過去への扉4
朝食が終わった後、わたしとなっちゃんで後片付けをした。
途中から航太も加わる。
「あっちの二人は、何かの打ち合わせをしてるぞ」
と、航太。
「圭吾さんが留守中の注意事項だと思う」
わたしは、拭いたお皿を航太に渡しながら言った。
「いつもの事よ。圭吾さんは過保護なの。自分がいない時は、必ず悟くんにわたしを預ける」
「じゃあ、ちゃんと面倒見てもらってるんだな?」
「なぁに? 航太まで」
「航太も過保護なのよ」
なっちゃんが言った。
「暗くなったら駅まで迎えに来るし、男の子と電話で話してたら『どこの誰だ』ってしつこいし。しーちゃんの事だって、帰って来てるかどうかいつもチェックしてたよ」
「余計なこと言うなよ」
「夏休みに、しーちゃんが毎日一人でどこに行くのか、後をつけたこともあったわよね?」
「心配だったんだよっ!」
意外な話に、わたしは目をぱちくりとさせた。
「しーはおとなしいし、あんまり自分を見せねぇだろ?」
全然知らなかった。
今までのわたしは自分の殻に閉じこもるのに精一杯で、誰かの思いやりとか優しさに気づきもしなかったんだ。
心を開けば、いつだって孤独じゃなかったのに。
「航太、ありがとう」
素直な気持ちで言えた。
「ああ。結局、しーはとんでもねぇ奴に取られたようだけどな」
「圭吾さんは、とっても優しいわよ」
「ありゃ、食わせ者だと思うぞ」
「その意見に異論はないよ」
キッチンの入口から悟くんが口を挟んだ。
「しづ姫、圭吾が出かける」
「はぁい」
圭吾さんは、ビジネススーツ姿だった。
わぁ ステキ。
いかにも大人っぽくて、頼りがいがありそうに見える。
「さっきも言ったけど、二、三時間で戻って来るから。外出しちゃダメだよ」
「分かった」
「悟の言うことをちゃんと聞いて」
「もう! わたしは幼稚園児?」
「保育園児だ」
圭吾さんはそう言って、わたしの唇にサッとキスをした。
圭吾さんのバカ。
「じゃ悟、後は任せた」
「了解!――ああ圭吾、これは司兄貴から」
悟くんは腕からブレスレットを外して圭吾さんに投げた。
「朝早くから僕が母に書き置き書いてるのを見て、それを二つくれたよ」
「これはこれは。帰ったら礼を言わなきゃ」
圭吾さんはそう言って、ブレスレットを手首につけた。
悟くんの腕にもまだ一つある。
白い石のブレスレット。
よくある貴石の玉をつなげたようなブレスレットだけど、いったい何の石?
「ねぇ悟くん、そのブレスレット何?」
圭吾さんが出かけた後、悟くんに訊いてみた。
「羽竜の地所で採れる石だよ。僕らの力は土地に根差しているからね、他所に来ると力が弱まるんだ。でも、これをつけてると、かなりマシになる。兄貴は他所の土地に出かけることが多いから、いくつか作らせたみたいだね」
へぇ。
「まぁ何にしろ、圭吾に任せときゃ心配いらないよ」
「うん」
「さてと、これから何したい?」
「ちょっと荷造りしたいの。ここを出るときは、ずっとあの家に住むとは思わなかったから」
「OK 手伝うよ」
キッチンからなっちゃんと航太が戻って来た。
「しーちゃん、わたしここで勉強していい?」
なっちゃんが言う。
「どうぞ」
なっちゃんは、カバンを取りに家に戻った。
「君のお姉さんってマイペースだね」
悟くんが航太に言う。
「ああ、いいだけ天然だよ」
航太は苦笑いを浮かべた。
「しーも天然だけどな。おまけにガキだし」
「誰がガキよっ!」
「彼氏にだまされんなよ」
「しづ姫じゃ、圭吾には歯が立たないよ」
悟くんが肩をすくめた。
「だろうな……」
そこで意気投合なのっ?




