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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第3話 魔女とわたしの黒魔術編

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呪縛1

 数時間たって帰って来た圭吾さんは、黒とオレンジ色の包装紙でラッピングされたチョコレートの箱を二つ手にしていた。

 リボンの代わりに、小さなジャック・オ・ランタンがついている。


「夏実ちゃんと志鶴に」


 わたしとなっちゃんは、歓声をあげた。


「野郎にはお土産無し?」


 悟くんが言うと、圭吾さんは箱入りのポテトチップスをテーブルの上に乗せた。

 こちらも、黒とオレンジ色の特別パッケージだ。


「なんで全部黒とオレンジなの?」

 悟くんが首をかしげる。

「だって、もうすぐハロウィンだよ」

 と、わたし。

「それ、外国のお祭りだろ?」

「最近はクリスマスみたいに、日本でもハロウィン関連の物がお店に並ぶのよ」

「企業の陰謀だよ」

 って、圭吾さんが言う。

「バリバリの神道の我が一族には、縁のない話だね」

「ひょっとして、クリスマスもやらないの? クリスマスツリーもなし?」

 思わず、わたしの声は嘆くようになってしまった。圭吾さんが、グッと言葉を詰まらせる。

「大丈夫だよ」

 悟くんがニヤリと笑う。

「今年は圭吾が、でかいツリーを買うから。たぶん、しづ姫の身長よりでかいやつだよ」

「インターネットで注文しておいた方がよさそうだな」

 圭吾さんがつぶやいた。


「まあそれはそうと、今回の件はこの系統だよね」

 悟くんはハロウィン仕様のパッケージを指差して言った。

「そういうことだろ?」

「ああ、同じ臭いがするね」

 圭吾さんが答える。

「だが、系統が違っても上手く押さえ込めるかな」

「基本は一緒だろ? 相手は見つかった?」

「予想通りだったよ。ただ、本体が見つからない」

「近くにあるさ。そっちは僕の仕事だ」


 何の話?


「明日は志鶴も出かけるからね」

 圭吾さんが言った。


 そうなの?


「じゃあ、明後日はわたしと出かけられるかしら?」

 なっちゃんが、チョコを口に入れながら言った。

「航太のサッカーの試合があるのよ」

「明日で用事は片付くと思うよ」

 圭吾さんが答える。

「航太って陸上部じゃなかった?」

 わたしは首をかしげた。

「陸上もやってる。サッカーは助っ人だ」


 航太の言葉に、悟くんが

「たまにいるんだよな。こういうスーパーマン」

 って言った。




 日暮れからじょじょに暗くなってくると、なんだか心細い気がした。

 ずっと、圭吾さんの側にベッタリとくっついて、お風呂も大急ぎで上がった。


「圭吾さん、来て!」

 洗面所から、情けない声で圭吾さんを呼ぶ。

「どうした?」

 圭吾さんが来るまで、わたしは頭からバスタオルをかぶっていた。

「髪、乾かして。鏡を見たくないの」

「じゃ、目をつぶっていて」

 目をつぶると、圭吾さんがバスタオルを外した。

 丁寧にふいてもらって、それからドライヤーで乾かしてもらった。


 髪に触れる圭吾さんの指にホッとする。


 その後、居間のソファーで圭吾さんの膝に頭を乗せて横になった。


 圭吾さんが黙って髪を撫でる。


 ふんわりと気持ちよくなって、ウトウトとした。


「いつもこんな?」

 悟くんの声がする。

「いいや。かなり神経質になってるみたいだ」

 圭吾さんの声。

「かわいそうに」

「報いはきっちりと受けさせる」


 今のは圭吾さんの声? 凍りつくように冷たい声だ。


「誰を相手にしてるか理解したら、向こうさんも死ぬほど後悔するね」

「もう死んでいる人間かも知れないがね」


 背筋がゾクッっと寒くなって、圭吾さんの膝で身じろぎをする。


「大丈夫だよ、志鶴」


 いつもの優しい声がして、なだめるような手がわたしの髪を撫でた。



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