五色揃った!魔法少女じゃなく戦隊ものじゃないよな?
「風が動いた……」
緑色の髪をした少女が呟く。
背後で鎖に巻かれて暴れる『青い髪の幼馴染みの少女』を悲しそうに見遣る。
「助かるのかしら…。」
ただ呟いて空を見上げていた。
道中は賑やかになった。
金髪と赤髪の超美少女が楽しそうに会話してる。
その前を歩く俺。
時折そっと二人に視線をやると、二人は気が合ってる様子だ。
不意にミアと目が合う。
「後どのぐらいで目的地に着くんだ?」
そう尋ねると、思いがけない返事が帰ってくる。
「……え?セートが道を知ってるんじゃないの?」
「え?」
「え?」
俺達は目的も無く歩いていた……
「セートが気の向くまま歩けばいいと思うわ。」
助け船を出してくれると思ったレティーシアが、そんな事を言ってくる。
俺は困った顔をしていたんだろう、レティーシアが微笑みながら続ける。
「セートのスキルによって、自然とその相手に引き寄せられるの。つまりセートが変身させられる相手が居る場所にセートは向かうはずよ。」
成る程、便利だな。
レティーシアは物知りだなー。
小一時間程歩くと、村っぽいのが見えてきた。
だいぶ暗くなってきたから、夜更けになる前に辿り着いて良かった!
村に入ろうとした時だった。
「セート、ミア、危ない!」
レティーシアは叫ぶと同時に結界を張った。
金色の光が俺達を包むとほぼ当時に、レティーシアの結界に青い魔力がぶつかる。
レティーシアの結界が破れる事は無いようだけど、レティーシアの魔力が尽きれば結界が消えてしまう!
俺は急いで歌い変身する。
ミアも遅れて変身した。
結界の中から様子を窺うと、青い髪の色の少女が、ボロボロになった緑色の少女の髪を掴み引きずってこっちに向かって来ている。
さっきの青い魔力は、この少女のものだろう。
二人がどういう状況なのか、判断がつかない。
そう思考してる間にも、レティーシアの魔力が削られていく。
魔力を込めた歌を俺は歌おうとする。
「待ってセート!その子は仲間よ!殺したら駄目!」
魔力が削られて辛そうに結界を維持するレティーシアの言葉に、俺は歌うのを止める。
でもこのままじゃ……!
「コロス……人間ハミンナ!」
虚ろな目で青色の髪をした少女はそう呟きながら、俺達に近付いて来る。
「これって、操られてる?」
「そうね、きっと魔族の奴らが!」
俺の言葉にミアが変身しながら返事をした。
すぐにミアは歌おうとする!
「み、ミア、一体何を!?」
「操られてるんなら、ボコボコにすれば目を覚ますかなって?」
ミアって見かけと違って脳筋?ってやつなのか……?
でもミアの言う事にも一理あるかも。
「だ、駄目よ?普通の人の状態にその魔力を使ったら、死んでしまうわよ……」
ミアと俺の会話に突っ込みを入れるようにレティーシアが告げる。
ん-、なら……
考えた末に俺は一つ方法を思い付いた。
俺は歌を歌い始める。
レティーシアが心配そうな顔を浮かべたので、俺は「大丈夫」と親指を立てて合図する。
そして……
俺の思うままの歌を唄う。
俺の身体から魔力が流れて、青髪の少女と緑髪の少女に俺の魔力が向かう。
心配そうにレティーシアがそれを見守る。
そして、二人に俺の魔力が吸い込まれると、力無くぐったりしていた緑髪の少女が意識を取り戻して、二人はほぼ無意識に歌を唄う。
二人の服が弾けて変身していく。
それぞれ二人は髪の色と同じ色の魔法少女の姿になる。
みんな少しずつデザインが違うんだなーなんて考えていると、変身を完了した青髪の少女が再び暴れ出す。
緑髪の少女は変身してダメージが少し回復したためか、青髪の少女から離れて緑の結界を張る。
青髪の少女はでたらめに魔法を繰り出して、氷の礫を俺達に向けて放つ。
その時、レティーシアが変身して、結界を強める歌を唄ってみんなを結界で包む。
歌で強化された光の結界には、青髪の少女の攻撃をたやすく受け止める。
でも「ここからどうするの?」という表情でレティーシアが見て来る。
俺はこの戦いの方向を決めていた。
「ミア、やっちゃえ!」
「あいよっ!」
俺はミアを青髪の少女にけしかけた。
ミアは俺の合図に従い、歌を唄って魔法の炎を次々作り出し、青髪の少女に向けて攻撃する。
ミアの炎を受けて辛そうに青髪の少女が繰り出した氷も、ミアの炎に焼かれて溶けてしまい攻撃が一切封じられてしまっている。
そして、ミアが青髪の少女に一気に詰め寄って、魔法を纏った拳で青髪の少女をぶん殴った。
勢いで吹っ飛ばされ、木に身体を打ち付けた青髪の少女の少女はぐったりと動かなくなり、同時に魔法少女のの衣装が解除された。
ちょっと心配だけど、魔法少女になれば魔法少女に攻撃されても死なないで耐えるんじゃないかなと思った作戦だった。
みんなも魔法少女モードから戻り、青髪の少女に近付く。
レティーシアが回復魔法で青髪の少女を治癒した。
「う……」
すぐに気付いた青髪の少女は、俺達を見る。そして……
「御免なさい!」
どうやら操られていた時の記憶はあるようで、申し訳なさそうにみんなに謝る。
「特に、エリン!ほんっとうに御免!!」
エリンとは、緑髪の少女のことらしい。
「ベル、洗脳が解けて良かった…。」
「私が操られてる時、エリンだけが最後まで私を止めてくれた。」
「凄い力だったから、村中の人間でベルを止めるために鎖で繋いでしまったし。」
困った表情でベルを見ながらエリンは経緯をくちにする。
魔族に操られたベルは、繋がれた鎖まで千切って、そのベルを身体を張ってエリンが止めていたらしい。
「ところで、魔族の洗脳を解いてくれた貴方たちは勇者様?」
「それにあの衣装は?歌は?」
ベルとエリンは続けて尋ねて来る。
「えーと、俺が勇者らしくて、俺のスキルで魔法効率や身体強化するあの衣装を身に纏う状態に出来るんだ。」
成る程ーと理解したエリンとベルは見合って頷く。
何故かミアまで「そうだったんだ!」と驚いていた。
ミアは脳筋の天然さんかな?