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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第2話 宿題は難題な夏休み編

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モンスター母子 4

 夕食の時は最悪で、


 わたしの隣は圭吾さんっていうのはいつも通りなんだけど、彩名さんはいないし、向かい側に容子オバサンと梓さんが座ってる。

 なんだか見張られてるみたい。

 ご飯を食べながら、みんなの話を上の空で聞いていた。


 容子オバサンが、何かしゃべり続けている。


 政治なんて興味ないわ。


 梓さんが、しきりに圭吾さんに話しかける。


 何とかフィルのコンサート?

 行こうと思った事もない。


 あ~、つまんない。

 後で美幸に電話しようかな。


 あら? 急に静かになった

 げっ! 皆さん、わたしを見てる?

 何? 何? 何なの?


「志鶴?」

「うわっ! はいっ! 何っ?」


 うろたえて回りをキョロキョロすると、圭吾さんの手が伸びてきて、わたしの顔を自分の方に向けた。


「さっきから僕が呼んでいる」

「ごめんなさい。ちょっと考え事を……」


 圭吾さんと目が合った途端、昼間、膝の上に抱き上げられた記憶がどっとよみがえって、わたしは真っ赤になって目を伏せた。


「本当にシャイだな」

 圭吾さんがため息混じりにつぶやいた。


「落ち着きがないこと」

 容子オバサンが嫌みったらしく言う。


「僕が悪いんですよ。さっきちょっと悪ふざけが過ぎたようだ」

「悪ふざけ?」

「少しばかり親愛の情を示したんですが、志鶴には刺激が強すぎたみたいですね」


 容子オバサンは咳ばらいをした。


「圭吾さんのような方には、志鶴さんでは物足りないのではなくて?」

「そうでもないですよ。思い通りにならないのが、こんなに楽しいと思ったことはありません。口説きがいがある」


 わたし、く……口説かれてる訳?


「まあ、結婚する頃にはもう少し大人になるでしょう」

「目新しさなんてすぐに薄れますよ。そういう純真なお嬢さんはそっとしておいておあげなさい。それより、うちの梓との事を真剣に考えてもらいたいわ」

「その話は、毎年真剣にお断りしているはずですが?」

「うちの梓のどこが気にいらないっていうの?」


「申し訳ないが、全く抱く気になれません」


 そこ大事だけど、そんなにはっきり言わなくても……


「ひどい……ひどいわ、圭吾さん」

 梓さんが立ち上がった。


 確かにちょっと言い過ぎだったよね。


「わたしがこの子より劣るとおっしゃるのね? 屈辱だわ。こんな色気のカケラもないような女子高生に負けるだなんて!」


 ちょっと待て!

 確かに色気はないけど、他人に言われたくはないわっ!


「そうですよ」

 容子オバサンがさらにたたみかける。

「いくらお母様の、貴子さんの言い付けだからって、こんな見栄えのしない子供と本気で結婚する気なの、圭吾さん?」


 見栄えしなくて悪かったわねっ!


「お二人とも」

 圭吾さんがうんざりしたように言った。

「梓さんは、僕以外の男には充分魅力的です。それから、志鶴を選んだのは僕の意志です」

「どうしてその子なのよ! どうしてわたしじゃダメなの?」

 梓さんは感情的になって、声を荒げた。


「志鶴を愛してるから」

 圭吾さんはさらっと答えた。


 梓さんはワッと泣き出して出て行き、


 容子オバサンは、

「わたしは絶対に羽竜本家の嫁としては認めませんからね!」

 と、捨て台詞を残して梓さんの後を追い、


 愛してると言われたわたしは、頭が真っ白になって、固まっていた。


「毎年こうだから気にするな」

 圭吾さんが言った。


「圭吾さん?」

「ん?」

「この修羅場が二週間続くの?」

「そう思った方がいいよ」

「あの人達、来年も来る?」

「たぶんね」

「結婚、考え直していい?」

「くだらない事言ってないで、ご飯を食べてしまいなさい」



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