二章
高校から歩いて十五分、市街中心部から少し離れた湾岸地区に、比較的新しいマンションが建ち並ぶ新興開発区画がある。
オレの住まうマンションも、この地区に位置している。
傷心を引きずりつつエントランスへ入ったオレは、間の悪い事に、今この瞬間最も出くわしたくない相手と、偶然にも出くわす羽目になった。
「みんな、今日も見送りありがと♪」
狭っこいエントランスに、通行人の迷惑も顧みず砂糖菓子のような声を響かせたのは、セーラー服姿のコロポックル、もといオレの妹だった。
その妹が“みんな”と指しているのは、今まさに妹を取り巻き、いやに体温の高い視線を妹に送りつけている、イカ臭い学ラン男子共の事である。その数、およそ十数人。
ほどなくして取り巻きの一人が、クマのぬいぐるみやらハートのアクセサリーやらがぶら下がった女物のボストンバッグを恭しく妹に差し出した。それは紛れもなく、いたいけな少年の恋心をだまくらかした妹が、学校から運ばせた彼女の鞄に違いなかった。そう。奴を取り巻く少年達は、朝な夕な妹の登下校に付き従い、妹の代わりに奴の荷物を運ぶ、言うなれば召使、あるいは憐れな下僕達に他ならない。
我が妹が、裾をつめたプリーツスカートをひらひらと靡かせるたび、ニーハイとスカートの間に純白の絶対領域を覗かせるたび、そして、マロンブラウンのツインテールをぴょこぴょこと揺らすたび、中坊共は、地鳴りにも似たキタナイ溜息を漏らす。
うわ……ただでさえブルー入ってる時に、この光景はマジで辛い……。
リビドー渦巻く異空間から早々に退散を図るべく、オレは、ゲートに向かおうと連中の背後にそっと回り込んだ―――が。
「あ! お兄ちゃーん!」
ぎく。
人垣の隙間にオレの姿を見つけるや、妹は、オレの気も知らずに能天気な声を上げた―――や否や、それまでオレに背を向けていた少年達が一斉にこちらを向き、モーゼにカチ割られた紅海のごとくに、オレの前に道を開く。
毎度の事ながら、こえ……。
「お勤め、ご苦労様です! お兄様っ!」
中坊とはいえ、体格の恵まれた男達がいちどきに深々と腰を折る姿は、まるで実録任侠シリーズのワンシーンを彷彿とさせた。つか、お勤めって。オレは出所直後の組長か。
恐る恐る連中の合間を抜けると、オレはさっさとテンキーを押してゲートを抜け、逃げるようにエレベーターホールへと向かった。
自慢、のつもりでは決してない。
だが、オレの妹、小宮山綾菜は、兄のひいき目を差し引いてもなお、えらく末恐ろしい姿形をしていた。
握りこぶしかと見紛うほどの小さな顔に、本当にオレと同じ親父の血を引いているのかと疑いたくなる程のハーフじみたバタ臭い顔。ついと口角の上がった唇は、今流行りのアヒル口という奴で、たとえ本人は不機嫌でだんまりを決め込んでいても、傍目からは笑顔に見えてしまうというお得な唇である。瞳に至っては、本当に西洋人の血でも混じっているのかと思われるほど、綺麗なオリーブグリーンの光を放っている。
以前、親戚の口から聞きかじった所によると、亡くなった親父の父親はフランス人だったとかなかったとか。紆余曲折を経た今となっては確かめるべくもないが、奴の瞳を見ていると、その親戚の話もあながち嘘ではないように思えてくる。
一見すると、ルネサンス期の油絵から飛び出した天使のような風貌を持つ妹だが、その中身たるや、慈愛に満ちた天使のそれとはまるで程遠い。
小悪魔系? いや、奴は正真正銘の悪魔だ。
間の悪い事にエレベーターは、まるでオレの乗車を拒むかのように最上階に留まっていた。長い待ち惚けの末、到着したエレベーターにようやっと乗り込んだその時、ファンの連中との別れを終えた妹が、閉まりかけたドアにするりと滑り込んで来やがった。
ドアが閉ざされるや、開口一番、奴は吐き捨てた。
「ほんっと、あいつらマジで使えない! いっそ全員まとめて死んでくれればいいのに!」
その声色たるや、声帯がマシュマロで出来ているんじゃなかろうかという先程のそれとは打って変わり、さながら腐れかけのドリアンを食わされた軍用犬の唸り声を髣髴とさせた。もっとも、実際に腐りかけのドリアンを食った軍用犬の声なぞオレは聞いた事がない。要するに、それだけ妹の声色が凶悪かつ冷酷だったという事である。
「どうして。今日もお前の代わりに鞄を運んでくれたんだろ?」
「そういう問題じゃないのよ!」
きっ、と綾菜は顔を上げた。オリーブグリーンの瞳が、ぎろ、とオレを睨む。
「なんていうか、根本的になってないのよ連中は。重要なのは、綾菜が楽しんでるかどうかって事だけ、それだけでしょ? なのに、連中ときたら自分達が喋りたい事だけ勝手に喋って、やりたい事だけ勝手にやって」
「随分と自分勝手な理屈だな」
「うるっさい! 綾菜が真剣に喋ってる時は、黙っててくれる!?」
「……はいはい」
「とどのつまり、何から何まで身勝手なのよ。自己満足なのよ。連中の頭にある事といったら、いかに自分の欲求を満たすかってコトだけ! 自分のファン心理を満たすことだけ! 綾菜がイイと思う事じゃなくて、自分達がイイって思う事しかやらないの。わかる? 綾菜を好きなんじゃなくて、綾菜を好きな自分が好きってだけなのよアイツラは!」
「今更何言ってんだよ。身勝手は人間の本質なんだよ。じゃなきゃ今頃、誰も地球温暖化だの格差問題だので悩んだりしてねーよ」
が、脳味噌が沸騰している綾菜には、いかな実のある忠告も所詮は馬耳東風である。少しでもマトモな事を言って奴の怒りを諌めようとしたオレが、何だか無性に恥ずかしい。
「大体、綾菜のファンクラブを作りました! なんて、嬉々として言って来る時点でズレてんのよ。それが何? ってカンジじゃない? どうせあんたらが楽しみたいだけでしょ? みたいな。その上、月一で定例イベントに顔を出せだなんて! 何で、あいつらが勝手に作ったモノに綾菜が参加させられなきゃなんないワケ? ……はぁ、マジありえない。もう、ファンクラブの奴ら全員、メンバーだけに感染する未知のウイルスにやられて死ねばいいのに」
「オレはそれでも構わねーけど。でも、結局困るのはお前だろ?」
「どういう意味よ」
「あいつらが死んじまったら、明日から誰がお前の鞄を運ぶんだ?」
「そしたら、お兄ちゃんが綾菜の鞄運んで」
「やだよ」
ちょうどその時、オレ達の住む一〇階フロアへエレベーターが到着し、目の前のドアが音もなく開いた―――や否や綾菜は、「けち。ブルーチーズの青カビに当たって死んじゃえ」と言い捨てると、カゴから放たれたリスのようにするりとドアを飛び出した。
奴が一目散に駆ける廊下の突き当たりに、オレ達家族の住まう部屋がある。綾菜の背中に遅れること数歩、オレもまた、そのドアを開いた。
がちゃ。
と同時にオレは、ひどい頭痛に見舞われた。
「おかえりー。シュウくーん」
ドア向こうの廊下に立っていたのは、今し方風呂場から出て来たと思しき―――いや、思わずとも一見するだに明白だ―――大学生の姉、小宮山夏樹だった。
一足先に玄関を上がった綾菜が、怪訝そうに姉貴に訊ねる。
「あれ、お姉ちゃん、大学は?」
「急に休講になっちゃってぇー、それで帰ってきたのぉー」
「いいなー、大学生って。授業もしょっちゅうお休みになるし、なんか楽そう」
「でも、入るのが大変なのよー?」
「んな事ぁいいから、さっさと服着ろ! 姉貴っっ!」
目の前で繰り広げられる会話と光景のギャップに我慢がならなくなったオレは、いよいよ姉貴を怒鳴りつけた。もちろん、姉貴の姿を視界の外に追いやったまま。
そう、今まさに姉貴は、文字通り一糸纏わぬ全裸姿を、弟であるオレの目の前に堂々と晒していたのである。
その肢体たるや、弟のオレから説明するのもこっ恥ずかしいのだが、まぁこれが、なまじ身内であった事が死ぬほど悔やまれる、そんな身体なのだ。
全体的な体つきとしては、決して豊満というワケではない。まぁ、これはオレを含めた小宮山家の全員に言える事ではあるのだが、どちらかと言えばスレンダーな体型と言える。
しかし女の場合、ただ痩せていればいいという事にはならない。当然、あるべき場所にあるべき膨らみがないと、見る側としては物足りない。だが、その点でも姉貴に抜かりはなかった。姉貴は、さながら夕張メロンを二つぶら提げたような立派な乳を、その胸元にがっちり配備していたのである。
が、しかし。
性への目覚めを果たして間もない中学生ならいざ知らず、大抵の分別をわきまえる男性諸氏にとって、ただ目の前にブツがあればそれ即ちエロい、という事にはならない。見えるか、あるいは見えないか、レッドライン上で繰り広げられるギリギリの駆け引き、キワキワの攻防戦こそが、エロチズムの妙味であり真髄であるとすれば、あの姉貴は、それらの妙味をことごとくブルドーザーでなぎ倒し、押しつぶし、更地に変えてしまう、そんな女だった。
「えー、だって暑いんだもーん。それにシュウ君だって本当は見たいんでしょー?」
そんな身も蓋もない台詞をのたまうと、姉貴は、冷凍庫から大好物のアイス棒を取り出し、明太子のような分厚い唇でちゅるちゅると舐り始めた。が、その一方で、下着を身につける様子だけは一向に見せない。
「みっ……見たいとか見たくないとか、そういう問題じゃないだろ! ってか、貞操なきエロなど、オレはエロとは認めないっっ!」
だが、そんなオレの訴えには答えぬまま、姉貴はリビングのソファにストンと身を投げ出した。と共に、たわわに実った二つの乳が、プッチンされたプリンよろしくフルフルと揺れる。
こんなあられもない姿からはとても想像しづらいが、実はこの姉貴、事もあろうに二年連続で大学のミスキャンパスに選ばれていたりする。その上、大学二年にして、すでに地元のテレビ局からスカウトの話が来ているのだから世の中はおそろしい。そんな姉貴を狙う男は、それこそ東南アジアの屋台にたかるハエの数よりも多かったりするのだが、肝心の姉貴は、どうも自身の色恋に興味が疎いらしく、未だに彼氏というものを作った事がない。
とはいえ、無事に彼氏が出来たところで、その彼氏が後々いらん苦労を強いられる事はすでに目に見えている。なぜなら姉貴は、家で過ごす時間のほとんどを素っ裸で過ごすという、筋金入りの裸族なのだから。
なおもアイスを舐りながら、姉貴が物憂げな声で喘ぐ。
「あつぅーい……おっぱいの下とかすっごく蒸れるぅー……」
すると、一足先にソファでアイスを舐め始めていた綾菜が、ギロ、と姉貴を睨んだ。
「おねーちゃん、それ嫌味?」
「大丈夫よー。アヤちゃんのもそのうち大きくなるからー」
「ふん。中一でEカップだったお姉ちゃんに言われても、ただの哀れみにしか聞こえない」
ちなみに綾菜の乳はAカップだ。何故そんな事をオレが知っているのかって? オレが今まで何度、奴の下着を買いに婦人下着売り場へ行かされたと思っている。
「あ、そうだー」
ふと、何かを思いついたか、姉貴は頭上にポカンと電燈を光らせた。もちろん、落ちたリンゴに万有引力を見出したニュートンならいざ知らず、弟の前で平然と裸体を晒しつつリビングを練り歩く姉貴に、唐突にまともなアイディアなど思いつこうはずはない。
そして案の定、それはろくでもないアイディアだった。
「シュウくーん。おっぱい触ってもいいから代わりに扇いでくれないかなぁ」
「こ、断る! ってか、どういう交換条件だよ! そもそも姉貴の胸なんか触っても、嬉しくもなんともないし!」
「えー、嬉しくないのー?」
困ったように小首をかしげつつ、姉貴はその厚手の唇に、ふに、と人差し指を押し当てた。
「ひょっとしてシュウくん、女の子に興味がないのかなぁ?」
ずきっ。
オレの胸郭が、一瞬、奇妙な鈍痛を覚える。その時、不意にオレの脳裏に浮かんだのは、下校途中に街角で遭遇した、あの女男の事だった。
あれほどパーフェクトにオレのツボを突きまくった人間が、よもや、男だったなど……。
「考えてみたらシュウくん、今まで、一人も彼女を連れて来た事がないわよねー?」
「つか、姉がそんな格好で部屋をうろついてるような家に、彼女なんて連れて来られるワケないだろ?」
「ウソ」
そこへ唐突に口を挟んだのは、綾菜だった。
「綾菜知ってるもん。お兄ちゃん、今まで一度も女の子と付き合った事がないんだよね」
ぎく。
「な……何で、そんな事……?」
「決まってるじゃん。女のカンだよっ」
にた、と口元を三日月のように釣り上げ、綾菜は文字通り悪魔のような笑みを浮かべた。
「ダメよシュウくん。いくら家族がみんな女の子だからって、自分まで女の子の趣味に合わせなくてもいいのよ?」
「べ、別に……合わせてるつもりは……」
「じゃあ、ほら触って。女の子に欲情する気持ちを、お姉ちゃんの身体で思い出して」
あくまでも神妙な面持ちで、姉貴は、その豊満なふくらみをずいと突き出した。目のやり場に困ったオレは、たまらず目を逸らし、ナマのビジュアルを視界から外す。
「さ、さっきから言ってるだろ!? 姉貴の身体なんか触ったって、嬉しくねーんだよ!」
「えー? 昔はあんなにお姉ちゃんのおっぱいを触るのが好きだったのにー?」
「が、ガキの頃と今とじゃ、事情が違うんだよ!」
「事情ってなぁにー? どんな事情が違うのかなー?」
「そ……それは……」
探るような姉貴の眼差しに、オレはもはや俯くより他はなかった。
この女にとってエロとはすなわち、見る事、触れる事、そして揉みしだく事に過ぎない。今日日、アメリカ人でももっと奥ゆかしいエロチズムを身につけているだろう一方、相も変わらず姉貴は、アポロ時代のファストフード並に大味な神経しか持ち合わせていない。
っていうか、相手は弟だぞ? 姉貴にあられもない姿を見せ付けられた挙句、いかんともしがたい感情を抱かされる弟の辛さを少しは察しろ!
「どうしようアヤちゃん。このままじゃシュウくんがアッチの人になっちゃう」
「知らなーい。なりたきゃなればぁ?」
適当に言い捨てると、綾菜は、いよいよ手元のアイスが本格的に解け始めたか、そいつを食らうのに専念し始めた。棒に滴る白い雫を、尖った舌先で無心にちろちろと舐め取る。が、必死の努力も空しく、アイスは刻一刻と芯を滑り落ちてゆく。
そりゃあそうだ。そんな舐め方じゃ、解ける速度の方が速いに決まってる。それでも綾菜はムキになって舐め続ける。本当はこんな時、兄弟であれば小皿の一つも差し出してやるべきなのだろうが、先程の物言いに若干カチンと来たのと、慌てる姿が面白いのであえて放っておく。
再び姉貴に向き直り―――とはいえ、視線は相変わらずそれとなく脇にそむけたまま、オレは返す。
「ならねーよ。オレは普通に女の子が好きなんだ。ただ、人よりちょっと理想が高いというか、妥協したくないというか」
「シュウくん」
不意に、姉貴は真面目な面持ちでオレに向き直った。普段は、竜宮城で歌って踊るマンボウよろしくお気楽な表情ばかりを浮かべる姉貴だが、この時ばかりは、さすがは県内随一の大学に通う秀才、と舌を巻かざるをえなくなる。
とはいえ、それでもオレは、こんな裸族をミスキャンパスに選んだ大学には、それこそ脳ミソがクラゲな連中しか通っていないんじゃないかと今でも疑っている。あるいは、勉強のし過ぎで不幸にも脳みそがネギトロになっちまった連中とか。
姉貴の顔立ちは、まったりとした性格に相応してか、砂浜に打ち上げられた海ガラスのように、角の取れた顔つきをしている。卵のような形の顔に、これまた優美な曲線の目鼻立ち。レモン型に大きく見開いた瞼の奥では、鳶色の大きな瞳が澄んだ輝きを放っている。その髪は確かに栗色だが、微かにグリーンがかった綾菜のマロンブラウンと違い、こちらは純粋な茶系の和栗色である。そんな和栗色の髪の毛が胸元まで豊かにうねり、姉貴が動くたびきらきらと星を散らす。
これらはいずれも母さんの特徴で、一方の綾菜は、髪も眼も父さんの色を引継いでいる。ちなみにオレは、髪は綾菜、目は姉貴と同じ色を頂戴している。とまぁ、オレの話はこの際どうでもいいんだが。
いずれにしろ、タイプこそ違え姉貴もまた、綾菜と同じく美人と呼ばれる人種に属しているのには違いなかった。で、その美人が、これまた凛とした口調でご高説を続ける。ただし、相変わらず格好は全裸のまま。
「えり好みはダメ。大切なのは見た目じゃなく心よ。目ではなく心で相手を見るの。いい?」
「わ……分かってるよ」
ああ、分かっているとも。
ただ、オレの場合、肝心の心の目が贅沢に仕上がってんだから仕方ないだろ? つーか、贅沢にさせられちまってんだよ! 他でもない、お前らのせいで!
そう、オレは常々このように考えていた。
女子に対するオレの注文が、自分でも引くほど多岐に渡っているのは、他でもないコイツらのせいであると。
いくらメリハリの利いた上等な身体であっても、日々当然のように目の前に晒されると、それを包む恥じらいのベールこそ、むしろエロの本質であったと思い知らされてしまう。いくら愛くるしい笑みと顔立ちであっても、その裏側にどす黒い一面を見てしまうと、つい、よその美人の微笑も疑わざるを得なくなる。
つまり、今更姉貴に諭されるでもなく、オレは常に高感度の心のレーダーで、身も心もキレイな女子を探し求めていたのである。
そうして、人知れず険しい道のりを歩んだ末にようやく引き当てたガラスの靴の持ち主が、事もあろうにあの女男だった―――という話は、今だけはどうか触れないで頂きたい。
「シュウくん」
なおも姉貴は、真面目な口調でオレを呼びつけた。
「こ、今度は、何だよ」
「ちゃんと私の目を見て約束して。いい? 心の目で見るのよ」
「あ、ああ……」
いつになく真剣な面持ちの姉貴に促されるまま、オレは見た。
姉貴の鳶色の瞳を―――肉厚で艶やかな唇を、細い鎖骨を、そして、むき出しのままの豊満なふくらみを――――。
「って、いいからさっさと服を着ろぉ姉貴! そんな状態で心の目もクソもあるかぁ!」
すると姉貴は、再びいつものマンボウフェイスに戻り、ガキのようにぶうたれて見せた。
「えー、やぁよぅー。だって暑いんだものー」
そして会話は、再びふりだしに戻った。
ご意見ご感想等、お待ちしております。
よろしければ他の作品も見てやって下さいませ。




