表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

俺が魔法少女?あ、男だから魔法少年?

俺が魔法少女?あ、男だから魔法少年?



王都を出て、俺は初めての異世界を歩いている。

ちなみに王様から支給されたのは、何の変哲もない剣と、防御力の無さそうなファンタジー服だけ。

王様は説明こそしてくれたが、やっぱり俺に幻滅してたのかな……


とにかく聖女を拐った魔族が北に飛び去ったということだったから、そちらを目指している……けど、距離が全くわからない。

辿り着くまでに生きてられるかな?

「何かもう理不尽だよな…」

勝手に呼び出してこの仕打ち……俺は何か悪いことをしていたのか?

思い当たらないけど…

一人旅なのでつい一人言を呟いてしまいながら歩を進める。

それがいけなかったのか、俺の声に反応したらしい獣の唸り声が聴こえてきた。

茂みがガサッと音を立てると、大きい犬が何匹も姿を現した。

犬?というより狼みたいな……体長がかなりでかい。

俺は動物は好きな方なのでその犬(?)の様子を見ると、どう見ても俺に対して敵意剥き出しだ。

咄嗟に剣を抜くと、犬(?)は襲い掛かってきた。

剣を横凪ぎに振ってみる。

犬(?)の頭に剣の刃が上手く当たったけど……

「全然効いてない…。」

俺は絶望した。

少しだけ、見た目は普通の剣だけど、真空波っぽいのとか出るかなーなんて、期待してたんだ。

現実を見て落胆する。

「ああ、やっぱり俺は死んでもいい存在だったんだな。」

地球で死んで、こっちでも死んでしまうとか、やっぱ何か前世で悪いことをしてたのかな……


「なら、少しは足掻きたいな…」

俺は犬(?)に背を向けて、とにかくダッシュした。

当然追いかけられる。

犬だか狼の足に敵うわけがないけど、とにかく生きる可能性があるなら、それに賭ける!

走りながら剣で威嚇して、目茶苦茶に走った。

まださほど走っていないのに、殆んど追い付かれているのがわかるほど、犬(?)の息がかかる……やっぱ無理ゲーだった……

走りながらも覚悟を決めた時、目の前に光?金色の壁のようなものが目に入った。

ぶつかる!と思った瞬間、走った勢いのまま、俺の身体はその壁にぶつかる事なく吸い込まれた。

犬(?)達は壁に思い切りぶつかって、痛かったのかキャンキャン吠えながら、光の壁に背を向けて逃げて行った。


ホッと一安心すると、視界に金髪の女の子が、祈るようなポーズでそこに居た。

見るとこの光の壁は女の子を中心に発生している。

多分この子が張ってる光の壁なんだろう。

女の子は俺に気付くと、何となく安心したような表情を浮かべた。

「聖女…様?」

「一応…聖女と呼ばれてるのは、確かに私よ。」

長い金髪で蒼い瞳の整った顔を持つ、可憐な感じの聖女様は、聴いた声から想像したよりもっと可愛い顔だった。

見惚れそうになったが、聖女様は次の瞬間辛そうに顔を顰める。

光の壁に何かが攻撃して来る。

攻撃が光の壁にぶつかる度に聖女様が辛そうになる。

攻撃者へ視線をやると、人間とは少し違う…頭に角?を生やし、露出多目の出で立ちの女が、俺と聖女様を護る光の壁に黒い衝撃波を放っている。

そうか、聖女様はこの光の壁で敵を阻んでるんだ!

聞く暇が無いから、俺は予想して動いた。

今は聖女様を護るんだ!

聖女様と角女の間に立ち塞がるようにして角女に対峙する。

すると、角女は攻撃の手を止めて俺を品定めする。

そしてすぐにおかしそうに口を開く。

「お前…ああ、あの時の勇者ね。」

「俺を知っている?」

「勇者召喚の儀で、召喚された勇者を殺しに行ったのが私だもの。聖女の邪魔が入って失敗したけどね。」

やっぱり…聖女様が俺を護ってくれたんだ。

会話から確信に変わった。

この光の壁の中に居れば安心だ…と思ったけど…

「セート、私の魔力が尽きたらこの結界は消えてしまう。だから…」

この安心は長くないと聴かされる。

ど、どうしよう……頼りにならない武器しか持ってない!

次の瞬間女が衝撃破を一点に集中するように放った。

光の結界にひびが入る。

「セート、歌って!」

苦しそうになりながらも結界を維持しながら聖女様が俺に叫ぶ。

え……歌…?俺が知ってる歌なら何でもいいのかな?

っていうか、こんな緊迫した場で歌うなんて!

そう逡巡していたら、聖女様は結界を消してしまい、続けて俺に光の魔法(でいいのかな?)を放った。

次の瞬間……俺に白い光が纏わりついて、自然に心に浮かんだフレーズを口にしていた。


白い光が俺の歌に呼応するように輝いて、俺の身体に力が満ちる。

そして、俺の服が光に消えて……全裸に!

ちょっ、は、恥ずかしい!

慌てて聖女様へ視線をやると、この状態を察知していたようで、俺から視線を反らしている…。

そんな羞恥プレイのような時間はすぐに終わり、俺の身体を別の衣類が少しずつ纏う。

全身を、先程身に付けていたのとは全然違う、フード付きのローブのようなのに明らかに自分の身を護ってくれるのがわかる衣装。

続けて足に、光が纏わりついてブーツになる。

そしてローブの上にマントが翻り、最後にローブを被った頭の上に、天使の輪のような白い円が発光する。

全体的に衣装は全て白を基調としていた。

変身が終わると、身体の底から力が漲って感じている。

「これが俺のスキル?」

聖女様を見遣ると、こくりと頷いた。

「それが勇者の力か…生意気な!」

角女が手を掲げ、今度は俺に攻撃しようとしてきた。

咄嗟に俺は先程とは違うフレーズの歌を無意識に口にした。

身体から白い光…魔法(で合ってるかな?)が湧き出すのを感じ、それを掌に集めるようにして、角女が放ってくる攻撃より先に放つ。

「これが…勇者の、力っ!?あああ―――っっ!!」

俺の力に飲み込まれるように、断末魔の叫びで角女が消えていく。

や、やった!

あ、でも…人殺しになっちゃう!?

「セート!有難う!」

戦いが終わると、元の衣装に戻った俺の元に、聖女様が駆け寄って来た。

「セート、御免なさい。私が力を使い果たしたせいで、戦いに加勢出来なくて…」

「あ、気にしないで下さい聖女様。貴女は召喚された時に俺を助けてくれた。そのせいで拐われたと聞きました。仮を返すのは当然です。」

俺が言葉を発すると、聖女様はキョトンとする。

「…セート、私に敬語は必要無いわ。私の名前はレティーシア。」

可愛い顔で綺麗な笑顔を俺に向けながら自己紹介するレティーシア。

「あ、俺は…セート…あれ?レティーシアは俺の事を知ってるんだ?」

こちらの発音では俺の名前は言いにくいと、王様との会話で知ったので、王様に紹介した呼び方で名を名乗る…が、レティーシアは俺の名前も顔も知っていた。

「私がセートを召喚したの。たまたま死に掛かっていたセートの魂を召喚してしまった…。」

やっぱり俺はあの時轢かれたんだ。

「…御免なさい、こんな所に喚んで、ゴタゴタに巻き込んで……」

凄くレティーシアは申し訳なさそうに頭を下げる。

「レティーシアが召喚してくれなかったら俺は死んでいた…と思う!」

レティーシアに向かい合い、両肩を掴んで横に首を振りながら力説する。

有難う、と俺が微笑んで見せると、レティーシアも笑顔になってくれた。

「じゃあ、魔族も倒したし、城に帰ろうか?」

レティーシアに言葉を向けると、レティーシアは真顔になって首を横に振る。

「城は…駄目。」

何か事情があるようなので、レティーシアの言葉を待つ。

「…私は聖女なんかじゃないの。私の力を知った教団に捕まり、聖女に奉り上げられた。教団は勇者召喚が目的だったから、それで言ったら私は召喚の力を持っていたから、聖女と言う存在になるのだろうけど。」

召喚したり、俺に力を与えてくれたり、結界を張ったり出来るのだから充分聖女っぽいけど。

本人が違うと言うなら違うんだろう。

「で、城が駄目なら、どうしよう?」

「このまま、魔王の拠点に向かおうと思う。」

魔王……やっぱり本当に居るんだ。

「セートは安全のため、どこかの街で、教団の追っ手から身を隠していた方がいいわ。そのためにセートのスキルを教団から隠したの。セートが利用されないように。」

そうか、俺のスキルが無かったのは、レティーシアの気遣いだったんだ。

召喚されて意識が無かった俺に結界を張ってくれたり、俺を召喚した責任みたいな感じかな?

「借りは返したつもりだけど、俺もレティーシアに着いて行くよ。俺のスキルが戻ったから、教団が俺を狙うんだよな?」

実際は俺の方が多く助けられてるような気がするし。


「それじゃあ、セート、宜しくね。」

レティーシアは極上の笑顔で俺と握手をした。

魔法少女がまだ出ず…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ