表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜復讐  作者: 我茶
11/11

外伝 終の果てに

壊れてしまった社畜の悲しい復讐劇

結局、会社は潰れなかった。

縮み、削れ、名前を変え、

吸収と統合を繰り返しながら、生き延びた。

相沢も同じだった。

配置転換を重ね、

責任のない部署へ移り、

やがて「いてもいなくても困らない存在」になった。

それは彼にとって理想の位置だったはずだ。

怒鳴られない。

期待されない。

失望もされない。

ただ時間が流れる。

八割で十分な仕事を続け、

評価は常に平均。

昇進はなく、降格もない。

空白のような履歴。

やがて五十代後半。

若手からは「昔からいる人」と呼ばれる。

会社の歴史を知る生き残り。

だが、語る情熱はない。

「昔はもっと大きかったんですか?」

と聞かれても、

「まあな」

とだけ答える。

語るほどの熱が、もうない。

黒田が亡くなったと風の噂で聞いた。

退職後、数年で病気だったらしい。

特別な感情は湧かなかった。

山本は役員になったと聞いた。

それにも何も感じない。

元妻の消息は知らない。

調べようとも思わない。

人生はそれぞれ進んだ。

相沢だけが、横ばいだった。

定年の日。

小さな会議室で花束を渡される。

「長い間お疲れさまでした」

拍手は控えめ。

形式的だが、悪意はない。

相沢は頭を下げる。

スピーチを求められる。

少し考え、

「お世話になりました」

それだけ言う。

笑いも、涙もない。

会社を出る。

看板はまた変わっている。

かつての面影はもうない。

それでも建物は立っている。

潰れなかった。

完全には。

相沢は会社を見上げる。

勝ったとも、負けたとも思わない。

ただ、終わった。


退職後の生活は静かだった。

朝、目が覚める。

出社しなくていい。

最初の数日は違和感があった。

やがて慣れる。

散歩をする。

図書館へ行く。

スーパーで半額の惣菜を買う。

話し相手はいない。

テレビのニュースが唯一の社会との接点。

年金は十分ではないが、困窮もしない。

質素に生きれば足りる。

胃は相変わらず弱い。

通院は続けている。

医師は言う。

「長年のストレスでしょうね」

相沢は頷くだけ。

今さら原因を探しても仕方ない。

ある冬の日、公園のベンチに座る。

子どもが走り回っている。

親が笑っている。

相沢はその光景を眺める。

かつて自分も、未来を語った。

家を買うとか、

旅行に行くとか、

子どもの名前とか。

実現しなかった未来。

それは会社のせいか。

自分のせいか。

今となっては区別がつかない。

「あなた、何がしたいの?」

あの問いが、また浮かぶ。

何がしたかったのか。

会社を壊すことではなかったはずだ。

本当は、認められたかったのか。

尊重されたかったのか。

誰かと未来を作りたかったのか。

答えは、出ない。

出ないまま時間が過ぎた。


七十代に入る。

体はさらに弱る。

歩く速度が遅くなる。

階段がきつい。

病院の待合室で過ごす時間が増える。

名前を呼ばれ、

薬をもらい、

帰る。

それだけの日々。

ある夜、強い痛みが走る。

胸が締めつけられる。

呼吸が浅い。

救急車を呼ぶ力もなく、ただ床に座り込む。

視界が滲む。

不思議と恐怖はなかった。

自分の終わりが来ただけだ。

最後に思い浮かんだのは、

会社でも黒田でもない。

元妻の顔だった。

問いかける目。

「何がしたいの?」

相沢は心の中で答えようとする。

だが、言葉は形にならない。

何も成し遂げなかったわけではない。

会社は縮んだ。

理想は死んだ。

だがそれは、世界を変えるほどのことではなかった。

自分の人生を満たすほどのことでもなかった。

削っただけだ。

会社も、自分も。

視界が暗くなる。

呼吸が細くなる。

静かだ。

怒鳴り声もない。

キーボードの音もない。

ただ、沈黙。

相沢の人生は、大きな音を立てずに終わった。

会社は翌日も営業する。

誰も彼の復讐を知らない。

誰も彼の空洞を知らない。

ただ一人の男が、

八割で生き、

静かに時間を削り、

そして消えた。

救いはない。

ただ、彼の顔には一筋の雫が落ちていた。

完。

長いこと「社畜復讐」を読んでくださりありがとうございます。


今回を持ってお仕舞いになります。

皆様は仕事にやりがい、目標をお持ちですか?


私には実際何もありません、少しの実態権を元に誇張しまくって書いてみました。


出来れば新社会人に読んでいただき、こんな大人になってはダメだと強く生きて欲しいですね。


それでは改めまして、ご朗読ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ