行き違いの……。夏の思ひ出
今は秋だ。風は冷たいし、栗ご飯やキノコご飯や里芋汁や焼き芋や…………。 まぁ食べ物の誘惑が多い。しかしこれ等は乳と卵アレルギーの俺でも食えるので何ら問題ない。 腹は冬ごもりにだんだんだんと段を増やしている。削いでくれ。
食べれるものが多い秋は過ぎ去った夏の傷を癒してくれるような気がする。夏の間振られ続けたアレ。好きで溺れても良いほど好きな白いアレ。食べ過ぎれば美しいバラの棘の様に手痛いしっぺ返しを食らうアレだ。
秋は寒さが増してきて嫌いだが、秋は俺の事が好きなんだと思う。何せ食べられる物をせっせと作ってくれるのだからな。貢がれるモテモテリア充とはこんな感じなのかも知れない。まぁ気のせいだろうがな。
さて、そんな思い上がった俺が夏の思い出を語ってやろうではないか!
と、偉そうに言った瞬間後悔して土下座したくなった。気の小ささは常時発動中だ。勿論自分より強い奴には威張り腐る。どうだ、最低だろう。腐れてしまえ。あぁ、もう腐っていたわ。ハッハッハッーー!!
夏は誘惑の季節だ。当たり前だが夏は暑い。ゆえにアノ魅惑の食べ物を持った奴等が、当たり前にそこら中を歩くんだ。爆発しろ。
今日も今日とて、俺は親友と二人プールに行く途中だった。そしてその道中、必ず俺はその魅惑の食べ物を持った奴等と出会うんだ。
とくに女ども!集団で持って歩くな! 本当に羨ましい。妬みで死にそうだ。南無南無。
何がかって?《ソフトクリーム》だよ!!また一人女がソフトクリームを持って前から歩いてきた。しかもチョコとバニラのソフトクリームだ!! 俺が一番好きな味だ!!どちらも味わえるお得な幸福、舌先に甦るは牛乳の濃厚さとチョコのほど良い甘さとひんやりと溶けていくあの天国。至福、幸福、神に祈りを!
俺にソフトクリームを!新しいやつな。
女の先にはソフトクリームの売り場がある。
チョコとバニラ、チョコとバニラ、チョコとバニラクルクル渦をまく魅惑のソフトクリーム。 もう釘付けだ。離れないぞ呪テーム!!
と、俺の視線の先を追って、親友が聞いてきた。
「ん?食うのか?」←女の話。
「食った瞬間逝っちまうわ!!」←女が持つソフトクリームの話。
「お前………アレでイケんのか?」←近づき見えた顔はなかなかの凶器。
「イチコロだっつーの!!」←ソフトクリーム。
「「…………………。」」
何だろうか?噛み合っていない気がする。奴もそれは感じたらしく、二人同じタイミングで黙った。
「なぁ、お前なんの話してる?」
「あの女だろ?お前は?」
「あの女の持つ《ソフトクリーム》な」
「あ~そりゃイチコロたな」
「どこでいき違ったんだろうな?」←会話が
「5メートルくらい前だな」←女と
今、またすれ違った気がするよ、お前と。
そんな夏だった。