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終章

これにてようやく終了です。

長らくお付き合い頂き、ありがとうございます!! 深謝!!

 翌日。昼休みの会話の話題は、言うまでもなく、当日朝のホームルームでの出来事だった。

その時、葵の口から直接明かされた奴の秘密に、クラスの誰もが言葉を失い。そして目を見開いた。

「今まで、騙していてごめんなさい」

 ぺこり。教壇の上で教室に向けて丁寧に頭を下げた葵に、当初、声をかける者は誰一人としていなかった。

 ああ、分かってはいた。所詮、ここに座っている奴らはみんな、こういう程度の連中だよ。

自分の理解の範疇を超える存在は、受け入れず、ただ排除する。それでも葵は、もう誰にもウソをつきたくないからと、正体を明かす道を選んだ。

 頑張ったな、葵。お前はよく頑張った。

 水を打ったような沈黙が教室を包む中、葵は、肩を落とし、しおしおと教壇を下りた。

 と、その時だった。

思いがけない人物が、予想外のタイミングで、なるほど奴らしい言葉を叫んだ。

―――俺は、可愛ければ女装もアリだと思いますっ!

「これでお前も、ヘンタイの仲間入りだな」

 オレの茶々に、中島は、例によって特盛り牛カルビタンハラミロースハツ弁当を掻き込みながら、さも億劫げに答えた。

「うるっせぇよ修司! いいじゃねーか。だって、可愛くない女子と可愛い男子っつたら、お前だって可愛い男子を選ぶだろ?」

「さぁな」

 中島の一言をきっかけに、それまで葵に対し腫れ物に触るような気色を見せていたクラスメイト達は、その態度を一気に軟化させた。実際、蓋を開けてみると、他の男子連中も中島とほぼ同意見だったのだから笑える。

「つーか、マジなのかよ。霧島さんが男だって話。ぶっちゃけ未だに信じられないんだけど」

「ああ、編入届の記入欄には、確かに男だと書いてあった」

「マジかよ……俺、マジで霧島さんの事、好きだったのによぉ……」

 もし、今のセリフを葵が耳にしていたら、一体どんなふうに慌てふためいていただろう。そんな他愛もない事を想像し、オレは思わず軽く噴き出した。

「あ! お前、今笑っただろ!」

「わ、わり。つい」

今、この屋上に葵の姿はない。この時期にしては珍しく晴れた青空の下では、冴えない顔を浮かべた野郎が二人、冴えない表情を向き合わせつつテメェの弁当を突き合わせるのみである。

「そいや、霧島さんは?」

「あそこにいる」

オレが指差すなり、中島は身を乗り出し、鉄柵の隙間から階下の中庭を覗き込んだ。

中庭のベンチに居並ぶクラスの女子の中に一人、ひときわ目につく美人が紛れている。何を話しているのか、その会話の内容が屋上まで届く事はない。もっとも、届いたところで、野郎にとって楽しい会話でもなかろう。

だが、葵はえらく楽しそうに笑っている。握りこぶし大の弁当を膝に乗せ、互いに弁当の中身をつつき合いながら、それはもう楽しそうに笑っている。

「良かった」

「は?」

 怪訝な眼差しを寄越す中島には応じず、オレは自分の弁当を開いた。そこには、中島のカルビ弁当なんぞ一瞬にして霞と化す、色鮮やかなオレの精神宇宙が広がって――――

 かぱ。

「あ」

「ん?」

 蓋を開くなり、オレは内心、しまったと叫んだ。

 ノート大ほどの弁当は、その半ばがきっちりと間仕切られ、その片側をがらりと空席にしている。ここしばらく、葵が残した弁当を食う事が日々の習慣と化していたオレは、いつしか、弁当箱の半分しか自分の分を用意しないという癖がついていたのだった。

「おい修司」

「……何だよ」

「お前、そんなんで足りるのかよ」

「足りるわけ、ねーだろ。……なぁ中島」

「あぁ? やらねーぞ」

 オレの視線に気付くや、すかさず中島は自分の弁当をひしと抱きこんだ。

「くそ、バレたか」

 階下から、ひときわ華やかな声が響き、そして青空に溶けていった。

それは紛れもなく、葵の笑い声に違いなかった。


長らくお付き合い頂き、ありがとうございます!!

某大賞に投稿した後で友人から貰った指摘が、「これ、メインルートのヒロインがいなくね?」でした。

よく考えてみたらそーだった!!

という、うっかりしすぎな作品でした。せめてサブでもいいから幼馴染みたいな、まともな女子を用意しておけと。

もうね、サーセン!!!!


ご意見、ご感想、お待ちしております!!

それと、他にもいくつか作品を掲載していますので、そちらの方もあわせて、

よろしくお願いいたします!

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