4月5日(木) 夜
夢を見た。
電話をしている夢だ。電話の相手は渚。
「帰ってきたらさ、オレの机の上に…… 今日殺されたヤツの生首があった…………」
今日の昼の電話の内容とそっくりそのままだった。
「なぁおい黄泉川!助けてくれよぉ!オレはどうすりゃいいんだよ!?」
「落ち着いて、渚。たぶん、まずは警察に通報した方がいいんじゃないか?」
ここまでは本当に昼の電話とそっくりそのままだった。ここまでは、だったが……
昼の電話では、渚は深呼吸を数回した後、分かったとだけ言って電話を切った。だが、夢の中での渚は違った。今までにないほど怒りのこもった口調だった。
「おい黄泉川ぁ!お前の言ったとおりに警察に通報したらこのザマだ!!
お前のせいでオレは逮捕されちまったんだ!このままじゃ死刑になっちまうかもしんねぇなぁ!?お前の指示に従ったせいで!お前のせいで!お前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいで!!!!」
――ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!
携帯の着信音でボクは目を覚ました。今日は電話がよく鳴る日だ…
電話の相手は空だった。ボクは寝起きで朦朧とした意識のまま応答をタップし、携帯を耳に押し当てた。と同時に飛び込んできたのは、空にしては珍しい大声だった。
「おいヨミ!急いでニュース見てみろ!!!」
ボクは急いでテレビの電源をつける。テレビではちょうどニュースをやっていた。ただ、そのニュースはボクにとってはショッキングすぎる内容だった。空にとってもそうだったに違いない。
「―――と同じ高校に通う柊彩乃さん(16)の家の庭から、先日起こった殺人事件の被害者の遺体の首から上が見つかりました。警察は、一条容疑者と、柊さんの二人から再び事情を聴く方針でしたが、柊さんからの通報の直後、一条容疑者は、突如、警察署から姿を消し、柊さんの行方も分からなくなっています。警察は、この二人が詳しい事情を知っているとみて、行方を追っています。では、次は気象情報です―――」
その後も、テレビからはアナウンサーの無機質な声が延々と垂れ流され続けていた。