やった!遂に魔法少女が見れた!
悲鳴に駆けつけると、馬車が魔獣(魔族でも知性が無い獣タイプの魔物をそう呼ぶらしい)に襲われていた。
女性が一人馬車の中に居て、鎧を身に付けた男達が魔獣に向きながら馬車を守ってる。
魔物が襲い掛かる前に、レティーシアが結界を張った。
魔獣の数が多い為か、少しずつ結界が削られているのがわかる。
急がないと!
あの全裸は恥ずかしいから、結界から出て、木陰に隠れて変身した。
すぐさま飛び出して、歌を唄って魔法による白い矢を魔獣達に放つ。
次々と倒れていく魔獣。
楽勝だ!
俺を覆っていた魔法が消えて、元の姿に戻る。
魔獣を全て倒すと、馬車の中から女性が出て来る。
「貴方達は…?」
赤いロングヘアーの女性が俺達に尋ねる。
「俺達は魔王の元に向かってるんだk」
「勇者!?貴方勇者なのね!」
続きを言う前に遮られてしまった。
「ええ、セートは勇者よ。」
勇者ではないと言う前にレティーシアが口にしてしまう。
え?俺は結局勇者なの?
とおろおろしてると、レティーシアが俺に微笑みを向ける。
俺が勇者で間違いないって言ってるんだよな?
「私は『ミア=アルトロ』。アルトロ伯爵家の次女。周囲の男達は私の護衛の騎士。」
赤い髪の…ミアは、伯爵ってことは貴族だよな。
敬語で喋るべきかな?
「俺はセートで、彼女はレティーシアです。俺は多分勇者だと思う…?」
「何故疑問形?」
俺は城であったことをミアに話した。
「成る程ね。じゃあ勇者でいいんじゃない。聖女……レティーシアが言ってるんだから。あと、敬語はやめて。勇者なら対等…それ以上の存在なんだから。」
レティーシアが自分は聖女ではないと言ってるって言うのも伝えたから、ミアも聖女ではないと言うことを取り敢えず信じて言い直した。
その時、騎士から悲鳴が上がった。
謎の黒い煙に包まれた騎士が姿を消していく。
あっと言う間に、二人、三人と身体が消えていく。
レティーシアが咄嗟に結界を張るが、さっき結界を張ったばかりなせいか、結界がいつもより強度が無い感じ。
慌てて俺は歌って変身しようとしたのに、身体に力が入らない。
さっきので力を使い果たしたのか?
「セート!ミアさんと両手を繋いで!」
レティーシアの指示に従ってミアと向かい合って両手を繋ぐ。
いきなり両手を繋がれてかなり密接した顔の距離にミアが動揺して顔が赤くなるが、ミアも緊急事態だとわかっているから、そのままで居てくれた。
近くで見るミアは、貴族だからか顔の肌のキメが細かくて、整った顔だな、なんて考えてしまう…それどころじゃないのに。
レティーシアの綺麗さとはまた違う大人の綺麗さだな…。
二人とも地球で見たことがないくらい綺麗だ。
「セート、自分の魔力をミアさんに流すようにイメージして!」
レティーシアが結界を辛そうに維持しながら説明してくれる。
余計な事を考えないように目を閉じて指示に従う。
自分の奥からミアに、魔力とやらが流れていくのがわかる。
すると、すぐにミアが俺が変身の時歌ってる歌を口にした。
ミアが変身する。
はっと気付いたけど、これからミアは裸になるよ、な?
咄嗟に目を両手で塞いだけど、思春期の男としてはどうしてもこっそりミアを見てしまう。
俺以外の変身を初めて見てみると、意外な事がわかった。
謎の光で胸や股間、お尻などは見えないんだ。
畜生!じゃなく、俺も堂々変身して平気なんだと知った。
ミアに視線を向け直すと、俺の時のように、ミアに服が纏わりついていく。
ただ俺と違って、正統派魔法少女、って感じで。
服が上下装着されると、足にはブーツが、腰にはスカートがフワリと巻き付き、最後にマントが肩を覆い、完全な状態になった。
俺が白を基調としてたのに対し、ミアはその髪の毛の色と同じで赤を基調としていた。
ミアも自然に歌が浮かぶようで、ミアが歌うと巨大な炎が浮かび、先程の黒い攻撃が発せられた辺りに炎を落とす。
「ちっ!」
隠れていたらしいそれは、ミアの炎の攻撃を受けて、舌打ちの声を漏らして茂みから飛び出して来た。
黒髪の女性……魔族だ。
ミアの攻撃を喰らったんだと思ったけど、無傷だ!
前回の魔族と違って角は無いが、ワニのような尻尾が生えている。
「り、竜族!?」
ミアが女の尻尾を見て、動揺しながらそう呟くと、間髪入れずに竜族の女はミアに向けて炎を吐いた。
ミアも歌って炎で攻撃するが、拮抗している…いや、若干ミアが押され気味だ。
俺はどうしたら…そうだ、今ならミアが女の攻撃をかろうじて止めてくれてるから、結界が必要無い今、俺の残りの魔力を……
俺はレティーシアに駆け寄ると、察したレティーシアは結界を解き、俺と手を繋ぐ。
さっきのように俺の魔力をレティーシアに流す。
次の瞬間レティーシアが歌を口ずさみ、レティーシアが光り服が消え去る。
当然先程のミアのように、見たい箇所は見えない!
まあ仕方ない、俺のもおかげで見られないんだから。
レティーシアは光の中で片腕で、割と大き目の胸を隠すポーズを取っている。
ミアの時のように、レティーシアの身体を服が纏い、フリルのスカートが腰を飾って、ブーツが、その上に靴下かな?レティーシアの腿までを覆う。
絶対領域ってやつだな!いいね!
最後にマントを装着して変身を終える。
レティーシアの衣装は黄色を基調としてた。
そういえばレティーシアが張る結界は金色だった。
そういう感じで衣装は、その人の属性と同じ色なんだな、と今更思った。
すぐにレティーシアは歌う。
レティーシアが纏った金色の光が、ミアの炎を覆う。
その光る炎が竜族に向かう。
それでもさすが竜?だよな、ブレスを吐いて二人の攻撃とぶつかる。
拮抗してる!
不意にミアとレティーシアが目を合わせて頷き合うと、二人で合わせるように歌を歌った。
二人のオーラが混じり合い、ミアとレティーシアの光の炎がますます輝いて、竜族のブレスを押し返した。
信じられないと言うように驚いた顔を浮かべた竜族は、そのまま二人の炎を受けて消えていった。
「やったね♥️」
変身が解けたミアが嬉しそうな笑みを浮かべて、レティーシアと俺に抱きついた。
ミアの胸のボリュームが当たってて、そっちに意識が行きそうになる。
ミアは変身した事に関して、特に何も言わなかった。
「勝ったからいいじゃん!」と。
余り深く考えない性格のようだ。
大雑把?なのかも。