。慣れれば目線とかで操作できるけど、まずはデバイスみたいに指で操作するのが良いわよ」
『装備』の文字をちょんと押します。
装備品のリストが表示されました。
『青いワンピース』※
防具:胴・腰 防御力:1
深い青色の可愛らしいワンピース。
『角兎の革鎧(胴)』
防具:胴 防御力:5
ホーンラビットの皮から作られた白いベスト型の部分鎧。
『角兎の革鎧(腰)』
防具:腰 防御力:5
ホーンラビットの皮から作られた白いスカート型の部分鎧。
『角兎の革靴』※
防具:脚 防御力:5
ホーンラビットの皮から作られたファーの付いたブーツ。
『神与の守秘指環』※
装飾品 鑑定無効 譲渡不可 破壊不可
「今身につけている装備品が並んでるでしょ? 胴と腰は先に選んだワンピースを装備したことになってるの」
名前の横にある※マークが装備してるってことですね。試しに『角兎の革鎧(胴)』を選ぶと、※マークが移動しました。『角兎の革鎧(腰)』も選んでおきましょう。
「重ね着するとき、とくに服の上に何か着るときは、装備を移すのを忘れないようにね」
◇
「次が最後ね。ゲームを進める上での3つの設定があるわ。後からでも変更できるんだけど、キャラクター作成の項目だから説明してくわね」
あれ?
もう1つ特典がありませんでした?
「まず、痛覚設定。痛みをどれくらい感じかね。といっても、未成年は最大で20%までなんだけど」
痛みですか。
できるだけ少ない方が良いですね。
「痛覚設定を高くすると、防御や耐性系のスキルの習得・成長が良くなるのよ。ほんのちょっとだけだけどね」
そう言われても痛いのは嫌です。
でも、痛みで起きたりしないんでしょうか。
「良い手法が開発されたのよ。『痛い!』と感じるんじゃなくて、『いま痛かった!』って感じるのよ。だから痛みでショック死するようなこともなしし、目が覚めたりもしないわ」
よくわかりません。
「拘りがないなら5%くらいにしておくのが良いわね」
「じゃあ、それでお願いします」
「はい、……っと。じゃあ次は名前の公開設定ね。何か大きなイベントを達成したときなんかに、サーバ内のユーザ全員に向けてメッセージを出したりするの。そのときに、名前を載せるかどうかね。公開だと『ハルが○○を達成しました』になって、非公開だと『とあるプレイヤーが……』になるわ」
「非公開で!」
わたしの名前が出るようなこと無いと思いますが、当然非公開です。
「じゃあ最後ね。これはあまりおススメしないんだけど、実験的な設定で『住民モード』ってのがあるの。正式には『仮想生活オプション』って言うんだけど、ゲームの中の住人の気持ちになってプレイするモードなのよ」
なんだか面白そうです。
なんでおススメじゃないんでしょう?
「もともと、このゲームはリアルっぽくするためにNPCやモンスターの頭にカーソルとかは出ないし、HPのゲージやレーダーのような地図も表示されないわ。このオプションを有効にすると、さらにログアウト以外はゲームの中の住人と同じことしかできなくなるの。NPCも世界の仕組みとしてメニューは使えるけど、自分のステータスも見れなくなるし、フレンド機能も使えなくなるのよ」
ふむふむ。
「かなり不便になる代わりにNPCの好感度が上がり易くなったり、レベルアップ時の能力値の上昇やスキルの習得・成長が良くなったりするの。だから、1%未満だけど有効にしてるユーザもいるわ。仲間との連絡が不便になるし、パーティチャットとかも使えなくなるから、ほとんどはソロって話だけど」
好感度が上がり易いのはありがたいですね。前にやってた牧場のゲームは、好感度を上げるための贈り物攻撃がすごく大変だったんです。
「ここで決めなくても、後から設定することはできるのよ。ただ、1回設定するとメニューから『設定』自体が使えなくなってしまうから、戻すことができないのよ」
あまりデメリットも感じないですし、忘れちゃいそうですからここで有効にしちゃいましょう。
お読みいただきありがとうございました。




