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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第1話 裏庭に龍?な はじまり編
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始まりの朝 3

 転校初日にして、どっと疲れた。


 学校の駐車場まで行くと、圭吾さんが車にもたれて待っていた。

「ただいま……です」

 わたしがぐったりとして挨拶すると、圭吾さんは

「ずいぶんと疲れたみたいだね」

 と、言った。

「質問攻めで……こんなに注目されたの、生まれて初めて」

「それは、それは――迎えに来てよかったみたいだね」

「はい……」

 そんなに長い通学時間ではないけれど、今日のところは勘弁してほしいわ。

「三田さーん!」

 遠くから、クラスの女の子とおぼしき三人が、わたしに手を振った。

「また明日ねー!」


 明日も生きていたらね。


 わたしは、曖昧な笑みを浮かべて、手を振り返した。

「早速、友達ができたみたいだね」

 圭吾さんが言った。

「あまり嬉しそうじゃないのは、僕の気のせい?」

「こんなに人と話した事がないんで、疲れてしまっただけ。乗ってもいい?」

「ああ、いいよ。おいで」

 圭吾さんは、助手席のドアを開けてわたしを車に乗せた。

「僕ともしゃべりたくない?」

 圭吾さんは運転席に乗り込むと、そう言った。

「礼儀知らずだと思うかもしれませんけど、何も聞かないで一方的にしゃべってもらえると嬉しいわ」

 圭吾さんはクスッと笑った。

「女の子って、おしゃべり好きだと思っていたのに」

「好きですよ。『おしゃべり』ならね。今日のは質問とか尋問だったわ」

「小さな町だからね、他所から来た人は目立つんだ。すぐに収まるよ。情報が伝わるのも早いから」


 だといいけど。


 運転席側の窓がコツコツと鳴った。制服姿の男の子が車の横に立っている。

 圭吾さんが大きなため息をついた。

「君の気持ちが今分かったよ。ちょっと待ってて」

 圭吾さんは車を降りると、男の子を連れて車から離れた。

 チラッと見えた男の子の横顔はとても綺麗で、圭吾さんにちょっと似ていた。


 親戚かな……?


 二人は少し離れた場所で立ち話をしていた。

 時々、男の子がわたしの方を見て、何かを言っていたようだった。

 しばらくして、圭吾さんが一人で戻ってきた。

「お待たせ。今度こそ帰れるよ。それともどこかに行きたい?」

 わたしは首を横に振った。

「帰って倒れたい」

「了解」

 圭吾さんは車のエンジンをかけ、車を出した。

「何も訊かないんだね」

「みんな、聞いて欲しい事は自分から話すから。言わない事は、ひょっとしたら、訊かれたくない事かもしれないでしょ?」


 少しの沈黙の後


「君は人の気持ちに敏感だね」

 圭吾さんが言った。


 そう?

 考えた事もないけど。


「さっきのは従弟なんだ。司の弟だよ。二年だから君と同じ学年だね」


 何を話していたか分かる。


 あの子は誰?

 どこから来たの?

 本家に住んでいるって本当?


 ――わたし今日、散々訊かれたもの


 それから圭吾さんは車を走らせながら、町の事を色々教えてくれた。


 でも、


 本当に知りたい事はやっぱり謎のままだった。




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