13. プライド
「王太子様、今お時間よろしいでしょうか?」
先日、廊下でぶつかった少女に声を掛けられた。
「マリーナ様に、話しかけられたことはありますか?」
その質問に、アレクシスは顔面を殴られたような衝撃を受けた。
「……なぜ、そんなことを聞く?」
「マリーナ様から、この話を聞いたんです。詳しく説明するので、ついて来てもらえませんか?」
アレクシスは、まるでドナドナの売られていく子牛のように、引きずられるまま後をついて行った。
放課後、人のいなくなった教室へ案内される。
「マリーナ様、本当は王太子様と結婚したくないそうです。だから、王太子様とは話さないと言っていました」
もう一発、顔面を殴られたような衝撃だった。
「しかし、王太子妃になりたいから王太子妃教育を頑張っていると聞いたぞ?」
「それは、本人から聞いたんですか?」
「いや……報告を受けただけだが……」
アレクシスは固まった。
そういえば、マリーナ本人からは一度も聞いた覚えがない。
そもそも、他の者とは話せるのに、なぜマリーナが自分とだけ話せないのか。
その理由さえ、人づてに聞いただけだった。
目の前が真っ暗になった。
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サリーは観察眼に優れていた。
事実の中にほんの少しだけ嘘を混ぜ、自分に都合のいい「真実」を作ることを得意としていた。
王太子とマリーナが一緒にいるところを何度か見かけていたが、一度も会話らしい会話を聞いたことがない。
周囲にもさりげなく尋ねてみた。
皆、
「そういえば、話しているところは見たことがないな……」
と答えた。
理由など、本当は分からない。
けれどサリーは、それらしい事実を並べ、自分に都合のいい理由へと置き換えていった。
そしてアレクシスは、その罠へ少しずつ嵌っていくのである。




