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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第3話 魔女とわたしの黒魔術編

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古巣へ4

 うちに入る前に、航太の家に挨拶に寄った。


 圭吾さんはお隣りのおばさんに、『三田の叔父からこの子の後見人を任されています』と、名乗った。


 そうかぁ。対外的にはそう言うんだ。

 むこうにいたら身内ばっかりだから、『従妹の志鶴』で全部済んじゃうんだよね。


 なっちゃんは、まだ塾から帰ってなくて会えなかった。


 残念。


 うちの鍵を開けようとしたら、圭吾さんがポケットからペンライトを取り出した。


「それ、どうするの?」

「電気のブレーカーを落としてるんじゃないの?」


 そうだった。


 圭吾さんはライトを照らして中に入ると、ブレーカーを上げた。

 わたしだったら絶対に踏み台が必要。


「やっぱり圭吾さんに来てもらってよかった」

「踏み台がいらないから?」

「違うわよ。いやね」

「後ろについて来て。部屋を全部見回るから。異常がなかったらピザを頼んでいいよ」


 部屋は、親父とわたしが出た時のままだった。


「もうピザ頼んでいい?」

「いいよ。僕の分も選んで注文して。僕はもう少しやることがあるから」


 奥の部屋から圭吾さんの低い声とパンッと手を打つ音が聞こえる。

 何かをお祓いしてるような感じ。

 羽竜一族の人達が『本来の仕事』と呼ぶもの。

 人と土地を守る鎮守の仕事らしいけど、どんなことをするのかはよく知らない。

 圭吾さんは前に一度、そういう仕事先にわたしを連れ歩いて苦い思いをしている。

 あれ以来、わたしを仕事に連れ歩くことはなくなった。

 わたしが巻き込まれて倒れたのは、圭吾さんのせいじゃないのに。

 ダイニングテーブルの椅子に座ってぼんやりと考えていると


――あんたは邪魔者なんだよ


 心の奥から、馴染みのある声が聞こえる気がした。


 違う。わたしは邪魔者なんかじゃない。


「志鶴? どうした?」


 いつの間に戻って来たのか圭吾さんが目の前で手を振っている。


「圭吾さんはわたしが必要なんだよね?」

「そうだよ。急になんだい?」

「時々ね、確認しないと不安になるの」

 圭吾さんは、わたしの前にひざまずいた。

「君を愛しているよ。胸が痛くなるほど愛している」

 わたしは圭吾さんの首に腕を回して、頬に頬を寄せた。

「大好き」




 それから、間もなく届いたピザを二人で食べた。

 わたしは、久しぶりのピザをいっぱいにほお張った。


 ん……わぁ。しまった。あんなにタバスコかけるんじゃなかった。


 圭吾さんは笑ってコップにお水をくんでくれた。

 相変わらず色気とは無縁だわ、わたし。


「買い過ぎたかなぁ」

「そうでもないんじゃないか? お客様みたいだし」


 圭吾さんの言葉が終わるか終わらないうちに、玄関のチャイムが鳴った。


「圭吾さん?」

「出るといいよ。お隣りさんじゃないかな?」


 半信半疑で玄関のドアアイをのぞいた。


「なっちゃん?」

「しーちゃん! 早く開けて!」

 ドアを開けると、お隣りのなっちゃんが飛び込むように入ってきた。

「久しぶりぃ 会いたかった! うちからアイスをゲットしてきたよ」

 なっちゃんはポリ袋をユラユラ振った。

「よお」

 なっちゃんの後ろには航太が立っていた。


「志鶴、上がってもらったら?」


 圭吾さんが、部屋の中から声をかけた。



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