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『人魚姫〜あの恋はあった。大切だった。でも私はこの先も生きていく。』  作者:


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13/17

13. プライド

「王太子様、今お時間よろしいでしょうか?」

先日、廊下でぶつかった少女に声を掛けられた。


「マリーナ様に、話しかけられたことはありますか?」


その質問に、アレクシスは顔面を殴られたような衝撃を受けた。


「……なぜ、そんなことを聞く?」

「マリーナ様から、この話を聞いたんです。詳しく説明するので、ついて来てもらえませんか?」

アレクシスは、まるでドナドナの売られていく子牛のように、引きずられるまま後をついて行った。


放課後、人のいなくなった教室へ案内される。


「マリーナ様、本当は王太子様と結婚したくないそうです。だから、王太子様とは話さないと言っていました」


もう一発、顔面を殴られたような衝撃だった。


「しかし、王太子妃になりたいから王太子妃教育を頑張っていると聞いたぞ?」

「それは、本人から聞いたんですか?」

「いや……報告を受けただけだが……」

アレクシスは固まった。

そういえば、マリーナ本人からは一度も聞いた覚えがない。


そもそも、他の者とは話せるのに、なぜマリーナが自分とだけ話せないのか。

その理由さえ、人づてに聞いただけだった。


目の前が真っ暗になった。


♡❖♡❖♡❖♡


サリーは観察眼に優れていた。

事実の中にほんの少しだけ嘘を混ぜ、自分に都合のいい「真実」を作ることを得意としていた。


王太子とマリーナが一緒にいるところを何度か見かけていたが、一度も会話らしい会話を聞いたことがない。

周囲にもさりげなく尋ねてみた。

皆、

「そういえば、話しているところは見たことがないな……」

と答えた。


理由など、本当は分からない。


けれどサリーは、それらしい事実を並べ、自分に都合のいい理由へと置き換えていった。


そしてアレクシスは、その罠へ少しずつ嵌っていくのである。

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