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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
おまけの圭吾編 3

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文化祭への招待

「圭吾さん、あのね」

 志鶴が何やら紙をヒラヒラさせて言う。

「文化祭があるの。一般公開の日、来てね。ね?」


「いいよ」


 そんなにかわいくお願いされたんじゃ、他に返事のしようがない。


 僕に渡されたのはカラーペーパーにコピーされた案内書だ。

 僕だって、四年くらい前までは高校生だったのに、もうずいぶん前のような気がする。


「クラスで何やるの?」

「模擬店。メイド喫茶なの」


 そりゃまたベタだな。


「志鶴もメイドさんになるわけ?」

「そう、なるの! だから絶対来てね」


 はいはい。ずいぶんと張り切ってるんだね。




 志鶴は文化祭の準備で毎日帰りが遅い。で、僕は毎日、学校まで車で迎えに行く。


「圭吾さん、過保護」


 って志鶴は言うけど、その調子じゃバスの中で居眠りだよ。

 結局は、終点まで迎えに行くことになるさ。

 家に帰って、ご飯を食べて、風呂から上がった頃には、志鶴は半分眠っている。

 そのまま押し倒したくなるほどかわいくて無防備。

 志鶴はいつになったら、僕に最後まで愛させてくれるんだろう。

 半分あきらめのため息をつきながら、僕のベッドに志鶴を寝かせる。




 文化祭当日――



 志鶴の頼みじゃなきゃ、行事の時に学校なんか来ない。

 僕はこの土地で最も由緒ある一族の長だ。

 わずらわしいほど多くの人間が挨拶と称して僕の周囲にたむろす。

 勘弁してくれ。

 時にはただの若い男でいたい。


「よぉ、圭吾」


 よかった。少なくとも一人は、僕を普通に扱う奴がいた。

 従弟の悟――いや、今日はジャック・スパロウらしい。


「やあ、キャプテン。粋だね」

「イケてるだろ?」


 イッちゃってる感じだけどな。


 海賊のコスプレした従弟と、志鶴のクラスまで行った。

 メイド姿の女の子が、入口に三人ほど。


「お帰りなさいませ、ご主人様――って、志鶴ぅ~、圭吾さん来たよぉ」


 何ともユルイ感じのメイドだな。


 奥から出てきた志鶴も他の女の子同様、ミニの黒いワンピースにフリルのついたエプロン姿。

 髪は珍しく高い位置でツインテールに結んでいる。


「圭吾さん! いらっしゃい」


 挨拶は『お帰りなさいませ』じゃなかったっけ?


「どう?」


 って志鶴がクルッと回ったので、


「かわいいね」


 と答える。



「それだけかよ」


 悟が突っ込みを入れた。


 大きなお世話だ。


「圭吾さん、一緒に他のところ回ろ」

「いいの?」

「わたし、昨日と今日、みんなの分も働いたの。圭吾さんが来たら時間取れるように」

「メイド喫茶にも同伴出勤があるって知らなかった」

 悟が言う。

「同伴――なぁに?」

「覚えなくていいよ」

 僕は笑って言った。




 きっと今夜も、志鶴は倒れるように眠るだろう。

 本音を言うと、メイドのコスプレより、パジャマ代わりに大きな僕のTシャツを着ている君の方が好きだけどね。


 それは内緒の話。






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