表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第2話 宿題は難題な夏休み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/171

モンスター母子 1

 夏休み補習三日目。



 この二日間、圭吾さんの部屋に泊まり続けている。


 仕事で留守がちな親父と二人暮らしだったわたしには、ずっとそばにいて話を聞いてくれる圭吾さんとの時間はすごく楽しくて、幸せで、引き止められればズルズル圭吾さんの部屋に居ついてしまう。

 そしてウトウトしたが最後、圭吾さんは絶対に朝まで起こしてくれない。


「ふつうは『朝まで寝かせてくれない』だよね」

って、美幸たちにはからかわれる。


 何かされるわけじゃないし、別にいいか――とも思うんだけど。これって完全に圭吾さんの思い通りになってるって事?


 でも本当の事を言えば


 圭吾さんの腕の中で眠るのは心地いいんだ。


 夜明けのまどろみの中で、『ここは安全な場所』って思ってる自分がいる。


 圭吾さんには言えないけどね。



 学校から家に帰ると、玄関に見慣れない女性ものの靴が二足。


 お客様かな?


 和子さんがわたしを出迎えて、すぐに台所に連れて行った。


「少しばかり厄介なお客様がいらしてまして」


 厄介って?


 和子さんの説明によると――


 圭吾さんのお父さんっていうのは次男で、子供がいないお兄さんの代わりに家督を継いだらしい。

 その後お兄さんは子供のいる人と結婚し、圭吾さんのお父さんよりも前に病死。

 今来客中なのがその未亡人と継娘――ってことは、また羽竜姓なのっ!?


 親戚、何軒? 何人? どれだけ覚えればいいの?


「毎年恒例でございまして、二週間ほど当家に滞在なさいます。ただ今、奥様が一人でお相手をしてらっしゃいます」

「彩名さんと圭吾さんは?」

「圭吾様はお出かけからまだお戻りになりません。彩名様は……居留守をお使いに」


 は?

 彩名さんが居留守って、どんだけ嫌な客?

 それを和子さん、まさか


「志鶴様の噂をお聞きになったらしく、是非お会いしたいと」


 嘘でしょ~!


『こればかりは、ご挨拶しない訳には参りません』とか、『伯母様を助けると思って』と、和子さんにほぼ無理矢理背中を押され、客間のふすまの前に座った。


 うー

 いいわよ。顔見たいんでしょ

 見せてやろうじゃないの


「志鶴です。ただ今戻りました」

と、声をかける。


『お入りなさい』と伯母様の声


 戦闘開始!


 中に入ると、ピリピリした空気が……うわぁ。


 痩せぎすのクジャクみたいな母親の方は、羽竜容子うりゅう ようこさん。

 貴子伯母様と同じくらいの年かな


「あら、それではこの方が駆け落ちした妹さんのお子さん?」


 ちょっとオバサン、『駆け落ち』は余計じゃないの?


「ええ、亡くなった妹の子ですわ」

 貴子伯母様が訂正する。


「はじめまして、三田志鶴です」


 やだなぁ こういう雰囲気


「それ、清流の制服ね。おいくつになるの?」

「十六です」

「では一年生?」

「二年です。早生まれなもので」


 容子オバサンは、余裕の笑みを浮かべて、伯母様の方を見た。


「ほっとしました。人づてに、圭吾さんの結婚相手が来ていると聞いてましたの。つまらない噂でしたのね」


 ホホホっとオバサンが笑うと、貴子伯母様もわざとらしい笑い声を上げる。


「まあ、お義姉様ったら。まだ内々の話ですけれど、この子を圭吾の嫁に迎えるつもりですのよ」


 すると、オバサンがこぶしでテーブルを叩いて、身を乗り出した。


「貴子さん! あなたね、いくら羽竜家を自分のものにしておきたいからって、こんなパッとしない子供を自分の息子に押し付ける気?」


 あの~ 『パッとしない』も余計でしょ


「毎年のように美しいあずささんを押し付けにいらっしゃるお義姉様には申し訳ありませんけど、圭吾の方がかなり乗り気なんですの」


 あ……意地悪な貴子伯母様って初めて見た。


 ちらっと娘さんの梓さんの方を見たけど、顔色ひとつ変えずお茶飲んでる。

 まあ、確かに美人だよね。どこかで見たような感じだけど、大人だし、上品だし。

 わたしより圭吾さんにお似合いって言われたら立つ瀬ない。


「本来、この羽竜本家の嫡男は亡くなった夫です。その夫が実の娘のように可愛がっていた梓を圭吾さんの嫁に迎えるのが筋ってものでしょう」


 押しが強いな~、このオバサン。


「圭吾がその気だったらとっくの昔にそうしています」

「一緒に住まわせて既成事実で結婚に追い込むなんてやり方が汚いでしょう」


 あの~ 『既成事実』はありませんから。


「毎年毎年二週間も圭吾に付きまとって、既成事実も作れない方がどうかしています」


 えっ? ひょっとして伯母様、わたしと圭吾さんに『既成事実』があると思ってるの?


「うちの梓は、そんなはしたない真似は出来ませんから」


 わたしだってそんな真似出来ないから悩んでるのよ、オバサン。


「圭吾の前の恋人のモノマネをしているようではダメでしょうね」


 えっ? あら本当。

 どこかで見たと思ったら、髪型、メイク、服装、全部優月さんのコピーだわ。


「圭吾さんの好みに合わせるのは当然でしょう?」


 いや、コピーすればいいってもんでもないでしょう。

 さっきから無言だけど、梓さん自身はどう思っているんだろ。

 まあ、わたしだって口を挟む余地ないけど。


「圭吾が、外見だけで相手を選ぶような愚か者だとおっしゃいますの?」

「うちの梓には、中身がないとでも?」



 和子さ~ん


 どうやって収拾つけりゃいいのよ、この泥仕合!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ