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エピローグ


 エピローグ これまでと、これからと


 傍観者 ヴィルマ・ガソット



 目が覚めたのは日本に来た際に借りていたホテルのベッドの上だった。ヴィルマは寝ぼけながら起き上がるとどうやら服を着ていなかったらしい。裸で布団に潜り込んでいた。衣服を探そうにもどうやら近くにクローゼットは無く、荷物もどこに置いたのか無くなっている。

「神戸…教官?」

 回転しない頭を回しながら新しい記憶を思い出そうとする。陽正高校でNOTと激闘を繰り返した後、自分はどうなったのか全く覚えていない。身体に違和感も感じない。左手の薬指には支給されたシルバーリングが嵌められてあり、確実にここは神戸教官と泊まった部屋だと言う確信がある。窓から見える景色、部屋の配置は同じであるし、日付もそこまで動いていない。ならば、何故記憶が飛んでいる?ベッドから起き上がり取り敢えず薄手のシーツを身に纏い窓辺まで移動する。そこからは白い砂浜と透き通った海が見渡せる。何故か外に出ようとは思わなかった。ただこの景色をずっと見ていたいと思えた。見様によってはシーツがドレスに見え、風景も相まって婚約指輪をした新婦にも見えなくもないだろう。

「…夢物語です…ね…」

 物思いに耽っていると突然部屋のドアが開けられた。警戒していなかった私は目を丸くして音のした方を見ると、

「監禁解除」

 ドアを開けて現れたのは私の荷物を持った神戸教官だった。

「神戸教官?どうした…ですか?」

「記憶にないのか?まあ無理はないよな。初めての臨魔状態、体への負荷は相当なものだったんだろ。」

 ヴィルマが頷くと溜息一つで神戸教官はベッドに腰を下ろした。

「君は首の皮一枚繋がったと言っていい。新米の初任務で臨魔状態になるなんて不安定な存在を委員会も見過ごせなかったんだろ。危うく戻れなくなるところだったぞ。」

「…え?」

 臨魔状態は十三委員会の最終形態。NOTを殺すための最後の切り札。一〇〇%を超えればリングに仕掛けられた爆弾が爆発し絶命する。

「正確な数値が測れなかった。そのことについて審議していたんだよ。委員会の上役もビビりだから不安要素は取り除いておかないと寝ても居られないってね。もし仮に臨魔状態を狙って一度でも一〇〇%を超えて、落ちていたら例え人間の姿に戻ったとしてもNOTとして判定され処分されると言う話だったけど僕がヴィルマ君はNOTに落ちていないと強く言っておいたから大丈夫。両刃の剣とは委員会にとって使い捨てが効く便利な言い回しだからね。でも今回の君はNOT二体を倒す偉業を成し遂げたんだ胸を張っていい。」

 教官は笑顔を向ける。私のせいで今まで審問されていたのだということに遅まきながら気付かされ常々世話になっていると感じていた。

「その…結果はどうなんです?」

「結果?」

「…私は十三委員会の兵士になれるでしょうか?」

「ああ…その事。大丈夫。僕が言ったことだから上も納得してくれるでしょ。ヴィルマ・ガソット…君は今日から十三委員会の構成員だ。これからもNOTを根絶するために協力してくれ。」

「ありがとうございます!」

 心の底から喜んだ。仇をこれから相手にしていくことになるのだが、それ以前に今までの人生で多くを助けてくれた神戸教官への好意が溢れ、組織という概念よりも神戸教官個人に対して忠誠を誓ったに等しい。好いた男について行ける喜びを知ってしまった。これからの荊道は兵士としてだけではなく、女としても生きられるかもしれない。希望がチラつき欲が出た。

「…これからも私に指導してくださいませんか?神戸教官」

 驚いたような顔を見せる神戸の答えを彼女は待った。

「いきなり無茶を言うなぁ。僕は今回、君の新人研修初任務で教官をしていたに過ぎない。僕の役職は第三室室長。ヴィルマ君。君の所属長だ。」

「え…?」

 思い上がっていたのは自分だけで彼も組織の一員。私情は無く、仕事に忠実。優しかったのも仕事故だったのか…。しかし、次に彼の口から発せられたのは意外な言葉だった。

「……でも個人的に君のことは信頼している。ヴィルマ君。僕は君の働きに期待している。便利なという意味ではなく人間性を見て、君ならばこれからも生き抜けるだろうと思う。そのためなら喜んで協力しよう。」

「教官…というか室長だったんですか?」

「なんだ…知らなかったのか?」

 驚きを隠せず、自分の高鳴る鼓動が耳障りだ。

「へ…まさか…そんな…」

 彼は雲の上の存在だ。室長と言えば十三委員会でもトップの権力を持つ一人。新米兵士の私とは地位や権力が比べものにならない。

「これからも敵は多い。際限なく奴らは湧いてくる。十二柱との対戦もあるだろう。新人のヴィルマ君でも前線に出る機会は多いはずだ。組織の為にとは言わない、僕らは人間の為、力を尽くせばいい。」

 それでも彼は私に微笑んで頭を撫でてくれる。新しい命をくれた私の親。

「Yes, my God.」

 美貌に似合う満面の笑みが零れ、彼女は心で告白する。


 今はとても頼れる存在ではないけれど…

…私が頼れる存在になったらずっと一緒に居て下さい。シキさん。













辛いことばかりの人生は無い

きっと気付けていないだけで 誰もが報われるはずだ

私の刃は これからきっと丸くなる

傷付けなくていいように 形だけを武器にして

それでも 貴方の後ろを 守れるように








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