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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第3話 魔女とわたしの黒魔術編

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不安と心配1

 近頃の圭吾さんは始終イライラしてる。


 わたしといる時だけは落ち着くみたいで、家中の人が圭吾さんをわたしに押し付ける。

 だけど、わたしといる時でも憂うつな気分は消えないのか、黙り込む事が増えた。


 昨日の夜、圭吾さんの部屋でテレビを見ていた時も変だった。

 視線を感じて振り向いたら、圭吾さんが壁にもたれてわたしをじっと見ていた。


「お仕事終わったの?」

「いや。ちょっと休憩しようと思って」

「最近、忙しいのね」

「ゴメン。週末はちゃんとお相手するよ」

「構ってほしくて言ったわけじゃないわ」

「そうだろうね」


 どこかトゲのある言い方。


「圭吾さん、どうしたの?」

「何でもないよ」


 圭吾さんは、あまり自分の事を話さない。


 でも、圭吾さんの気持ちが不安定なのは、優月さんの結婚が近いせいかもって、わたしは思ってる。

 優月さんは圭吾さんの元恋人で、とっても綺麗な大人の女性。

 今の圭吾さんはわたしを好きなんだからって自分に言い聞かせてるけど、もし優月さんがフリーだったら圭吾さんはわたしを選ばなかっただろう。


 少しだけ、わたしは嫉妬している。人を好きになるのはいい事ばかりじゃない。


 そして今、もう一つ気になる事がある。

 海外赴任中の親父と連絡がずっととれないのだ。

 紛争地域にいるからもともと連絡は取りづらいのだけれど、かれこれ二週間以上Eメールさえも来ないってのはどう考えればいいんだろう。

 何かあれば親父の勤めている新聞社から連絡が入るだろうけど……


 わたしは机の引き出しからカードファイルを取り出した。


 確かこの中に入れて……あった!


 親父の仕事仲間、カメラマンの村瀬さんの名刺。それから、新聞社の山口さんの名刺。

 どちらも親父と個人的に親しくて、わたしが小さい頃からの顔見知りだ。


 もう少し――もう少し待って、親父の消息がつかめなかったら連絡しよう。

 でも、こういう事って先に圭吾さんに相談した方がいいのかな?

 うう……最近の圭吾さんには相談しづらいんだけど。


 ぐるぐるぐるぐる色々考えて、やっぱり早めに圭吾さんに話そうと決めた。


 でも、いつ話そう?

 最近ずっと忙しそうだし……


 その夜、いつものように圭吾さんの横でご飯を食べながら、いつ、何て切り出そうと悩んでいると、

「上の空だね。何かあった?」

 と、圭吾さんが言った。


 チャンスじゃない!


「あのね、後で相談があるの」


 圭吾さんが怪訝そうにわたしの方を見る。


「何? 改まって」

「家に帰りたいの」


 わたしがそう言った途端、部屋の中が静まり返った。

 圭吾さんの手が止まり、伯母さまと彩名さんが息を飲むのが分かった。


 何なの?


「家って?」


 圭吾さんが静かに訊く。


「わたしの家」


――ですけど?



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