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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第4話 聖夜を夢見るクリスマス編

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黒服がうちにやって来る1

 うちの表門の前に黒い車が停まっている。


 ピッカピカね。

 圭吾さんのお客様かな?


 車に見とれながら門をくぐり抜けようとした途端、黒いスーツを着た男性四人に取り囲まれた。

 みんな体格がガッチリしていて、テレビドラマで見るボディーガード風だ。


「何者だ?」


 えっ? 何者って――ここわたしの家なんだけど。


 とりあえず愛想笑いを浮かべる。

「ごきげんよう」

 従姉の彩名さんの真似をして上品に言ってみた。

「この家の者ですが、何か?」


 四人は顔を見合わせた。


「聞いているか?」

「いいや。この家のお嬢さんは一人のはずだぞ」


 もうっ!


「家の者を呼んでいただけます?」

 わたしはいささかムッとして言った。

 一人が無線のような物で誰かと話してる。

「志鶴様?」

 塀の内側から顔を出したのは、羽竜家の敷地を管理してるおじさんだった。


 よかった!


「沢口さん、助けて。この人達、うちに入れてくれないの」

「困ります」

 沢口さんが黒いスーツの男達に言った。

「この方は当家でお預かりしている大切なお嬢様です。無礼があってはご主人様の怒りに触れます」

「そういう事は事前に言ってくれなくては。こちらも警備の都合上、リストにない方を入れるわけにはいかないのです」


 何の警備?


「お嬢さん、とりあえず名前と年齢と学校名と学年を教えてくれる?」


 全然『とりあえず』じゃないんですけど。


「ああ、それと写真も撮らせてもらうよ」


 えっ? 何? どうして?


「お止め下さい!」

 沢口さんが止めようとしたけれど、一人がデジタルカメラをわたしに向けた。

 シャッター音が消えるか消えないかのうちに、手がスッと伸びてきて男の手からカメラを取り上げた。


「何の騒ぎだ?」


 圭吾さんだ。


「僕の土地で勝手な真似をされては困る」


 うわぁ……

 言い方は物静かだけど、かなりご立腹だわ。


「こちらも困るのですよ、羽竜さん」

 黒服の一人が言う。


 命知らずね。


「ご家族が増えたなら言っていただかなくては」

「君達の職務は重々知っているが、僕の家の事情をいちいち説明する気はないね。この()は志鶴。僕が後見している娘だ」

 圭吾さんはそう言って、わたしの肩を抱き寄せた。

「以後、敬意をもって接してくれ。写真はなし――請求書は僕に回してくれ」


 圭吾さんはデジタルカメラを返すと、わたしを連れてすたすたと玄関に向かって歩き出した。

 なんとなく違和感があって足元を見ると、圭吾さんは靴下で歩いていた。


「圭吾さん、靴は?」

「ああ……急いでいたから」


 またドアを使わなかったのね?


 『うわっ カメラが壊れている!』って後ろで声がした。


 圭吾さんはわたしの母方の従兄で、婚約者。

 この羽竜本家の当主で、海外赴任中の親父の代わりにわたしの保護者を務めている。

 羽竜家は龍神の子孫と言われていて、一族の人はそれぞれ何かしら不思議な力を持っているんだけど……

 圭吾さんはその中でも特別。

 でも、気味悪がられたら嫌だからって、わたしにはなるべくそういう面を見せないようにしているみたい。


 わたしは別に平気だけどな。


「ゴメン。嫌な思いさせたね」

 圭吾さんは優しく言った。


 圭吾さんが謝ること?


「それはいいけど、あの人達 何?」

「今来ている客のボディガードだ」


 ホディガード付きのお客様って、すごくない?


 そういえば今日の圭吾さんは、上着こそ着ていないけどワイシャツにネクタイ姿。


「わたしのために、お客様を放っておいて来たんじゃないの?」

「そう。もう戻らないと――ああ、嫌な奴が来た」


 圭吾さんの視線の先には、紺色のスーツを着た男の人がいた。

 圭吾さんよりもう少し年上だろうか。背筋をピンと伸ばした立ち方は、さっきのボディーガードさん達以上に隙がない。明らかに、お仕事関係のお客さまだ。


「おい、羽竜――」

「今行く」


 圭吾さんは男の人に手を挙げて合図をしてから、わたしに小声で言った。


「僕が先にあいつを連れていくから、少し後からお入り」


 ああ、いつものね。


 圭吾さんはちょっとばかりヤキモチ妬きで、若い男の人にはわたしを会わせたがらない。


「勝手口から入ろうか?」


 わたしが言うと、圭吾さんはものすごく顔をしかめた。


「志鶴は何があっても裏口から入ったりしてはダメだ。立場に合わない」


 立場って……

 そりゃ圭吾さんと結婚の約束をしているけど、わたしはまだ居候中の従妹なんだけどな。


「入ったら真っ直ぐ部屋に行ってて」


 はーい


 ――って、いつもいつも言いなりになると思ってるの?




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