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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第3話 魔女とわたしの黒魔術編

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黒い影2

 圭吾さんが連れて行ってくれたのは、小路を入った所にあるレトロな感じの古いカフェだった。

 色褪せた木製のドアを開けると、ベルの音がカランカランと鳴った。


「あら! 珍しい。圭吾ちゃんじゃないの」


 カウンターの中にいたママさんが言う。


 圭吾ちゃん?


 危うく吹き出しそうになった。


「こんにちは。ストロベリーパフェできる?」

「もちろんよ。入って」


 わたし達は中に入って窓際の席に座った。


「パフェ、二つ?」


 お水を持って来たママさんが訊く。貴子伯母様より、もう少し年上だろうか。親しげではあるけれど、必要以上に踏み込んでは来ない――そんな印象を受けた。


「一つだよ。僕はコーヒーを」

「大人ぶって、つまらない子になったわね」

「成人式はもう済ませたからね。この子は志鶴。うちにいる従妹だよ」

「こんにちは」


 慌てて挨拶をした。

 圭吾さんが、誰かにわたしを紹介するのは珍しい。


「いらっしゃい。じゃ、この子が噂のお姫様なんだ」

「そう。どんな噂か知らないけどね」

「圭吾ちゃんが、きれいな女の子をお屋敷に閉じ込めてるって聞いたわよ」

「それじゃ犯罪だ。学校には行かせてるよ」


 圭吾さんは苦笑した。


「安心したわ。ストロベリーパフェとコーヒーね」


 ママさんは、カウンターの中へ戻って行った。


「昔なじみ?」

「小学生の頃からのね。その頃は僕もパフェを食べてた」


 小学生の圭吾さんって、どんなだったのかな。


「志鶴と一緒に育てばよかったと思うことがあるよ」

 圭吾さんが言う。

「きっとベタ甘に甘やかしてた。一緒にここでパフェを食べてた。手をつないで小学校に連れて行った。受験勉強を見てやって、連れて来る男友達を蹴散らしてた」


 わたしは笑った。


「いつも似たような事してるじゃない」

「でも、たくさんの時間を無駄にした。もっと一緒にいられたかもしれないのに」

「時間は戻せないわ。それに一緒に育ってたら恋人にはなれなかったかも」

「それは言えてるな。今でも兄貴扱いされて苦労してるんだから」

「ちゃんと恋人だと思ってる」


 圭吾さんは何も言わなかったけど、疑わしそうな顔をしてた。


 もう。ホントだってば!


 しばらくして運ばれてきたストロベリーパフェは、本当に大きかった。

 でも一口食べると、クリームがあっさりしていてとっても美味しい。


「おいしい!」

「だろ?」


 わたしはいつも家でやるように、パフェを大きくすくって圭吾さんに差し出した。


 圭吾さんは一口で食べると、『昔と変わらないな』って言った。


「ねえ圭吾さん、昨日の黒い紙人形の事だけど……」

「気にしなくていいよ。あれはただの脅しだ。実害を加える事はできない」

「でも、誰かがわたしに嫌がらせをしているのよね」

「目的がよく分からないんだ。この土地の者じゃない事は確かで、そうすると、ここに来る前から志鶴を知っている人間ってことになる」

「ここに来て半年になるのよ。今まで何でもなかったのに」

「居場所が分からなかっただけかもしれない。羽竜の土地は霊力が強いから。でもほら、修学旅行で外へ出ただろう?」


 あっ……


「電話が変だって言われたのは、その後だったよね?」

「わたし、旅行先で知らない人に『電話落としましたよ』って手渡されたわ」

「知らない人だった?」

「うん。知らないお婆さんだった。でも……」

「何?」

「美幸が『あの人顔が二つついてる』って気味悪がってた」




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