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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第4話 聖夜を夢見るクリスマス編

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美月 来たりて1

「三田せんぱ~い!」


 げっ! 竜田川美月!


 思わず身構える。


「来たわね……」

 亜由美がボソッとささやいた。


 一年の竜田川美月は、圭吾さんの元恋人、優月さんの妹だ。


「あっ、大野先輩、滝田先輩、先日はお泊り会に入れていただいてありがとうございましたぁ」


 『入れていただいて』って、あんたが無理矢理入り込んで来たんじゃないの。


「ここいいですか? いいですよね?」

 美月は、わたし達が陣取っている学食のテーブルに一緒に座った。

「そのお泊り会に僕が呼ばれなくて、美月ちゃんが呼ばれたってのがしゃくに障るんだよね」

 悟くんが不満そうに言う。


 いや、悟くん……あなた一応男の子だから。


「じゃあ次、うちでやりましょう! 悟さんも一緒に!」


 勘弁してよっ! 何でわたしが圭吾さんの元恋人の実家で『お泊り』しなきゃなんないのよ!


「美月、あんたいい加減に自分の学年の子と付き合いなよ」

 と、美幸が言った。


 よく言った、美幸!


「そんな事言わないで仲間に入れて下さいよ~ わたし、女の子の友達が少ないんですよ」


 その美貌じゃ無理ないわ。隣に立ちたくないもの。


「食事中に龍の飼育の話するのやめりゃ、女の子の友達できるんじゃない?」

 悟くんが言う。


 そうよね。麺類食べてる横で巨大ミミズの話は聞きたくないわ。


「ああ、その龍の話なんですけどぉ」

「ストップ、美月!」

 わたしは手を挙げて制した。

「悟くんの言う通りよ。それじゃ女の子じゃなくても逃げてくわ」

「すみません……」


 しおらしい顔してても騙されないわよ。

 数ヶ月前までわたし、この子にイビリ倒されていたんだから。

 でも、ちょっとかわいそうかな――基本、悪い子じゃないし。


「まあ、いいわよ。龍の話は後で聞いたげる」

「はいっ!」


「志鶴は甘いわねぇ」

 亜由美が苦笑する。


「そっ、だから圭吾にすぐ騙される」

 と、悟くん。


「やぁね。騙されてなんかいないわよ」


 たぶん。


「圭吾さんって言えば」

 美月がうどんを食べながら言う。


 それ食べながら巨大ミミズの話をしようとしてたの?


「今度できる宅配ピザのお店、三田先輩プロデュースってホントですか?」

「えっ? 何それ?」


 美幸、声がでかいよ。


「しづ姫のプロデュースっていうか、圭吾からのプレゼントだよ」

 悟くんが言う。

「しづ姫が宅配ピザ好きだって知ってた?」


「わぁーロマンチック……」


 宅配ピザが?


「お姉ちゃん、やっぱり圭吾さんと結婚すればよかったのに」


 前言撤回! 基本、あんたは嫌な子よ。


「結婚と言えばさ」


 今度は悟くん?

 これ、新手のしりとりゲームか何か?


「滝田は何でうちからの縁談、断ったの?」


 え―――――っ!


「聞いてないわよ、美幸」

 亜由美が怒ったように言う。


「だって断った話だから」

「残念。僕、姉弟になるの期待してたのに」

「まだ高校生だもの。もっと恋愛したいし」

「相手は誰?」

 亜由美が食い下がるように訊いた。


(たくみ)さん」


 巧さん? 悟くんのすぐ上のお兄さんだ。


「ねぇ滝田、少し恋愛してからならいいわけ?」

「だいたい、巧さんだってまだ大学生じゃない」

 美幸はブスッとふくれて言った。

「えーと、兄貴がちゃんと仕事について、滝田が二、三人、男をふったらOKってことだね? 兄貴に言っておくよ」

「言わなくていいっ! っていうか、この縁談、悟くんのお母さんの考えじゃないの?」

「僕の母は、(かなめ)兄貴の嫁にって考えてたんだよ」

 悟くんはニヤッと笑った。

「それも、『美幸ちゃんって可愛いわよね。うちのバカ息子の誰にでもいいからお嫁に来てくれないかしら。順番から言ったら要よね』って言っただけ。僕がちょっと脚色して巧兄貴に教えたら、すっ飛んでった」


 キレイな顔して、悪魔だわ……


「ねぇ、子供の頃は巧兄貴の事、好きだったじゃない。どうして離れていったの?」

「色々あるのよ。とにかくお節介はやめて!」

 美幸は本気で怒っている。

「はいはい。でも、これだけは言っておく。兄貴はへこんでるよ」

「知ったこっちゃないわ」


「ステキ……」


 美月、あんた何か妄想してる?


「やっぱ、王道は幼なじみですかね? ケンカ別れしたけど『お前じゃなきゃダメだ』みたいな。でも、彼女に妖しい美貌の同級生が迫ってくるんですよ。あっ、大野先輩ってそれっぽいかも」

「ついにわたしに百合疑惑?」

 亜由美が笑った。


 あれ? 亜由美、意外と面白がってる?


「わたしもそういう感じの恋愛したいです!」

「大輔くんに言えば?」

 わたしがそう言うと、美月はキョトンとした。

「大ちゃんと恋愛にどんな関係があるんですか?」

「うちの一族の男って恋愛に関して呪われてるのかな」

 悟くんがつぶやくように言った。



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