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若い作家のプロット

 子供の頃はヒーローに憧れた。

 自分もいつか誰もが認める輝かしい人間になるのだと疑わなかった。

 しかし、成長するに連れて現実を知り、自分の才能の無さや世界の広さを痛感するようになると子供の頃の幻想は消え去り無難な人生を歩むのが懸命なのだと大人な考えが頭を支配するようになる。

 もちろんそれがいけないことだとは思わないし、卑怯だとも思わない。

 本当のヒーローになるには才能と血の滲むような努力が必要だ。自分に才能がないと分かって血の滲む努力をするには、才能のある人間がやるよりも大変だ。

 だから、自分の丈に合った道を選ぶ。


 とはいえ、子供の頃の幻想はそう簡単には消えてくれない。憧れを完全に消すにはそれなりの人生経験が必要になってくる。

 だから凡人である佐藤ヒロシは代償行為でそれを慰めることにした。


「次はどんな話を書こうかな~」


 創作活動だ。

 自分が成れなかったヒーローを自分の手で作り出す。

 それは、まるで神にも似た行為であり、ヒロシの小さな自尊心を大いに満足させてくれた。内容は陳腐なもので、主人公が数々の困難を突破していく王道のヒーロー物で、現代風にいうなら『俺TUEEファンタジー』となるだろうか。

 ネットの小説投稿サイトに作品を載せ、それなりに読書も獲得している。

 一時期は月間ランキングの上位にも入ったことがある。


 評価は賛否両論あるがまとめると、

〝話はどこかで見たようなものばかりだけど、キャラは全員魅力的だし、なによりとても読みやすい〟

 とのこと。

 この評価はヒロシとしては納得のいくものでありとても嬉しいものだった。

 なにせ自分でも話を作る才能はないと思っている。その分、読者が読みやすいように文章を作り、言葉にも工夫し、キャラクターもはっきりと明確にして誰がしゃべっているのかわからないなんてことがないように細心の注意を払った。

 才能がない分は努力と工夫で補った。

 おかげで高評価を得ることが出来、気持ちよく処女作は完結することができた。

 これもひとえに読者の応援のおかげだ。

 自分の努力や苦労がこうして形になったことは本当に嬉しい。


 さっそくヒロシは次の作品のプロットを練っていた。

 ジャンルは前回と同じく『俺TUEEファンタジー』だ。自分が成りたいヒーローを描くのだから当然といえば当然だ。

 前回の主人公は最初から強すぎた上に、精神面が弱くギャップがあった。

 今回は成長していく主人公にしたい。

 ただし、主人公には強くいて欲しいのでその成長の幅や速度は常人の倍……いや、十倍以上は欲しい。他人が何年もかけて習得する技術を一週間くらいでぽんと習得してしまう成長型の俺TUEEなんてどうだろう。

 となると、話は異世界渡航モノがいいだろうか?

 こっちの世界ではぱっとしない主人公が、異世界でチート能力に目覚めて無双する王道ストーリー。

 何度も何度も使い古されてきたネタだが、未だに飽きがこない上にバンバン次の作品が出てくるのだから、自分だけでなく誰もが潜在的にヒーローへの憧れを忘れられないのだろう。


 ひとまずアイデアを書き出していこう。

 前回の話で使えなかったネタもこっちでは使えるかもしれないし、一旦全部出し切って精査していくことにしよう。

 自分が憧れる主人公像、イベント、ヒロイン……書こうと思えばいくらでも書いていける。

 主人公はヒロインとどんな出会い方をするだろう?

 主人公はどんな風に世界を旅していくだろう?

 そんなことを考えているだけで時間がどんどん過ぎ去っていく。


 主人公はどんなキャラがいいだろう?

 まずは見た目だ。ここは大事だ。

 前回はぱっとしない見た目にしたので今回はいっそのことイケメンにしてしまうか? いやいや、それだと面白くない。目つきは悪いけど、よく見れば可愛く見えるみたいなギャップ性のある見た目が一番だろう。

 銀髪、赤眼で切れ長の目…………うん、厨二っぽい。

 でも、主人公はこれくらい分かりやすい方がいいだろう。

 あとはどんな能力を持たせようか。

 他とは一線を画す力を持たせたいが、これを設定する前に世界感もある程度設定しておかないとダメだろう。


 世界感は王道の中世ファンタジーでいいだろう。

 剣と魔法があって、ちょいちょい科学も混じっているレベル。

 産業革命が起こる以前の西洋文化を踏襲する感じにすればハズレはしない。まあ、そこに一握りのオリジナル要素を入れるのが作家のセンスというものだが、残念ながらヒロシにはそんなものないので諦めてそのまま使うことにする。

 もしくは読者が入り込みやすいようにいっそのことゲームのような世界にしてしまうのもいいだろう。

 レベルとかスキルのようなものが存在して、経験値をゲットして強くなっていく分かりやすいストーリー展開だ。

 自分や他人の強さが数値である程度識別できるので読者側もすんなり入っていけるメリットがある。

 その代わり数値が全てになりかねないのでさじ加減が重要になる。


 ゲーム世界にするとして、どんな世界感にすればいいだろう?

 王道的に言えばレベル、スキル、職業、……といったところか。

 レベルは単純にステータスに反映する数値でいいだろう。HP、MP、筋力、敏捷といったステータスはレベル依存だ。先天的な才能や種族差によってステータスの伸びに差をつけるのもいいかもしれない。

 となると、スキルはいろいろと考えないといけない。

 先天的な才能も、後天的に取得した技術も一括して「スキル」だと分かりにくくなる。

 一般的なゲームだと恒久的な効果を持つ「Pパッシブスキル」と、使ったときだけ効果を発揮する「Aアクティブスキル」の二つに分かれるが、この世界では更に先天的な才能を意味する「Gギフトスキル」を追加しておこう。

 職業についてはステータスボーナスのための称号みたいなものでいいだろう。

 戦士なら筋力や体力にボーナス。魔術師ならMPと知力にボーナスみたいな感じだ。職業につくためには特定のスキルと一定以上のレベルが必要って感じにしておこう。


 スキルに関してはもっと踏み込んでみよう。

 スキルには熟練度レベルを導入し、同じスキルでもレベルが違えば効果が変わるようにすれば駆け出しと達人の差みたいなのが分かりやすくなる。レベルを上げるにはひたすら回数をこなしていけばいい。

 スキルの最大レベルは…………まあ、5くらいでいいだろう。最低は0だ。

 0はスキルを持っていない状態。

 1は駆け出し。見習いレベル。

 2は一人前。ここまでは誰でも取得できる。

 3は達人。ここからは一定以上のレベルが必要。

 4は伝説級の才能。ここからはさらに対応した「Gスキル」が必要。

 5は神レベル。

 …………うん。我ながら適当感が溢れるが、才能のない自分にはこれが限界だ。


 よしよし、なかなか良い感じに世界感が出来上がってきた。

 この世界感なら主人公にチートクラスの「Gスキル」を持たせれば俺TUEEをすることが出来るだろう。

 例えばあらゆるスキルを5レベルまで取得することが出来る「全知全能」とか、レベルが上がり難い代わりに異様なほどステータスが上がる「天才」とか……。

 うん。夢が広がるな。


 スキルや種族、職業などを書き出していると気が付けばテキストが二十万文字を越えていた。

 我ながら頑張りすぎだろうと思うが、次から次へとイメージが湧いてきて止まらないのだ。

 とはいえ、いい加減ごちゃごちゃしてきたので少し整理しておこう。

 まずはおおまかにキャラと世界感の二つに分けて、世界感をさらに、「地理・歴史」、「スキル」、「職業」に分けておく。

 スキルはさらにP、A、Gに分けておく。

 スキルの部分だけでデータ量100kオーバーってどれだけだよ……。


 さすがに今日の作業はこれくらいにしてあとは明日に回すとしよう。

 時計がいつの間にか頂点を過ぎてしまっている。

 明日は学校も休みだし、徹夜してもいいのだが眠い頭で考えても良い話が浮かばないのは過去の経験から学んでいる。健康的な生活こそが、良い話を作る一番の秘訣だ。

 でも、最後に主人公の部分だけはまとめておこう。

 大した時間は掛からないし、主人公の無双ストーリーを妄想してにやにやしたい。


『主人公:トレイン=バーネット(異世界での名前)

種族:人間 年齢・16歳

 銀髪、赤眼で目つきが多少悪いが、笑うと齢相応に見える。

 Gスキル:全知全能、英雄(天才の上位互換)、神眼(鑑定スキルの上位互換)

 

 普段は温厚だが、敵対者に対しては冷徹にもなれる。

 好奇心旺盛であらゆるものに興味を持ち、さらにそれを習得することに余念がない。

 かなりの凝り性であり手に入れたスキルを駆使して、現代社会の文化や技術をなんとかして異世界で使えないか画策する』


 いろいろあるが、まとめるとこんな感じだ。

 性格面ではほとんど自分を踏襲してある。

 単純にその方が書きやすいからで、特に意味はない。…………ないよ?


 書く物は書いたので続きは明日に回すとしよう。

 パソコンを閉じて大きく伸びをすると、背骨が小気味の良い音を立てた。

 快感を伴う脱力感が背骨を通って全身に流れていく。

 大きく息を吐く。

 体に溜まった熱がごっそりと吐き出され、冷たい夜の空気が体内に満ちていく。興奮で火照っていた体がクールダウンしていく。


「…………あぁ~~……眠くなってきたな」


 夢中になっているときはちっとも疲れなんて感じないが、作業を終えたことでどっと疲れが押し寄せてくる。

 寝る前に軽くシャワーでも浴びようかと思っていたがしんどいしもう寝てしまうことにしよう。

 ばたんと倒れこむようにベッドに身を転がす。

 先月買ったばかりのマットレスが心地の良い反発を返してくれる。

 そっと目を閉じると同時に意識が一瞬で白くなっていく。

 これは気持ちよく眠れそうだ。

 遠くなっていく感覚を心地よく感じながら、ヒロシはあっさりと意識を手放した。


 初投稿の作品となります。

 プロットはある程度出来ていますが、思いつきでどんどん話を変えていくつもりので途中でグダるかもしれません。

 

 感想や意見等いつでもお待ちしております。

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