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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第6話 花は桜の高3新学期編
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ちょっとした番外編 大輔くんの休日

そしてゴールデンウィーク


 俺、羽竜大輔(うりゅう だいすけ)


 この春、晴れて高校生になった。



 俺は、幼なじみの美月のことが好きなんだ。

 美月は俺より一つ年上で、俺の事は幼なじみとしか思っていない。

 中二の夏休みに一度、思い切って『美月の事が好きだ』って告った事がある。


『わたしも好きだよ』


 マジで?? いや……美月のこのあっさりした表情は……


『何? いまさら急に』



 あああああ……男として見られていない!


 俺は撃沈した。


 でも諦めるもんか!

 美月には、いまだに彼氏がいない。俺にもまだチャンスはある。





 ゴールデンウィークの初日、美月は俺の家に遊びに来た。

 お互いの兄貴と姉貴が結婚したから、俺達は以前よりもっと頻繁に会う機会が増えた。

 美月をデートに誘おうと俺が思っているところに、悟兄(さとるに)ぃがケータイを片手に現れた。


「美月ちゃん、あさって暇?」


 何だとぉ! ライバルは身内にいたのか!


「暇ですよ」


「じゃあ、一緒に出かけようよ」


「いいですよ」


 ちょっと待てっ! どこに行くのか、普通聞くだろう?


「お、俺も行くっ!」


 すると、悟兄ぃは『あ、そう』と言ってニヤリと笑った。


 う……嫌な予感がする


「もしもし、しづ姫? 美月ちゃんと大輔も行くって」


 どうやら、電話の相手は本家のお姫様らしい。




 そして二日後――




 チョコレートフォンデュの甘ったるい匂いと、女達がおしゃべりするざわめきの中、


 俺はホテルのレストランにいた。


 スイーツバイキングって何だよ。二十種類のプチケーキ?

 おい、美月 本気で二十個食うのか?


「ケーキの他にジェラートもあるよ」


 本家のお姫様がニコニコして言う。


 それも食う気かよ。聞いただけで胸やけしそう。


 車で俺達を連れてきた従兄の圭吾は、女ばかりのレストランの中で、涼しい顔で座ってる。

 圭吾の皿には、小さなサンドイッチとフルーツだけ。

 俺もそうした方がいいかも。


 圭吾はブラックコーヒーを片手に、静かな声でお姫様に話しかける。


『それは何が入っているの?』

『おいしそうだね』

『どれが一番好き?』


 そして時々、前にこぼれ落ちるお姫様の髪を、そっと後ろに戻してやってる。


 大人だ……


 さっき全員分の料金を支払った大きな財布といい、余裕のある態度といい、


 カッコよすぎる。


 俺、絶対に圭吾みたいな大人になろう。


「大ちゃん、これ、おいしいよ」


 うげっ!


 美月が、俺の皿に勝手にケーキを乗せる。


「サンキュー」


 余裕あるふりして、俺はケーキを口に入れた。


 甘ぇよ……


「何種類も食べられるっていいよね」


 別な意味で余裕のある悟兄ぃが言う。悟兄ぃの皿には十個くらいケーキが乗っていた。


「あと二周もすれば完全制覇できるかな」


 こいつ、化け物かよ


「んー、おいしい! わたしも完全制覇目指します」


 そう言って、フォークを握りしめる美月は超カワイイ。

 恋人を目いっぱい甘やかしている圭吾の気持ちが、俺にもよく分かる。


 美月


 そんな幸せそうな顔を見るためなら、俺、何でもするよ。


 だから、いつかは俺だけに特別な笑顔、見せてくれよな。



 俺はカッコイイ男になることを心に誓って、美月が寄越すケーキを食べ続けるのだった。






   -大輔くんの休日·終-





う"~ 死にそう



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