朝日が昇れば 1
明るい……?
うわっ 学校っ!
ガバッと起き上がり前髪をかきあげて、またバッタリとベッドに倒れ込んだ。
昨日と今日は休校日だ。に、しても今何時よ?
あくびをしながら天井を見て、いやーな予感。ここ圭吾さんの部屋じゃない?
昨夜の記憶が一気に戻って来た。
誰か夢だと言って。
ちょっと迫られたくらいで気絶って、ありえなくない? 子供っぽくて恥ずかしすぎるわ。
あの後、意識を取り戻した時もすごく恥ずかしくて、混乱してて、圭吾さんは『急ぎすぎた僕が悪い』って言ってくれたけど
はぁ~ どうしよう
とりあえずもう一度起き上がってみると、サイドテーブルの上にわたしの携帯と金魚のぬいぐるみが並べて置いてある。
今の時間は――十時!?
この家に来てから、休みといえどこんなに寝てた事はない。
あー もう一ついやーな予感。誰かわたしの部屋にわたしを起こしに行ってない? ひょっとして、圭吾さんの部屋に泊まったってみんな知ってる?
携帯の下に二つ折の紙が置いてあるのに気づいて開いた。圭吾さんの走り書きで、神社の用事で出かけることと、圭吾さんの用事が済むまで彩名さんと一緒にいてほしいと書いてあった。
最後に『昨夜の僕を許して』――って、許してほしいのはこっちよ
とりあえず、自分の部屋に戻って着替えをしてから母屋に向かう。
居間に行くと彩名さんがいた。
「おはようございます。寝坊しました」
「おはよう志鶴ちゃん。圭吾が、疲れているようだから寝かせておいてと言っていたから、起こさなかったの」
あ……それって意味深に聞こえる。
和子さんが顔を出して、『何か軽いものをお持ちします』と言った笑顔も愛想良すぎて逆にコワイ。
「伯母様は?」
「お祭りの用事で圭吾と一緒に出かけたわ。わたし達も後で行ってみましょ。圭吾が平安貴族のような衣装を着ているのが見られてよ。姉のわたしが言うのもなんだけれど、素敵なの。毎年、この後にお見合い写真が増えるのよね」
「今年は志鶴様がいらっしゃいますからそれもなくなりますね」
サンドイッチを持って来てくれた和子さんが言う。
「花嫁衣装の用意を始めた方がよろしゅうございましょうか?」
やっぱり、みんな昨日圭吾さんと何かがあったと思ってる?
「えーと、まだ気が早いかなぁ」
「あら残念」と、彩名さん。
「今朝、圭吾の機嫌がとてもよかったから期待していたのに。いつもは、志鶴ちゃんが起きて来るまで、ものすごい仏頂面なのよ」
ああ……プレッシャー感じる。
でも圭吾さんの機嫌がよかったってことは、そんなにわたし、悩むことないのかな。ゆっくり進めてってお願いすれば、圭吾さんは分かってくれる?
「悩み事?」
彩名さんが優しく訊いた。
わたしは首を横に振って、サンドイッチを食べ始めた。
圭吾さんが帰って来たら、ちゃんと話そう。手を繋ぐところから始めてもらおう。
大丈夫。圭吾さんはきっと分かってくれる。
きっと待ってくれる。
そして いつか
きっと いつか――




