古巣へ2
また車に乗って、今度はインターチェンジから高速道路に入った。
車に乗ってからずっと黙っていると、しびれを切らしたように圭吾さんが口を開いた。
「怒ってるんだね?」
答えない。
「ゴメン。僕が悪かった――これでいい?」
悪いなんて思ってないくせに。
「志鶴?」
「圭吾さん、いったいどれくらい買ったの?」
「彩名に二、三着選んでって頼んだだけだよ」
それなら、絶対に上から下まで五セットくらいあるわ。
「圭吾さんはいつも行き過ぎなの」
「志鶴に任せてたら何も欲しがらないじゃないか」
「必要ないもの」
「僕のことも?」
「一緒に来てって言ったわ」
「一人で行けるとも言ってた――ねえ、どうして僕らはケンカしてるわけ?」
「してないわよ」
「だといいけど」
ケンカなんかじゃない――よね?
「圭吾さん、怒ってる?」
「怒ってるのは君で、僕はすねているんだ」
思わず笑ってしまった。
「わたし、怒ってなんかいない」
「そう? でも僕はすねている」
「言い過ぎたかも。機嫌直して」
「なんだ。もう終わり?」
「圭吾さん、わざとわたしを怒らせてる?」
「僕が? まさか」
じゃあ、なんで笑いをこらえてるのよ。
「僕は欠点だらけの男だよ。気難しいし、自分勝手だし、ヤキモチ妬きだ。志鶴が腹を立てても仕方がない。これから先、ケンカすることもあるだろう。その方が自然だ」
「ケンカは嫌いよ」
「だからって自分の気持ちを抑えるのはやめてくれ。今みたいにプリプリすればいいのさ。その後で仲直りしよう」
「変な人」
「僕の欠点が増えた」
「もうやめて。わたしの恋人を悪く言わないで」
「じゃあ仲直りしよう。僕を許して」
「いいわ」
もう。ホントにずるいんだから。
「叔父さんの家に着くのは七時過ぎだな」
圭吾さんは、あくまでも『志鶴の家』とは言いたくないらしい。
「食事、どうする?」
「ピザ! 宅配ピザ!」
わたしは勢い込んで言った。
圭吾さんの家で、絶対に食べられないのがジャンクフード。
でもジャンクフードで育ったわたしは、時々ものすごくそういうものが食べたくなるのだ。
「うちにメニューのチラシあるの。絶対にピザぁ~」
「はいはい」
圭吾さんはおかしそうに言った。
「そんなにピザが好きだったっけ?」
「イタリアンレストランのじゃなくて、フランチャイズの宅配ピザが好きなの」
「好きなのはどの店? うちの近くに作ってあげるよ」
へっ?
「うちの家業は不動産の賃貸だよ。出店場所なら山ほどある」
いや、そんな大きなコトをさりげなく言われても……
「友達と相談してからでいい? どうせならみんなで楽しめるところがいいし」
「そうだね」
うん、これでうやむやにできる――かなぁ?




