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第一話


 第一話 第一幕 日本上陸


 傍観者 神戸四季



 ―日本領空 旅客機内

「日本の私立高校で複数の生徒が神隠しに会っているそうだ。これはまた、どうしてここまで放置しておいたのか…」

 旅客機のシートに持たれながら僕は自分の薄黄色の髪を掻き上げ溜息交じりに呟いた。腕で頬杖をしながら横の席に目を向けると、透き通ったアクアブルーの瞳をした銀髪白人女性と目線がぶつかる。

「教官。その事件はいつ頃から?」

「去年の秋辺りかららしいな。もう一年近くなるか…一人目の女子生徒がそこらから音信不通になっていたらしい。もう助からないだろうけど。お前の祖国ではこんな事件は無かったのか?」

 すると白人女性は顎に左手の親指と人差し指を当て、しばし考える仕草をしたが思い当らなかったようで首を横に振った。彼女の凛とした姿勢には白薔薇を連想させるが、僕はそうかと持っていた書類に目を落とす。

「教官のとこでは?」

「僕が暮らしていたとこは日本でも田舎でね。そんなことは無かったけど、日本って人口密度高いから連続して起きても不思議じゃないな。そんなことより、緊張はしていないようだが、気分はどうかな?ヴィルマ君」

 書類に落としていた目をまた白人女性に向けると彼女はニコッとした笑顔と共に僕を見る。いくら整った顔立ちをしていても笑顔は幼さが残るものだと実感した。

「大丈夫。教官いるから、失敗はしないようにするけど。」

「通過成績は基準を大きく上回っていたって聞いたけど机上と現場は別物だからな。まあ…失敗しても良いように僕らが居るわけだけれど、ここで失敗すると君の最終試験には×が付いて廃棄処分になるから気を付けるんだな。最初で最後のチャンスって奴だ。」

「教官の時はどうだったんですか?」

「僕は基準を下回っていて合格もギリギリってところだったよ。下調べをしっかりして覚悟を決めて迷わず剣を抜いたさ。なんて言っても相手は悪魔だからな。殺される前に殺すことが成功の秘訣さ。」

「…殺す殺されるが当たり前の世界なんて今の子供たちが聞いたら驚きますよね。ある程度平和になった世の中ではありますけれど未だ戦争やテロは絶えないし、貧困が進んでいる土地もある。それにNOTという悪魔まで現れてこの先が思いやられると言いますか…そもそも世界なんて見解で物事を考えたりはしないんですけれど、今も誰かの犠牲によって成り立つ平和だとしたらやりきれない思いですよ。」

「…ヴィルマ君は僕と近い価値観を持っているね。君みたいな子が各国のお偉いさんになってくれればもっともっと世の中は良くなっていたのだろうね。」

「私みたいな見習いだって個人としての考えがあるんです。私みたいな子供が増えないように戦うつもりで入ったんですから覚悟はいつでも決まっています。」

 彼女の覚悟を聞くと僕は窓の外に目を向けた。それは彼女ならば試験に合格するだろうと考えたからであり、決して容姿が可愛くて見とれてしまった照れ隠しではない。

「今日は現地に向かうだけで時間が過ぎそうだから本格的に動くのは明日、日本警察まではいかなくても県警くらいには協力を仰ぎたいところだが…そう上手くはいかないだろうな。ヴィルマ君、今日のうちに書類に書かれていることを頭に入れておけ。身体が休んでいられるのも今日くらいだ。」

 白人女性ヴィルマに書類を渡すと、素直に返事をして目を通し始める。僕と白人女性の身なりは一緒で、黒を下地に赤い十字架をあしらった如何にもどこからの使者という印象を受けるコートを着て、周囲から浮いている。コスプレだとか馬鹿にされるかもしれないが、これから日本に降り立ち仕事に押される毎日になるため、人目を気にしている余裕なんてない。

 僕らの仕事は十年前から世界各地に出現するNOTという悪魔を狩ること。人間に寄生し、内側から蝕み、自分が食べつくされるまでNOTに寄生されていることに気付かないまま死に至る。NOTに寄生された者を助ける方法は見つかっていないため、現状は斬り捨てることが一番望ましいとされ、殺人者の異名を頂戴する羽目になっている。つまり、僕らが働くときは必ず一人は死人が出ることになり、人の死と隣り合わせでストレスの溜まる職場だ。その職場で働く人間とは、大切な人をNOTに殺され復讐に生きる奴らが殆どで、中には死刑囚や快楽主義の変態等々混じっている。笑えない職場ではあるが、仕事とは楽しくないものであると割り切るしかないだろう。

 二人の乗る飛行機が着陸し、成田国際空港についたのは十六時を回ったころだった。パスポートを見せ、荷物を回収すると急ぎ足で空港出入り口へと向かう合間、後ろにヴィルマ君が続いているのを感じながら携帯端末を取り出して一本の電話を発信する。

「…こちら神戸四季かんべ しき。今、ヴィルマ・ガソットと日本に着いた。これから現地に入るが、何か問題があるか?」

「やーシキちゃん連絡おーそーいー」

 電話の向こうから聞こえて来たのは女性の声音だが、僕らの雰囲気とは似つかない程に能天気だ。

「…熙英ヒヨン副室長…。僕が居ないことをいいことに、また良からぬ実験を始めてないですか?」

「そんなことないよシキちゃん。シキちゃんに勝る実験何てないんだからね。他の奴らの身体を見てもテンション上がんないけど、シキちゃんの身体見ればテンション上がるからさ。今度実験体になってよ!なんならウチも脱ぐよ!」

「僕は脱がないし、実験もしない。分かったか?変態ロン毛。」

「ちょっと!ちゃんと眼鏡を入れなさい!」

 変態は気にしてないのね…。変なこだわりを持つなぁ。

「眼鏡ってお前かけてないだろ?」

「残念でしたー。先日コンタクトから眼鏡にモデルチェンジしたので眼鏡ですぅ」

「ああもう、お前の姿が目に浮かぶわ…」

「いいじゃない、いいじゃない。ウチのことを離れてても思っていてよシキちゃん。」

「もう仕事に入るから切るぞ。」

「はいはーい気を付けて」

 携帯端末をポケットに入れるとヴィルマの方を向いた。ヴィルマは少し緊張した趣で目を合わせる。意志の揺らぎは感じられないが確認も込めて聞いてみる。

「準備はいいか?」

 時差ボケもあるせいか、やや不安げな表情を見せるヴィルマだったが、大きく頷いた。僕は副室長との会話でシリアス展開もあったもんじゃないが、彼女は相当に気張っているらしい。今回が初任務だし、当然の反応なのかもしれないが。

「じゃあ行こうか。」

「お願いします。神戸教官」

 気のせいだろうか彼女の頬に少し赤みが指していることに気付いたが、意に介さず出入り口の自動ドアに向かうとそこには既にタクシーが待っていて、運転手が後部座席の扉を開けていた。外はまだ夕闇には染まらず、綺麗な青色をしている。僕もヴィルマも一度空を見上げ美しさに感嘆の息を漏らした。

 どうやらまた、この国に戻って来てしまったらしい。忙しなく走る車、誰かの携帯の着信音、人々は互いに無関心で暖かさを感じられない。鉄やプラスチック、新品の匂いが鼻に付き人工物に酔いそうになる。ああ、気持ち悪い。

運転手が荷物を手際よく積み込み、二人を乗せたタクシーは僕が行き先を伝えるとゆっくり動き出す。ロンドンからここまで八時間程度のフライトだったが、どうやら二人とも疲れてはいないようで運転手そっちのけで会話をしていた。勿論、仕事の話だが…彼女は先ほど渡した資料をと取り出して最終確認中であるが、疑問点を僕に聞いてくる。

「教官、陽正高校ってどこですか?」

「数年前にできた新設校らしいが、在校生や卒業生が優秀な成績を収めていて一躍有名高の仲間入りを果たした高校だな。都心から少し離れたところにあるらしい。僕も行ったことはない。」

「被害は三人と書いてありますね。」

「ああ、あくまで十三委員会調べだけどな。それ以降は増えていないようだ。」

「宿は近くに取るんですか?」

「少し距離を置くが決して遠くない場所だな。そっちの方が調査も楽だろうし。」

「部屋はツインですか?」

「別が良かったか?保護観察の面で一緒に居ないといけないから別にはしなかったが。」

「ありがとうございます!」

「何がだ?」

 茶化したのもここまでで彼女は真剣な面持ちをして質問をしてきた。

「教官は本当にNOTの仕業だと考えているんですか?」

「勿論だ。」

 ヴィルマは気付いていないようだったが、空港に着いた時点でNOTの気配を色濃く感じた。もしかしたら監視されていたのかもしれない。因子を持つ僕らとその親とも呼ぶべき彼らNOT。切っても切れない醜き同族同士の殺し合いが始まる。「神隠し事件」はどうやら当たりだったらしい。

「ヴィルマ君の初任務だ…悪魔の十二柱なんて出てこないことを祈ろう。」

「教官?」

「いや…何でもないよ。ちょっとヴィルマ君のスリーサイズが気になってね」

 ぼふっ、と分かり易いほど動揺し拭き出した彼女はかなり躊躇いながらも顔を真っ赤にしながら僕の方へと口を近づけてきた。

「……えと…」

 教えてきた。耳元で囁かれた。職権乱用みたいパワハラじゃないですか。

「…デカいな。」

「……Fです。」

 教えなくていいよ。もう…僕だけ悪者だな。

 こんな殺伐とした職場なのに、銀髪美人の部下は今日も楽しそうだ。


 第一話 第二幕 陽正高校


 傍観者 古川楔



 ――陽正高校。部活動が盛んで全校生徒も千人を超える名門の高校だ。毎年志願者は増え続け、去年は神隠しの事件があったにも関わらず、志願倍率は各科定員の二倍以上と軒並み高くなっている。部活動だけではなく、学業においても優良な成績を多く修める生徒が多く、高校としては異例なことだが、一流企業で活躍しているOB、OGは少なくない。

そんな高校で起きた神隠し事件。生徒の大半は根も葉もない噂だろうと思っている者も多く、学校での雰囲気も特別変わった様子はない。その理由は事件が間隔を開けて幾度として起こり、もうこの前に居なくなったのは何人目なのかがわからないという事件への危機感の低下。事件が発生し、起こりうる他の要因として、一部生徒の登校拒否があるが、その大半に含まれない生徒というのは神隠しにあった生徒の友達で、大切な仲間を失い、無気力症になることも多いと聞く。無気力症で入院する生徒が増えることで事件には失踪者なんて出ずに入院しているだけという錯覚が起きてしまうことも危機感低下の要因であるが、俺はそんな神隠し事件とは無関係にいつも通りバスケ部の練習に精を出していた。体育館二階にトラックがあり、俺たちは練習前のウォーミングアップで走ることが毎回の恒例になっている。近々、強豪校との練習試合も組まれているので部員たちは緊張ムードだが、やはり癒しは必要なようだ。

「ラスト一周~」

 綺麗で透き通るような女性の声が体育館に響く。我らが男子バスケットボール部マネージャーの声だ。容姿もそれなりで人気も高く、その声でやる気を出す不届き極まりない輩もいる。ニタニタと締まりのない部員を見ると部長の怒号が聞こえる。

「コラ!お前ら!マネジ見て鼻の下伸ばしてんじゃねえ!あと十周追加だ!」

 部員たちのわめき声も聞こえるが、彼らは彼らでスポーツマンらしく足を止めたり、部長に抗議したりはしないらしい。さすがは、上を目指す高校というところだろう。

「悪いな、古川。お前の彼女なのに…アイツらときたら…」

 眉間に皺を寄せ、ランニングのペースをそのまま俺に話しかけてきた部長。部長と言っても同学年だし、昔からの仲だ。

「ま、少し嫉妬はするけど…モテる彼女ってことで彼氏としては鼻が高いけどな。」

「よく言うぜ。」

 部長は俺から目線を逸らしランニングを続ける。

「よく言うぜ、内気で女の子と話せない部長の癖に。」

「あ、今ちょっとマネジの方見た。」

「少し目合って顔赤くなってるぜ。」

 部員たちがランニングをしながら口々に部長の弄りネタを探している。部長は顔を赤らめながら怒った表情を浮かべていた。

「だからテメェら‼マネジ見てねぇで真面目にやれよ‼練習試合も高総体も近いんだぞ‼ 身ぃ引き締めろや‼」

 といってランニングのペースを上げる。図星が恥ずかしかったのだろうか。後ろからは部員たちが指を指して笑っている。俺も負けまいとペースを上げて帳尻を合わせようとするが、背中は遠くなるばかり。

「…なんで…お前そんなに早いんだよ」

「部長は鍛え方が違うんだよ。」

 古川ふるかわ くさび。陽正高校男子バスケ部三年パワーフォワード。

 島崎しまざき 真二しんじ。陽正高校バスケ部主将三年センター。

 小学校の時からのバスケ仲間で小さいころからプロを目指してやってきた。高校へは特待生で二人とも選ばれるほどに成長した実力の持ち主ではあるが、俺らは天才じゃあない。毎日飽きずに基礎トレと、凌ぎを削るライバルとの1on1。鍛えられるのは当たり前と言えば当たり前なのだろう。もう十年以上の付き合いになるが、俺たちは一種のスター選手の用に扱われたことはない。他の部員から憧れと嫉妬の眼差しで見られたことが一度もないというわけではないし、そのことで問題になったこともあったが、俺は変わらなかった。変わらず前だけを向いて居られた。それは大いに島崎の御陰だと言える。彼は何があろうと自分が一人のバスケ選手だということを忘れず、直向きに明るく目標に向かって進んでいた。その姿に好敵手である俺も刺激され、馬鹿馬鹿しい嫌がらせは気にしなくなった。そのうち嫌がらせをする連中の方から消えていき、俺たちの周りは本気でバスケをする仲間で囲まれていた。俺は敬意を込めて島崎を好敵手とし、同じ土俵に立ち正々堂々と戦い勝ちたい男。スター性はまだ俺の方が劣っているが、この高校のうちに越してやる。

「馬鹿にして!…体力じゃ勝てなくてもバスケの技術じゃ負けねえ!」

 ウォーミングアップのランニングが終了し、体育館に降りると、ストレッチをした後に基礎的なパス練習が始まる。

「レイアップな、一人十本っ!」

 部長の声で体育館全体がドリブル音で満たされる。

「…アヤカ。練習試合の面子は決まった?いつもと一緒だと思うけど…」

 女子マネージャーのアヤカこと色芳いろかおり 彩香あやかは持っていたクリップボードに挟んであった紙を一枚とって島崎に差し出す。どうやら今度の練習試合のメンバー表らしい。

「島崎先輩の予想通りスタメンはいつもと変わらないみたいです。まあ、練習試合ですけど、強豪相手ですからベストメンバー揃えて行くのは当然だと思います…。」

 当然か、と島崎は言い残しメンバー表を戻して練習に入る。

「部長さんも大変な訳だ。チームのことを考え、自分のことを考え。そして、よりいい方向に持っていこうと率先して行動を起こさねばならない。練習だって雑用だって人一倍に取り組んで、このチームを全国に持っていこうとしているんだろうな。」

 俺がアヤカの隣でそう言うと俺の存在に気付いていなかったのか、驚いた様子でこちらを向き、話を聞くと、ノック式のボールペンをカチカチと鳴らしてアヤカはクリップボードに何かを書き足した。

「島崎先輩は良くできた人よ。カリスマ的なリーダーシップを持ち、ゴール下のセンターで縁の下を支え、ゲームの流れを作る。これぞキャプテンと言った人間ね。楔との相性はいいと思うけど。何か不満があるの?」

 彼女だけあり、一つ上でも気にせずタメ語になっている。部長の島崎をベタ褒めしている彼女は決して贔屓しているのではなく、他人を見る洞察力に長けていて、これを顧問が評価し部員の状態をチェックする役目を与えられている。お蔭で部員たちからは出来る女というレッテルを張られ彼女自身いい迷惑だと呟いていた。

「不満なんてないさ。俺は島崎がカリスマ的なリーダーシップでさらに成長してくれるのを楽しみにしているんだ。ライバルには強くあって欲しいからな。」

 自然と笑っていたらしく、気持ち悪いと彼女に言われ慌てて真顔に戻した。バスケットボールが体育館の床に当たり響く音が心臓を震わす。俺も練習に混ざろうとするとアヤカに引き止められた。

「楔…今日も1on1やるんでしょ?」

「当たり前だろ?」

 今日の練習も残り三十分になり、次に体育館を使う部活生の為にボールを粗方片付けると俺たちにとっては毎回恒例となっている締め括りの五対五を行う為、ジャンケンで班分けを行った。俺と島崎は別チームになり、何日か振りに本気を出せそうだと体を動かす準備をする。

「じゃチームは決まったねー。Bチームはゼッケンつけて…るね。じゃあ始めるよ。」

 アヤカが審判をするためボールを持ち、サークルの中央に立つと、両チームのジャンパーが前に出てくる。島崎は自陣ゴール下で俺を見ている。どうやら今日は楽しめそうな気がする。ピッと笛の音がしてバスケットボールが垂直に高く舞う。運よく俺のチームメイトがボールを奪い、パスが回って来ると俺は一気に敵陣に乗り込んだ。敵の一人が止めに来たが、ドライブでサイドを抜くと同時に島崎が視界を覆った。普段ゴール下に居るはずが、俺がパスを貰うや否や対応するためにいつもより浅く守っているらしい。腕を広げ、出来るだけ視界に自分以外を入れまいとしている。ただ、それだけではない。彼はその不動で落ち着いた精神と相手の行動を素早く見極める洞察力から醸し出る威圧感で並みの選手ならばここで一瞬の躊躇いを感じてしまう一種の怖さを感じる全国屈指のセンターだ。勿論、俺は含まれないが、それでも不安は過ぎる。ましてや、ドライブで一人抜いてからの一番隙が生じやすいこの場面で自分の本来守るべき場所を捨てるまではいかなくとも飛び出してくる勇気は敵としてかなりの脅威だ。このまま自分で抜くのは難しいと瞬時に切り替え、パスコースが塞がる前に味方にパスを通す。ボールを貰った味方はインサイドに居たため、そのままジャンプシュートする。

「初得点頂きっ!」

味方が言うと同時に俺もそう思った、しかし、俺の視界がいきなり開けた時に、安直だったと後悔した。視界が開けたということは俺の前から島崎が居なくなったということと同義、彼は素早い反射神経と跳躍でシュート軌道に入ったボールを最高点に達する一歩手前で叩き落した。

「フーッ」

 彼の吐く息と一緒に存在感が膨れ上がる。島崎の身長は一八〇少し。シュートの軌道が思ったより低かったこともあっただろうが、それにしても異様な高さと速さ。攻守が切り替わり、敵チームで俺の次くらいの高速ドライブが自慢の石ヶ守が自陣にドリブルで切り込んで来る。ヘルプで早めに壁を作るとパスコースを塞ぐ、その意気が伝わったのか、石ヶ守は一度躊躇ったようだったが、何かを確認するとハーフラインからシュートフォームに入った。まさか、と一度視線を自陣のインサイドに向けると島崎が走り込んでいた。一瞬の遅れで俺はボールに指先を掠ることしかできなかった。軌道は多少ズラしたが、そのズレすらも計算に入っていたように島崎はドンピシャの位置に飛んでいた。

「……アリウープって…」

 俺の呟きを再現するかのように島崎が滞空中のボールを右手で掴み、そのままゴールに押し込むと得点版に二点が刻まれた。

「…古川、ディフェンスがまだ甘いな。チームとの連携もなってない。」

 驚きで動けない俺の横を自陣コートへ戻る島崎はすれ違い様に忠告した。

「また、そうやってアヤカにカッコいいとこ見せたいだけなんじゃないのか?」

「ボフッ‼何を言っているんだ‼俺はお前と…」

「はいはーい、御託はいいよー。」

「テメェ楔‼信じてねぇだろ‼」

「信じてねぇよ。はいジャンプシュートっ‼」

 味方から回って来たボールがネットを揺らす。島崎は俺がボールを持っていたことにすら気付かなかったようでハトが豆鉄砲を喰らった面白い顔をしていた。

「おい会話中に‼」

「知らんがな」

 この後、試合の流れは拮抗してどちらに傾くという訳でもなく、殴り合いにも似た点取り合戦になった。結果、試合終了となり八十九対八十七で島崎のいたチームが勝った。

「みんなお疲れー!疲れてるところだろうけど、次の部活生が待ってるから急いで荷物と得点版も片して出るよー!」

 アヤカの声でぞろぞろと荷物を持ち体育館の外へ出ていくチームメイトたちに連なって俺も出ていこうとしたとき、体育館の出入り口から一人の男が入って来た。

「…終わったか…」

怠そうに入って来たのは三年B組の溝口俊介みぞぐち しゅんすけ。編み込んだ髪型に茶髪と鋭い眼光で見る者を威嚇する容姿をしている。しかし、彼は見た目だけではなく授業態度等も学校では問題となっているようで、以前バスケ部にも注意勧告の為に先公が来る事件が発生している。

「おい‼お前いつになったら真面目に来るんだよ‼今度の練習試合お前抜きで戦うことになるぞ‼」

「あ?何だよ。来たら終わってたんだ。」

 文句あんの、と体育館から出て行こうとする溝口を島崎が追って肩を掴む。

「何が来たら終わってただ。終わる時間に来てるだけだろ。いつまで一匹狼気取ってんだよ。さっさと部活に出てこい。じゃねぇとチームで連携できないだろうが!」

「連携とかいらねぇよ。俺にボール寄越せば点を入れてやる、それで充分だろ?」

 島崎を振り解き溝口は体育館から消えた。閉じられたドアの前に居る島崎は溝口との心の距離を感じただろう。表情は見えないが随分とショックなはずだ。俺も島崎も溝口も中学、高校で全国区のプレーヤーと持て囃されているが、俺らと違い溝口はバスケに熱を入れてない。溝口の登場で高総体に向けて意識を高めて行っている俺らとしては雰囲気が覚めてしまい。部活としてかなりマイナス要因だ。

「問題児は問題児のままね。」

 俺の隣でアヤカが呟く。彼女は他人を見ることに長けているため、俺らとは違う視点で見えるものがあるのかもしれないが、溝口が部活に来ない原因は誰もが分かり切っている。

「面白くない…のか。島崎が居るから…」

「楔もだと思うけどね。」

 溝口はスポーツ特待生、しかし、それは俺と島崎も同じ。中学では苦労しなくてもエースとして頼られる存在だった溝口だが、島崎など自分と同等以上のプレーヤーが現れ、首位競争に負けた。

「…古川…俺、ちょっと行ってくる。」

 島崎は思い詰めた顔をしてドアに手を掛ける。

「…ああ。片付けはやっておくから気にするな。」

「すまん…帰ってきたら1on1やろうな。」

「おう…待ってるよ。」

 颯爽と駆けて行った島崎。

「…やっぱ、部長は出来が違うな。マネジの事をジロジロ見るムッツリじゃなきゃいい部長さんなんすけどね、古川さん」

 二年の石ヶ守が珍しく部長のことを褒めたかと思うとこれだ。やはりシリアスでも弄られる運命にあるらしい。そこまでの魅力が島崎にはあるのだろうと納得しつつも、

「それを言うなよ、石ヶ守。」

 俺は一応肯定した。


 部活終わりアヤカと並んで廊下を歩いていると向こうから眼鏡を掛けた女性が歩いてきた。初老の女性は着物を着て、日本人という雰囲気を醸し出している。

「あ、母様。」

 アヤカが初老の女性に対して反応を見せると、廊下の向こうの女性は顔の辺りまで手を挙げてアヤカに答えた。にこやかな笑顔が似合う女性はこの陽正高校の理事長、色芳香子いろかおり かおりこ。アヤカの母にあたる人当たりの良さそうで、和みを与える笑顔は親近感を感じさせる。学校にある理事長室から出てきたところらしい。

「あら、アヤカちゃん。久し振りね。いつも同じ学校に居るのに会えなくて淋しいわ。」

「いえ、母様こそ。理事長職が忙しくて殆ど出てこないではないですか。」

「ごめんなさいね。「失踪事件」の対応をしていたら色々とね。保護者からの不安や不満も多くて対応に追われていると言うのに、今は警察までウチに出入りしているから困ったものよ。」

 色芳理事長は視線を俺に移し、眼を細める。

「その方が前に言っていた彼氏さん?」

「ええ、そう。古川楔、三年生よ。」

「古川です。アヤカさんとは半年前くらいから付き合ってます。」

 何故だろうか、理事長から嫌な感じがする。全校集会等の式典で挨拶する際には何度が見ているが、こうやって話をするのは初めてで初対面と言ってもいいくらいだが。

「そう…古川さん。アヤカちゃんは大変だろうけど末永く付き合って頂戴ね。良い子なのよもぉ。お嫁に出したくなくなっちゃう」

「母様!気が早いですよ‼」

「早いこと無いわよ。アヤカちゃん、もう結婚できる歳でしょ?」

「そうだけど‼」

 理事長と楽しげに話すアヤカを見ていると随分変わったものだと思う。家族と話しているからと言えば終わりだが、バスケ部のマネージャーとして入部したときは選手をただジッと見ているだけの気味悪い印象だった。今ならば部員たちの癒しとして笑顔を振りまいている男子バスケ部の華だ。

「理事長」

 俺らの後ろから第三者の声が聞こえて振り返るとスーツを来た中年男性が立っていた。立ち姿は凛々しく、どこかのガードマンを思わせる。彼は俺とアヤカに目を向けると胸ポケットから警察手帳を取り出し、写真と名前を提示する。

「刑事の早乙女だ。ちょっと理事長を貸していただきたい。」

「刑事…?」

 神隠し事件をただの戯言としか思っていない俺はここに刑事が居る不自然さに胸の奥がモヤモヤとした悪い気分になった。刑事と睨み合う形になってしまったのは大変申し訳ないと後から思い返したが、しかし、アヤカの母を刑事に渡すことに後ろめたさあったように感じた。

「あら、残念ね。ではまたね。アヤカちゃん、古川さん。」

「ええ。お勤め頑張ってください母様。」

「わかったわ。アヤカちゃんにそう言われたら頑張らないとね。」

 理事長は両手で力こぶを作り、元気をアピールした。筋肉は一切なかったのだが、それでも見た目以上には若く感じられる仕草である。

「本当にすみません。ですが、こちらも一大事ですのでご容赦を。」

 刑事は深々と頭を下げて廊下の先へと消えていく。

「アヤカ…神隠し事件ってそんな問題になっているのか?」

「いや…詳しいことは解んない。でも問題になっているのは確かだよ。」

「刑事ねぇ…いきなり話が飛躍した感じがするなぁ…。何人だっけ?事件に巻き込まれたって言うのは?」

「確か…十二人。でも一年前くらいからでしょ?ちょっとスパンが長いから記憶に止め辛いのかもしれないね」

 刑事…ねぇ。俺は刑事だから早乙女って奴が気になったのか?

 どうも腑に落ちないな。

「溝口のことと言い……ちょっと思い詰め過ぎかな?さっきからモヤモヤした感覚が取れない…」

「…気にし過ぎ。楔は何も悪いことしてないじゃない。溝口先輩は溝口先輩が悪い。母様のことも理事長としての公務を熟しているだけなの。なにもかも思い通りにはならないのよ、楔。」

 言い残すとスタスタと階段へ向かうアヤカ。彼女の言葉を聞いて俺の気が楽になるというのも可笑しい話だが、例え事情聴取でも警察という単語は威力がある。アヤカは自分の母を連れていかれて不安にならないのだろうか。

「アヤカ…あんまり頑張り過ぎんなよ。俺でよければ話し相手になるからさ。」

「それは楔の方よ。いっつもシリアスに入りがちだからね。私や島崎先輩と居る時くらい少年っぽくてもいいのよ。バスケしか取り得ないんだから、ただただボールに食らいついて戦って、無駄なことは考えなくていいの。」

「そう言われると駄目な奴に聞こえるな、俺。」

「不器用なのよ、楔は。」



 午後六時を回り、夕暮れ時の鐘が鳴る。俺とアヤカは下校し町中の公園に来ていた。俺たちの愛称で「無人公園」と呼んでいる公園だ。無人公園は町中にあるにもかかわらず、いつ来ても人が居ない無人の公園で、バスケットゴールが一つだけある。俺らみたいなバスケ野郎が1on1をしやすい穴場だ。随分前に壊れたらしいもう一方のゴールは廃材として回収されているが新たなゴールを作る予定もないようで、ここは片面専用になっている。

「いつ来ても無駄なスペースだよなぁ…何か有意義に使ったらいいのに。」

「有意義に使わせてもらってる楔がいう事?」

 はいごめんなさい、と正論に反発できない辺りが弱いなぁと自分でも思う。街は薄暗くなってきているが、公園の街灯でバスケコートはしっかり見通せる。シュートモーションに入った俺の傍らでベンチに座るアヤカは携帯端末を弄りながら俺に喋りかけた。

「楔…島崎先輩は溝口先輩を上手く説得できたと思う?」

 脳裏に溝口の顔が浮かぶが、動じることも無くスリーポイントシュートを決めた。

「……島崎は皆にやる気を与えるの上手いけど、溝口には無理じゃないか?アイツにだってプライドがある訳だし、新人戦の時の負け方が酷かったから、まだ引き摺ってるんだと思う。」

「後腐れが残る男ね、だらしない。」

「島崎にシュートを全部止められたんだ…溝口は。1on1の勝負であんなにあっさりと負けたのが堪えたんだろ。」

「それって彼の足と関係あるの?」

「……足の話知ってるのは俺と島崎と監督だけなんだが。見てわかったのか?」

「まあ見てればね。」

 溝口は膝に爆弾を抱えている。中学時代にした過度の筋トレで全力のジャンプが出来ないのだ。バスケットマンとしては致命的な話だが、差引してそれでも俺らと同等クラスの実力があるのは流石全国区のプレーヤーだ。

「私は彼のプレーを主観的に見たことないんだけど、そんなに凄いの?」

 いつも客観的にしか見ていないアヤカは、携帯端末から顔を上げ、子猫のように上目遣いで訪ねてきた。

「……フォワードとしての力は俺や島崎より凄まじいよ。さっきも言ってたけどボールを渡せば点を取るっていうのは嘘やハッタリじゃない。コート上で溝口のプレーを見た奴はよく蛇みたいだって言うよ。」

「蛇?」

「ああ、動きが曲線的で滑らかなんだよ。そして早い。正直、溝口が全開なら俺は勝てるか解らない。高校でもトッププレーヤーに属しているのは間違いないよ。」

「私が入ったのが一年の六月で新人戦以降見てないからホント九カ月くらいはバスケやってない訳でしょ?それでもトッププレーヤーって言えるの?」

 自分でトッププレーヤーと言っておいてなんだが、確かに一年もブランクがあって未だトップクラスに居られるのかという不信感はある。第一、溝口は怪我で本調子とは程遠い。噂だけが独り歩きする選手だ。

「…どうだろうな、そう言われると自信無くなって来るわ。」

「だから監督が溝口先輩を押す理由がわからないの。インハイ予選のスタメンにもどうかって言われたんだから。」

「えっ…アヤカってメンバーも決めているの?」

 マネジだから部員の体長は解るだろうが、そこまで権力があるものだろうか。

「助言だけよ。否定的な、ね」

「お前は悪女だよ。」

 彼女とのやり取りも区切りがついた辺りで島崎は無人公園に姿を現した。手を挙げて挨拶をするも活力が無い。溝口の説得に失敗したらしい。鞄をアヤカが座っているベンチに下ろすとジャージの腕を捲ってコートに入る。

「駄目だったか」

「ああ、精一杯説得したんだけどよ。どうしても俺とバスケはしたくないらしい。過去をいつまでも引き摺るタイプじゃねぇと思うんだけど、他に理由が見当たらないしな。思ったより繊細なんだろ。」

 島崎にボールを渡すと、練習、と呟いてシュートモーションに入る。島崎の右手から放たれたボールは美しい弧を描きネットを揺らす。

「インハイ予選に向けて仕上げて来てると、言うとこか?」

「勿論だ。今日は勝たせてもらうぜ、古川。」

 ここからの長い勝負の模様は割愛させてもらうが、アヤカが帰ろうよと言ったのが午後九時で、燃え滾っていた俺たちはそれから一時間は戦い続けた。つまり午後十時だ。俺らはともかく家柄が厳しいアヤカは小言を言われたに違いない。帰りは家までアヤカを送ったが、理事長に別れろと言われてしまわないかとビビりまくっている俺だった。

「でも引き分けは無いよな!明日もやるぞ、古川!」

「わかってるよ。」

「じゃあ明日な!」

 溝口は変わってしまったのかもしれない。けれど、俺と島崎は変わらない。これからも変わらないと信じて。帰路についた親友の背中を送った。

「おう、また明日。」


 第一話 第三幕 協定取引


 傍観者 早乙女辰真



 時間は午後十時を過ぎた。黒塗りの乗用車に乗りながら煙草に火をつける。陽正高校理事・色芳香子を事情聴取した後、一旦県警に戻るため山中を走っている。道は舗装されていて走りやすいが街灯は一つもなく、先が見え難い。

(ええ、これでも心配しているんですよ)

(カウンセラーを導入して生徒の精神面を支えたいと思っています)

(十二人ですね…)

 色芳香子の言葉を思い出し、事件を整理する。

「去年の秋から被害者十二人。純粋な行方不明は三人か…」

(しかし、生徒たちにも不安が広がっているはずですね)

(十代というのは不安定ですから思い詰めて何をするか分かりませんしね)

 色芳香子と話しての感想は論点がズレている。ズラされている?

「確実に何かを知っている素振りだな…経歴を少し調べるか…」

 大卒で警察に就職してから六年。難事件をいくつか担当し、出世街道まっしぐらではあるが、気分は晴れない。未だやりがいも充実感も感じられない。俺の原動力はいつも悪魔を追い詰めることだ。

 対特異捜査担当 刑事さおとめ 早乙女辰真たつま

 俺の肩書きは大学時代にちょっとした研究をしていた為についてしまった。日本初の部署で二十八にしては大き過ぎる権限と事件の担当を執拗に与えられている。

(あなたにはわかりますか?友人を失う子の気持ちが)

(私にはわかります。辛い思いを高校生の時からするなんて…)

 嘘泣きも大概にしろと内心思っていた。色芳香子の理解している風の残酷さは経営者向きだと思った。一切、生徒のことを思っていないだろう。

「……勘ぐり過ぎか…?」

「いや、当然だろう?」

 助手席に何かを感じ、懐から拳銃を抜く。助手席に座る彼の蟀谷に銃を突き立てるが、動じた様子はない。運転を続けながら歯軋りした。加えた煙草は噛み切ってしまいそうだ。

「何故そこに居る?」

「県警に協力を仰ぎたくてさ。まして対特異捜査担当の早乙女とあっては、何をおいても仲間にしておきたいと思うのは当然じゃないのかい?僕ら十三委員会ならね」

「俺がお前を知らないと思っているのか?神戸四季」

「おっと…互いに素性は知れてるって感じかな?じゃあ話は早いよね、僕らに協力してよ。県警刑事さん。」

「それは調査結果を横流ししろと?」

「どう受け取っても構わない。ただし、協力と言った。互いに利益を得る関係だ。僕らはこのヤマを外堀からキッチリ埋めていきたいんだよ。」

「神隠し事件…十三委員会が絡んでくるとなると悪魔が裏に居ると睨んでいるんだな。答えろ。行方不明の三名は死んでいるのか?」

「ああ、死んだというよりも吸収されたと言った方が正しいがな」

「適当なこと言ってたら頭ぶち抜くぞ。」

「やってみろよ。」

「ああ」

 絞られた引き金から打ち出された弾丸は助手席側のサイドガラスを破砕しただけにとどまった。未だ神戸四季はそこに居て、一ミリすらも動いていない。動いたのは弾丸の方だ。

「……舐めるな。」

「蟀谷に当ててたのにどうして外れるんだ?」

「さてな?十三委員会にでも問い合わせることを勧めるよ。」

「じゃあこういうのはどうだ?」

 道は右カーブ、俺はハンドルを思いっきり右に切り、崖に車体を削らせた。外装は剥げ、フロントドアも吹き飛び、車体は左半分を押し潰したが、奴に影響はなかった。

「危ないことするなよな。」

 車を降りると奴はガードレールの上に立っていた。俺の車が衝突した場所から車線を挟んだ反対側だ。今のやり取りの間に逃げる隙なんてなかったはずだが…

「……俺にメリットを提示しないと協力関係なんて築けない。違うか?人殺しさんよ。」

「確かに、失念していた。じゃあ一つ手付でいい情報をくれてやる。」

「なんだ?」

「色芳香子はクロだ。」

 奴は煙の如く消えていなくなる。完全に消えるまで消えたことを知覚できない程、静かに消えて行った。大破した愛車を見て深いため息をつく。

「全く…生け簀かねぇ野郎だ。」

(部外者という線は無いのでしょうか?)

(神隠しだなんて…人間なせることではないでしょう?)

 色芳香子の言葉が頭を過る。神隠し事件。犯人像は容疑者を増やすばかりで見えてこない。信頼に足る部下も上司も居ない。俺は一人で解決していく、今までもこれからも。

「いい気になるなよ。色芳香子、神戸四季。直ぐお前らの鼻を明かしてやる。」


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