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15 カマドラン王の自滅

カマドラン国王は次々と失敗する我が子の魔石同化を怪しんでいた。

「何故我が子に魔石が同化しない。神殿の孤児が成功しているでは無いか。いくら難しい手技だと言っても5人も続けて失敗はおかしい。あれほどの密度の濃い純度の高い魔石はなかなか見付からないのだ。最高級の物を使っているのに。若しかして、神殿に私に対して反感を持つ物がいるのでは無いか。これは調べてみなければ成るまい。もしも、その様な不埒な輩が神殿にいたら、極刑にしてやる。」

賢者なら、成功しただろうが、今までの経緯から頼めなくなってしまった。

賢者は目の上のたんこぶだ。先王の叔父だ。先王はもうとっくに亡くなっているのに賢者はまだ生きている。魔力を持っている物は長命だが、それにしても賢者は長く生きている。一体いつになれば死ぬのだ。私の代が終わっても生きているのでは無いだろうな。まるで王の私よりも権力があるように周りから思われているのが許せない。

「王よ、近頃話題の魔法鞄を作っている国が判明いたしました。」

「ふん、そんなことは好きにさせておけ。我が国に影響なければ勝手に作らせておけば良い。どうせまがい物だ。直ぐにぼろが出てくる。」

「いえ、それが今までに無い位容量が莫大で、更に時間が遅く進むという、この国の魔法使いでも作れない物のようです。サミア国に多く出廻っているようです。」

「容量が上がるのはこの国でもこの間、賢者の弟子が作っておったでは無いか。それと同じでは無いのか?」

「魔方陣が似て居るそうですが、時間の遅延はこの国ではまだ発見されていない技術です。」

「新たな力の有る魔法使いがあの国に居ると言う事か?他国には力ある魔法使いを作らないように注意していたはずだ。神殿はなにをしているのだ。我が国を潰すつもりなのか?」

「王よ、神殿は王の言うとおりにしております。若しかしたらこの魔法使いは、賢者の弟子では無いかと思うのですが。」

そうか、国から逃げおおせた賢者の弟子か!そんなに力の有る子供だったのか。何故早く始末しなかったのか。賢者め!逃がして仕舞いおって!何処まで私に逆らうのか。

「サミア国へ間者を放て。」


 数ヶ月調査して帰ってきた間者の話では、サミア国のダイダロスには異能者と呼ばれる冒険者が増えていると言うことだった。異能者とはすなわち魔法使いだと。

ダイダロスの神殿では、誰も同化に失敗しないで、魔法使いになっている。

これでは我が国の神殿が、下だと言う事になって仕舞う。

然も、部位欠損を直したという話まで出ているそうだ。

部位欠損の再生など聖者で無ければ無理だという。賢者の上がまだ居たのか。

一体どう言う人物が聖者になったのか。だが聖者なら、我が子の同化の手技を成功させられるかも知れない。何としてもこの国へ囲ってしまいたい。

 だが、いくら探ってもその様な人物が見付からなかったそうだ。

神殿では巫女や神官が、平民に魔石を埋め込んで同化させているという。

我が国との違いは、幼児には絶対魔石を同化しないと言うことだけだ。


「王様。賢者様から、幼児の魔石の手技は当分辞めにした方が良いと進言がございました。」

神殿長が王の前で跪きながら、話している。

王は黙って聞くしか無いのだ。自分には分からない分野なのだから。

「なんでも、ダイダロスから臨床の書類が送られてきたようで、総ての魔石には身体を腐らせる属性があると判明したそうです。その属性に幼児の身体は耐えられないと言うことです。九歳か十歳がギリギリ耐えられる年齢と言うことでした。神殿はこれを受けて、今後九歳以下には手技を施さないと決めました。事後承諾になりましたが、王様には何卒ご了承願います。」

私を差し置いて決まってしまった。また、賢者の意見が重用されたのか。

「私の子供は、暫く魔石の同化は出来ないと言う事だな。」

「はい、その方が安全です。」

「良い、賢者にやらせる。もし失敗したら賢者は極刑に処す。そう申し伝えよ。」

「・・・しかし、側室のお子はまだ二歳にも成っておりません。それではお子は確実に死んで仕舞うでしょう。」

「そうか、なら皇太子にも魔石を同化させよ。どうだ平均をとったら丁度良いでは無いか。亡くなっても、次の子はまた直ぐに生れる。賢者が、どちらかでも同化を失敗したら、賢者の財産を没収し首を刎ねると伝えよ。万が一成功したら、賢者にこの国をくれてやるわ。ふは、は」


賢者は快く引き受けた。

「良いのですか賢者様。あの王が約束を守るはずがありません。」

「ほ、ほ、ボブよ。条件は書き直したわ。成功したら皇太子に戴冠させよとな。」

「なんと皇太子にですか!皇太子は十六歳でしたな。これから魔法使いの修行と王の政務とでは大変だろうな。ですが側室の子はまだ二歳にも成っていない、大丈夫でしょうか。」

「側室の子にはキラに貰った魔石を試してみよう。あれなら大丈夫だ。王は、皇太子には手に埋め込んでも良いと言っておった。だが側室の子は、絶対に目にせよとのお達しだった。」

王には隠居して貰う。皇太子は王に似ず落ち着いた少年だ。

王は側室の子は死ぬと確信していた節があった。親として余りにも身勝手だ。あのような王の下では、国は成り立たない。早く隠居して引っ込んで貰おう。

 魔石の同化は、勿論成功した。

皇太子は、これから魔法の勉強と政務の両立で忙しくなるだろう。

側室の子は、神殿には入ることになる。何せキラのよこした魔石には光しか属性が無いのだ。神官として育てられることになるだろう。

 王は悔しがって隠居の条件をのんだ。皇太子にまで危険を冒させ、余りにも身勝手な王に周りが付いてこなくなってしまったからだ。


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