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夏の想い出  作者: 枕返し
11/19

過去7

その年の夏休みもずっとヨーコ姉ちゃんと山で遊んだ。俺は去年より強くなったので、去年は登れなかった木に登ったり、川を普通に泳いだりした。でも俺は去年と同じ遊びではなく、もっと違うこともしてみたくなった。そして提案してみた。


「ねえ、明日からさ、あの山登ってみない?」

そう言って俺が指さしたのは俺とヨーコ姉ちゃんが来るときに通る山ではない山。この川の流れてくる山。俺は去年も少し気になっていた。初めて会ったこの川は二人が来るときに通る山のちょうど谷の部分になるが、その山には川は流れておらず、別の山から流れてきているようだった。この川はどこから来てどこへ行くんだろう、と。それを調べたかった。


「あの山?あそこは、危ない気がする。」

「慎重に行けば大丈夫じゃないかな?」

「そういう事じゃなくて、何か・・・。それに行ったことないし、少し遠いよ?」

「とりあえず行ってみてさ、ヤバそうなら諦めればいいじゃん。」


そして次の日から未知の山に登ることになった。

大冒険になるかもしれないからとその日は朝の早い時間に待ち合わせをした。

いざ出発しようという時、ヨーコ姉ちゃんが

「やっぱりさ、止めない?」

と言った。

「なんで?」

「何か、いけないことのような気がするんだ。」

ヨーコ姉ちゃんのその言葉に俺は去年の友達を思い返した。

「うーん、じゃあ止める?」

無理して付き合わせちゃいけない。俺はヨーコ姉ちゃんが嫌なら別に行かなくてもいい。そう思っていたが

「・・・ううん。やっぱり何でもない。行こっか。」

そう言ってヨーコ姉ちゃんは歩き出した。そして

「マコト君と遊ぶの、楽しいから。大丈夫。けどもし何かあったら、ちゃんと助けてね。」

振り返りながらそう言った。もしかして俺が思ったことをヨーコ姉ちゃんも感じて、気を使ってくれたのかも知れないとも思ったが、そんなことは聞けなかった。


川をつたって山に向かって行くとその景色が一変した。今までは川の傍は石だらけで空が見えていたが、山に近づくにつれて空が見えなくなってきた。足場の石にもコケが生えてきた。今までの山とは違うと、その時理解できた。

それでも山に入ってしばらくは川を辿ればいいので道に迷うことはなく意気揚々と進めていたが、川はどんどん細くなりついには湧き水になってしまった。

「これじゃもう辿るとこないね。」

「どうしようか。」

「川はどこからくるのかって目的は果たしたけど。」

「帰る?」


川の大本は湧き水なんて当たり前のことなんだろうけど、俺は肩透かしを食らったような気分だった。根拠もなく、もっと凄い何かがあるんじゃないかと思っていたからだ。

「もうちょっと登ってみようよ。何かあるかも知れないし。ここで終わりは嫌だ。」

「でも頂上までは行けないんじゃないかな?道標になるような物も、もうないし。」

「行くだけ行ってみようよ。ダメなら引き返せばいいし。」

ここから先はただ登るだけ。より高いところを目指すだけ。登りながら思うのは、俺一人では絶対にここまで来れなかったということだ。怖いというのもある。でもそれ以上にヨーコ姉ちゃんの判断は的確だと思う。一度下らなければならない時や、足場が不安定な場所、そういった時にガムシャラな俺と違ってヨーコ姉ちゃんはしっかり考えている。もし俺一人ではもっと時間がかかっていただろうし、どこかで足を滑らせて怪我をしていたかも知れない。俺は一年で随分大人になったつもりだったけど、まだまだだったんだと思い知らされた。

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