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4月5日(木) 朝

ピピピピピピピ!


ボクの眠りを妨げたのは目覚まし時計の無機質なアラーム音だった。眠い目を擦って起き上り、部屋の中をボーっと眺める。いつもと変わらない平凡な朝だ。ボクはベッドから下りて伸びとあくびをしながらカーテンを開けた。と同時に眩しいくらいの朝日が部屋中に差し込んでくる。

(ふわぁ…今日もいい天気だなぁ……)

大きなあくびをしながらそんなことを考えていると、ガチャリと音をたててボクの部屋のドアが開いた。

「おはようケイ君!朝ごはんできたよ!」

扉からぴょこっと顔を出した女の子がニコニコと笑ってそう言った。

「あぁ、柊、おはよう。ありがとな。朝ごはん作ってもらって。」

「いいのいいの!気にしないで、好きでやってるんだから。」


彼女の名前はひいらぎ 彩乃あやの。ボクの幼馴染で近所に住んでいる。まだ幼稚園くらいの頃から一緒に遊んでいたので、ボクにとっては家族のような存在である。茶髪でサラサラのショートヘアで、二重まぶたのぱっちりした目をしている。性格は明るくて、成績も優秀。クラスメイトはおろか先生たちからも大いに信頼されている優等生である。


一方、ボクこと黄泉川よみかわ けいはどこにでもいるごく普通の高校生である。いや、普通どころかどちらかといえばパッとしない残念な部類に入るだろう。成績は悪く、顔も性格もいろいろと汚くてよく自己嫌悪に陥ったりする。学校なんてだるいし、あまり友達も作ろうとは思わなかった。だからボクは、柊とは違い、学校の先生たちやクラスメイトから期待される、なんてこともないのだ。もちろんこんなではいけない。という自覚はある。だが、ボクは1年ほど前に事故で両親を亡くしてからは何をするにもやる気が出ないのだ。親を亡くしてからは一人暮らしということもあり、週に数回、柊が朝ごはんを作りに来てくれている。


「ちょっとケイ君?ウチの話聞いてる?」

「ん?あぁごめん。ちょっと自己紹介してた。で、何の話だっけ?」

自己紹介?何のこと?と彼女は首をかしげた。その後まぁいいやという風に言葉を続けた。

「今日から私たち2年生になるけど一緒のクラスになれたらいいねーって話だよ!」

「うん、そうだな。」

いろいろな話題を振ってくる柊に適当な相槌を返しながらボクは朝食を胃の中に押し込んでいった。彼女が投げる会話のボールをいちいち捕って投げ返すのは、めんどくさいのだ。だから朝食時はいつもこんな感じである。朝食時に限らずボクは口数の少ない方だが。


朝食を終え、食器の片付けや、身だしなみを整えると学校へ出発する。今日は柊と一緒だ。玄関を出たところで柊がボクに声をかけてきた。

「ケイ君忘れ物ない?」

「あぁ、大丈夫。じゃあ行こう。」

「今日も楽しい一日になるといいね、ケイ君!」

笑顔でそう言う彼女の顔は今日の朝の陽ざしのようにさわやかだった。ボクのめんどくさい日常でもちょっとはやる気が出るような気がした。


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