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龍とわたしと裏庭で  作者: 中原 誓
第6話 花は桜の高3新学期編

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1時間目~いきものがかり 4

 要さんに送ってもらって、圭吾さんのところへ戻った。


「気に入るのは、いなかったのかな?」


 手ぶらのわたしを見て、圭吾さんが訊いた。


「ううん。みんな可愛いかった。選べないから圭吾さんに見てもらいたいの。今日が忙しいなら別の日でもいいから」

「要が見てくれたんだろう?」


 わたしは頷いた。


 でも、わたしが一緒に暮らしているのは要さんじゃなくて、圭吾さんなのよ?


「やっぱり、犬とか猫はわたしの手には余るかも。もっと小さなものがいいかな……」


 金魚とか、カメとか。それなら圭吾さんは平気?


 圭吾さんが顔をしかめた。


「要? 何があった?」


「何も」

 要さんが答えた。

「猫を見て、犬を撫でていたよ。ただ、お前に見てもらわなきゃ決められないそうだ」


「志鶴? 僕のペットじゃなくて、君のなんだからね」


 そんなの分かってる。


「もう帰りたい」


 ポツンと言うと、圭吾さんの顔が心配そうに変わった。


「どこか具合悪い?」


 ああダメ。笑わなきゃ。


「あのね、動物を飼うって責任重大だから、よく考えたいの。いいかな?」

「それはいいけど……」

「圭吾、ちょっと」


 要さんが圭吾さんの腕を引っ張って、少し離れた場所で話し始めた。圭吾さんが頷いている。

 わたしはぼんやりと辺りを見渡した。


 あそこに一本だけある木――桜かな?


 遅咲きの木なのか、花がついているようでもない。


「志鶴」


 圭吾さんがわたしを呼んだ。


 なぁに?


「具合が悪くないなら、もう一度中を見に行こう。君が撫でていた犬を僕に見せてくれ」


 ホント? いいの?


「おいで」


 わたしは、差し出された腕の中に飛び込んだ。


 よかった。あの子を見たら、きっと圭吾さんだって気に入るわ。


 圭吾さんと手を繋いで、もう一度ペットシェルターの中に入った。

 また大きな犬達が一斉に吠えて――


 あれ?


 辺りは、シンと静まり返った。


 何??


 犬達は柵の奥でしっぽを丸めて小さくなっている。わたしにしっぽを振ってくれたラブラドールでさえ、地べたに伏せていた。


「さっきはものすごく吠えていたのに……」


「僕が怖いんだよ」

 圭吾さんがボソッと言った。

「家を継いだ時からこうなった。僕の中の龍神の力が怖いんだと思う」


 わたしは、圭吾さんの体に腕を回して抱きしめた。


「大丈夫。わたしは怖くないもの。だからついて来てくれなかったの?」

「うん。僕が一緒だと、みんな逃げてしまうからね」

「犬や猫が嫌いなのかと思った」

「いや、好きだよ。あっちはそうじゃないみたいだけど」


 かわいそうな圭吾さん。


「わたしの見た子犬はきっと大丈夫。すごく人懐っこいの。今すぐは無理でも、すぐに圭吾さんにも懐くわ」


 圭吾さんがわたしをギュッと抱きしめた。


「お前、いい加減にその負け犬キャラ何とかしろよ。見てる方が情けない」


 要さんが言った。


 『負け犬キャラ』って何?


「仕方ないだろ? この方がウケがいいんだから」


 圭吾さんは言い返した。


「ほとんど詐欺じゃないのか?」


「何とでも言え。なり振りなんてかまっていられるか」

 圭吾さんはそう言うと、わたしの頭のてっぺんにキスをした。

「志鶴のためなら何だってする」


 へっ? わたし? 今の、わたしの話だったの?

 詐欺って……わたし、何か騙されてる?


「あ――――っ!!」


 突然大きな声がした。

 振り向くと、アイちゃんがあんぐりと口を開けて圭吾さんを見ていた。その後には、松子さんと他の子供達。


「お、お姉さんの彼氏って、その人?!」

「そうよ」

「その人、羽竜家の一番偉い人だよ?」

「知ってるわ」


 わたしはニッコリと笑った。


「すごっ! お姉さん、見かけによらず度胸あるんだね。飼うのドーベルマンでも平気でいけるわ」


 どうしていつも他の人が見る圭吾さんって、怖いイメージなんだろ? やっぱり羽竜が特別な家だからかな……


「割れ鍋に綴じ蓋って言いたいところだけどね。圭吾、あんたには勿体ないくらいのお嬢さんだよ」

 松子さんがニッと笑って言った。

「しっかり捕まえているんだね」


「そうしますよ。さて、この()が欲しがっている子犬ってのを見せて下さい」





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