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4月5日 (木) 昼

ボクは、自室のベッドに寝そべり、天井を眺めボーっとしていた。そして今までの一連の流れを思い出していた。

今日は始業式の予定だったが、今朝の殺人事件で全て中止となり、生徒は全員帰宅、一週間の自宅待機という学校側からの指示が出た。

正直学校なんて面倒でたまらないボクのような人間にとっては好都合だった。不謹慎極まりないとは思うが、死んでくれた11人のおかげで、1週間も学校を休むことができるのだ。そう考えると殺人が起きるのも悪くないなと思う。だって死んだのはボクにとって何の関係もない11人なのだから。

「ケイ君、入るね。」

「柊か…」

ガチャリとドアが開く。案の定入ってきたのは柊だった。

「学校で事件が起きたから心配になってケイ君の様子見に来たの。」

柊はベッドにもたれかかるように腰を下ろした。ボクは、起き上るのも面倒なので寝そべったままでいることにした。

「ケイ君、なんか殺人が起きたなんて実感わかないね…」

「そうだな。まぁ正直どうでもいい。」

ボクにとっては本当にどうでもいいことだった。

「友達から聞いた話だとね、11人も殺したのに、犯人の手掛かりは一切ないんだって。」

怖いよね。と小さな声で柊がつぶやいたのが聞こえた。

「次はボクたちの番かもね。」

冗談のつもりで言った。だが柊を見るとガタガタと震えているようだった。

「ねぇ、ケイ君。あたしたち、殺されたりしないよね?」

柊の声は震えていた。

「さぁね。」

とだけボクは返した。慰めようにも言葉なんて思いつかないし、ガラじゃない。


しばらくの間、部屋に沈黙が訪れる。


沈黙は重く、苦しかった。ボクも柊も言葉を発せず、ただただ沈黙だけが部屋を支配していた。沈黙に耐えきれずボクは口を開きかけた―


――ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!


ボクも柊もビクッとして音のした方を見る。ボクの携帯だった。

画面を見ると着信だった。相手は渚。すぐ後ろで柊もボクの携帯を覗きこんでいた。ボクは画面の応答と書かれたところをタップして携帯を耳に押し当てた。

「なぁ…黄泉川。助けてくれよ…」

渚の声は震えていた。ただ事ではないというのが、ボクにも柊にも一瞬で分かった。

「どうした渚?とりあえず落ち着きなよ。」

「なぁ黄泉川マジでヤバいんだよ。どうすりゃいいか分かんねぇんだよ。」

「ヤバいじゃどういうことか分からないよ。深呼吸でもして詳しく説明してくれよ。」

ボクがそう言うと携帯の向こうで深呼吸をする音が聞こえた。

「あのさ、黄泉川。今目の前のことが信じられないんだ。驚かないで聞いてほしい。」

深呼吸をして少しは落ち着いたようだったが、それでも切迫した様子が、彼の声から伝わってきていた。ボクは彼を慌てさせないように、努めて落ち着いた声で聞き返す。

「あぁ、それで?何があったの?」


「今、家に帰ってきたんだ。そしたらさ―」

そこで渚はいったん言葉を切った。柊が隣でゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。そして数秒の沈黙の後、渚は再び口を開いた。



「学校から帰ってきたらさ、オレの机の上に… 今日殺されたヤツの生首があった…………」


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