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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第3話 魔女とわたしの黒魔術編

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不安と心配4

 ぬくぬくとした温かさの中で、ふと目が覚めた。何度か瞬きをして、うっすらした闇に目を凝らす。

 きっと、まだ夜中だろう。

 そのまま目蓋を閉じようとしたけれど、うん、目が覚めたついでだし……


 わたしは、腰に乗っかった圭吾さんの腕をそっとすり抜けようと頑張った。


「志鶴?」


 もう! 圭吾さんって熟睡する時あるのかな。


「トイレ」


 わたしは、ぶっきらぼうに答えた。


「一人で行ける?」

「行けるわよ! 失礼ね!」


 圭吾さんのクスクス笑いを背に、寝室のドアを開けた。


 圭吾さんの部屋は、三階のフロアを全部使ってマンションのような造りになっている。トイレまではすぐ――なんだけど?


 廊下の片隅に、黒い水たまりのようなモノがある。何だろう? 雨漏りにしては変だ。

 目をこすり、前屈みになって水たまりを見つめた。すると、その表面が揺らぎ、シュルシュルと音を立てて縦に伸びた。


 うわっ! 何、これ?


 思わずのけ反って、数歩下がる。


 人の形をした黒い影のようなモノが、ゆっくりと近寄って来た。手足がやけに長く、カクカクとぎこちない動きだ。


 わたしは、また数歩下がり、バランスを崩して床にへたりこんだ。


――見つけた


 黒い人型が、わたしの上にのし掛かるようにして言った。低く震える変な声だった。


――すぐに捕まえるよ


「圭吾さんっ!」


 わたしは怖くなって、圭吾さんの名を叫んだ。


「志鶴!」


 圭吾さんが寝室から飛び出してきた。

 わたしは這うようにして、圭吾さんの元に逃げた。力強い腕に抱き寄せられて、ホッと息をつく。


「大丈夫? どうした?」

「あれ……」


 圭吾さんは、わたしが指差した方を見た。


「何が見える?」

「圭吾さんには見えないの?」

「残念ながら」

「黒い人影みたいなモノ。右の壁側に」

「羽竜の本家に潜り込ませるとは、いい度胸だな」


 圭吾さんは片手を上げて、何かをつかむような仕草をした。


「捕まえた」


 黒い人影はシュルシュルと縮み、圭吾さんの手の平に吸い込まれるように納まった。

 圭吾さんが手を開くと、中には黒い紙人形のような物があった。


「何それ?」

「何かの呪術道具みたいだな。この辺の人間が使うのとは全く異質だけど」

「わたしを見つけたって言ってた。捕まえるって」

「志鶴狙いってことか……」


 いったい誰が?


 怖くなってブルッと震えると、圭吾さんはわたしを抱きしめた。


「そんな事は僕がさせないよ」

「うん」


 大丈夫。圭吾さんさえいれば怖くない。

 しばらく背中を撫でてもらっているうちに、気持ちが落ち着いてきた。


「ところで、志鶴」

「なぁに?」

「今ので漏らしてなければ、トイレの前までつき合うけど?」

「失礼ね! 漏らしてないわよっ!」



 でも、トイレはつき合ってね――




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