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7 領主からの呼び出し

 キラがこの街に来て、半年が過ぎた頃には、冒険者の魔法使いは15人に増えていた。カマドランの魔法使いのレベルには到底足りないが、冒険者としては十分役立っているようだ。

人数が多ければ協力して魔物を倒せる。各自の得意属性を合わせれば大概の魔物は倒せるようになった。

ここの冒険者には魔法使いが沢山居ると評判になるのは自明の理だ。とうとう、領主から呼び出しを受けてしまった。

「キラはここで大人しくしていろ。俺とガンザが行ってくるから。」

「でも、答えられないことも出てくるかも知れないじゃ無いですか。僕も行きます。何も悪いことはしていない。魔法使いを増やしただけです。」


領主の館は街の外れにあった。大きな敷地に巨大で無骨な造りの屋敷が建っていた。貴族の屋敷にしては華美さに欠けるが、魔物が強い領地には、納得の建物だった。高い塀に囲まれて、敷地の中には領兵の訓練施設まであった。

この国は、カマドランと違って兵が多く魔法使いが少ない。

 魔法使いになるためにはカマドランへ行って数年勉強しなければならないし、莫大なお金も掛かる。この国の魔法使いは貴族の次男が多く、女性は全くいない。魔法使いになれば次男は長男を助けて領地にずっと居ることになる。

魔法使いがいる貴族は伯爵以上で無いと金銭的に無理な為、魔法使いはとても少ないのだ。ここの領地にも、魔法使いがいた。領主の次男で、今年で五〇歳になると言う。

領主には二人の子供が居たが、最近長男が不治の病で亡くなってしまったという。今は年の離れた一八歳の次男が跡継ぎとなっている。

跡継ぎは、片腕が無い。魔石の同化に失敗して切り落としたようだ。

カマドランでは同化に失敗しても保証は無い。前もって危険な手技だと言い渡されているためだ。それでもお金は返して貰えないという。


領主の弟魔法使いがキラに向かって聞いてきた。

「お前がカマドランから来た賢者の弟子か?」

「はい、元賢者の弟子。今は只の魔法使いです。」

隣に座っていた領主がすかさず言った。

「其方を呼び出したのは、私の跡取りの腕を治して欲しかったためだ。何でも足をなくした冒険者を再生したというでは無いか。是非息子の腕を再生して貰えないだろうか。」

キラは予想と違う呼び出し内容に面食らった。てっきり魔法使いの増えた原因を聞かれると思っていたからだ。

ギルド長も同じだった。きょとんとしている。

「僕で良ければ治して差し上げます。その腕は魔法の同化の失敗ですか?」

「ああ、そうだ。普通よりも純度と密度の高い魔石を頼んだのがダメだったらしい。同化が旨く行かないのはそう言うことなんだろう?」

「それもありますが、一番の原因は子供の体力が持たないためです。多分貴方は平均よりも虚弱だったのでは無いですか?一番良いのは成人間近の子供に同化することです。そうすれば同化はほぼ完璧に出来ます。幼い時に魔石を植え付けるのは、成長と共に力が増えると言われているからです。でも僕の経験から言わせて貰えばその違いは微々たる物です。危険を冒してまでするほどでは無いと考えます。もし、今貴方が魔石を同化すれば確実に同化できるでしょう。力を付けるのは貴方の努力次第ですが。」

「・・今から?出来るというのか?」

「はい、ご希望であれば出来ますよ。」

「やって欲しい。」

「コラ!お前は跡取りだぞ。何かあったらどうする。万が一お前が死んだらここには後を継ぐ者がいなくなってしまうでは無いか。」

「でも、父上、叔父上ももうお年です。これから先魔物が増えて魔法使いがいなければ領地はどうなりますか。それと私は如何しても魔法使いになりたかった。叔父上のような魔法を使ってみたいのです。」

「あの、若しかして、この領地に魔法使いが沢山居ることをご存じないのですか?」ガンザが溜まらず口を出した。

「魔法使いの冒険者とか言うまがい物か?」

領主の弟の魔法使いが馬鹿にしたように鼻で笑った。そして、

「以前、この国にも魔石を同化できると言った馬鹿な魔法使いがいたが、失敗ばかりしておったわ。出来もしないことを出来るとほざく馬鹿者がまだいたか。賢者の弟子と言われていたかも知れないが、いい加減にしないと牢に入ることになるぞ。あの手技はカマドラン神殿の秘技だ。誰にも真似の出来る物では無い。」

それを聞いていたガンザは、

「では失礼して、冒険者の私の魔法をお見せします。」

と言って、土の魔法でコップを作って見せた。

領主一族は、何も言えなくなってしまった。あんぐりと口を開いた顔が皆同じ表情をしていたので、キラは笑いがこぼれそうになって、慌てて口を押さえた。

 「魔法はともかく腕は治してしまいましょう。」

キラは、スタスタと領主の息子のところへ行き、あっという間に腕を再生した。

領主の息子は驚いていたが、その後は嬉しそうな顔をしてキラを見つめた。

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