とうとう(多分!)最終決戦だ!その後の事は後で考える!
城下町で一応情報を集める。
確かに大勢の兵達が城を守っているらしい。
街人達は不安そうだ。
「やっぱり俺達に備えてるんだよな?」
誰にとも無く俺は問いを口にしていた。
「間違いない。人間の数が城に集中している。」
ヴァルティアがどうにかして人の気配を感知したらしく、俺に答えてくれた。
もしかして俺よりもチートなんじゃ?
「私はレティーシアに生かされた。その恩は返す気だ。」
ヴァルティアが決戦前の言葉を呟く。
「うん、私も助けられたしね!」
「ええ、私達も救って貰ったわ。」
ミアとエリンもそう言ってくれる。
「とっとと済ませて、みんなでご馳走でも食べよう!」
「ベルったら、こんな時まで食べ物の話?でもその方が安心して落ち着けるわ。」
ベルの言葉にエリンが微笑ましそうだ。
他のみんなも少し気が緩んだように小さく声を立てて笑った。
「でも、覚悟はしましょう。レティーシアを連れ去ったのですから、結界は無い、その上実力者ということですから……私達の敵は。」
キャスの言葉に再び気合いが入る。
兵士に気を取られていたけど、王様の実力がわからない。
レティーシアを拐ったのが、兵士なら…。
もしかして、王様が拐ったならば、王様はもしかするととんでもない実力者だったりして…。
考えてしまうと、どんどん不安になっていく。
やろう、やるしかない!
みんなで頷き合うと、城への路を歩むのだった。
城門には思ったとおり兵士がフル装備で俺達に向けて、城を守っていた。
槍や剣を手にした兵士達、魔法使いや神官っぽい姿も見える。
兵達は俺達の姿を見ると、問答無用でかかって来た。
兵士の後ろから、魔法使いの魔法が俺達目掛けて飛んでくる。
即座に歌い、全員変身した。
レティーシアの結界を思い浮かべると、自然にレティーシアが歌っていた結界の歌が頭に浮かび歌うと、レティーシアほどではないけど、白い結界を張ることに成功した。
「みんな!護りは任せて攻撃を頼む!」
俺が作った結界に、魔法使いの魔法が掻き消される。
俺は結界を張ることに集中し、敵の動きを眺めてみんなに動きを伝える。
みんなの動きは的確で、ミアが大きな火の球を兵士達に撃ち込み、エリンがその火球を風魔法で威力を上げる。
多くの兵士達は吹っ飛ばされ、壁などに叩き付けられて、崩れ落ちていく。
キャスが大地を隆起させて兵士達の動きを封じ、ベルが大地へ水を放つことで土が固まり、ちょっとやそっとでは抜けられないようにした。
魔法使いや神官が俺達に向けて魔法を放つが、俺の結界に阻まれて攻撃は俺達には届かない。
何度か攻撃を受けていると、俺の結界は壊れてしまうが、そのたびに結界を張り直した。
何か…変だ…。様子を見ていた俺は違和感を感じる。
「結界を変わろう。」
闇魔法を爆発させて自分の担当箇所をあっさり片付けたヴァルティアが、そう申し出てくれた。
「ヴァルティア、何か変な感じがしないか?」
思わずヴァルティアに問い掛けてしまったが、ヴァルティアは首を傾げる。
ヴァルティアですら気付いていないんだ。
何か…何か……。
ヴァルティアに結界を変わったことで、思考に余地が出来た俺は、兵士達を見て考えた。
あっ、そうだわかった!
兵士達は向かって来る。
防御もしないで。
魔法使いは魔法使いは魔法で攻撃しかしない。
神官は兵士達を回復すらせずに、やはり魔法で攻撃して来る!
それをみんなに伝えた。
ヴァルティアが俺の言葉を聞くと、兵士達の様子を眺める。
「洗脳魔法か!」
そう言われて兵達を見ると、みんな目が虚ろだった。
「せ、洗脳!?」
「ああ、きりがないぞこれは…全員死ぬまで攻撃して来る。」
ゾンビアタックってやつ?
不味い…いくら優勢でも、じり貧じゃん!
「引きずりだそう。私達の本当の敵を!」
ヴァルティアがそう言うと、みんな動きを止めてこちらを振り返る。
「セート、結界は任せるぞ!」
ヴァルティアはそう告げると、歌を歌う。
するとミア、エリン、ベル、キャスが、ヴァルティアと同じ歌を歌い始める。
大きな魔法球になるが、兵士達がその球にゾンビアタックを繰り返すせいで削られ、なかなかヴァルティアが出したい威力に届かない様子。
俺もその球を護るように結界を張るが、何度も何度も壊される。
数の暴力ってやつだ。
その時思い付いた。
巧く行くかはわからないけど……どうせじり貧だし。
日本の言葉のイメージだし、どうやって伝えようか……。
「何か策でもあるのか?」
ヴァルティアが俺の様子を察してくれる。
イメージはあるけどどうやって伝えたらいいかわからない事を告げる。
「なら、私の魔法でイメージを形にして伝えてみるか?」
ヴァルティアも今の悪状況から脱したいと思ったようで、何でもやれることをやりたいと思ってくれてるのだろう。
俺はすぐにヴァルティアの念話魔法に、イメージを投影した。
ヴァルティアから念話を受け取ると、ヴァルティアが先程の魔球をキープしたままで、すぐに歌を歌う。
念話を受け取ったみんなも続けて歌い出す。
いつもと違うのは、少しずつ小節をずらして歌う…日本で言うところの『輪唱』だ。
敵の攻撃で穴が空いた魔球に、次々に歌うことで穴埋めしていく。
重なった部分がパワーアップして、敵の攻撃は受けているのにどんどん大きくなっていく。
「行くぞ!!」
ヴァルティアが考えた基準値に達したらしい魔球が、兵士達を飛び越して城に向けて放たれた。
城が壊滅していく……凄いな。
すると一人の老人が姿を現す。
王様だ。その姿は…無傷だ。
結界の余波のような力を感じたから、結界で己を守ったんだろう。
その傍らにはレティーシアが居た。
今の魔球による衝撃で、レティーシアの腕に嵌められていた、手錠のような鉄の固まりがパーンと音を立てて壊れる。
多分何かレティーシアの魔法か何かを封じていたんだろう…。
次の瞬間レティーシアは歌いながら、俺達の元に走って来る。
そう言えば、変身中は何かに守られているかのように、攻撃を受けない。
どういう仕組みなのかは後で聞いてみたい。