最後の戦い。そして……
それは突然だった。
空が――裂けた。
音もなく、色もなく、ただ時空の穴がが破れたように。
その化け物は姿を現した。
形が……ない。
いや、形はある。
だが、崩れている。
溶けている。
人の形を模しているようで、何度も何度も失敗したような、
そんな“歪んだ生き物”。
皮膚はひび割れ、骨のようなものが外に露出し、目はどこにもないのに、全方向から見られているような圧迫感。
その存在が、地面に触れた瞬間――草が黒く枯れた。
「な……なにあれ……!」
ミアが動揺する。
「生き物……なの……?」
エリンが後ずさりした
怪物は、ぐちゃり、音を立てて動いた。
声にならない声が、空気を震わせる。
「……カミ…………」
「神……を……求めてる……?」
怯えながらベルが呟いた。
「……あれ……王を……殺した……“本体”……」
あいつに殺されたレティーシアは、その時姿を見たんだろう、そう言い切った。
「……っ!みんな、変身だ!!」
「うん!!」
「いくよ!!」
レティーシアはとミオは配置につく。
……だが。
声は出ているのに、歌が“変身”に繋がらない。
「えっ……歌が……変身に……ならない……!?」
「魔力が……流れない……!」
キャスとエリンが驚愕する。
「……あれが、変身の理力を食ってる……!怪物は、変身という概念そのものを“食べている”。
」
魔力の流れが一番わかるヴァルティアが、そう告げた。
「くそ……!このままじゃ……!」
怪物も溶けながらもこちらへ、腕のようなものを伸ばし、レティーシアへ向けて振り下ろす。
「きゃっ……!」
その瞬間――
セートの胸が光った。
黒い光。
「これは…闇神様の!」
ウェルナート「贈り物」の力。
みんなが光、歌の力が強くなる。
怪物も弱ってはいくが、まだ足りない。
「みんな俺に力をくれ!」
俺はみんなを守るために、みんなの魔力を貰う。
みんなは頷き、ミアが、エリンが、ベルが、キャスが、ヴァルティアが、歌の力を俺にくれる。
俺は変身した。
「白き光よ、俺に力を!」
白い光が俺の歌に呼応して輝き、身体に力が満ちる。
普段着が光にほどけて消え、全身が白い光に包まれる。
白いフード付きローブが光から編まれるように身体を覆う。
光が足元に集まり、白いブーツへと変化して装着。
最後に白い天使の輪が頭上に発光し、変身完了。
俺の歌の力を感じて、怪物の狙いは俺に集中した。
その隙にみんなも変身する。
「黄金の光、私を包んで!」
「紅き炎よ、拳に宿れ!」
「青き水よ、私に流れ込め!」
「緑の風よ、そよいで力に!」
「大地の神よ、守りの力を!」
「闇の神よ、我が身を捧げる!」
レティーシアの歌声に呼応して、金色の光が舞い上がる。
普段着が光にほどけ、全身が柔らかな光に包まれる
光の粒子が集まり、白いトップスと黄色のスカートが編まれるように形成される。
足元に光が集まり、白×金のブーツが装着される。
後頭部に金色の光が集まり、三つ編みが編まれてハーフアップに変わる。
最後に金色の光輪が頭上に発光し、変身完了。
ミアの歌声に呼応して炎が立ち上がり、身体を包む。
普段着が炎の光にほどけ、全身が赤い光に包まれる。
炎の粒子が集まり、ショートジャケットと炎スカートが編まれるように形成。
足元に炎が集まり、赤×金のブーツが装着される
髪が炎の風に揺れ、三つ編みから、高い位置のポニーテールに結い直される。
頭上に赤い光の輪が浮かび、最後にガントレットを装着して、変身完了。
エリンの歌声に呼応して、水が立ち上がり身体を包む。
服が水の光にほどけ、全身が青い光に包まれる。
水の粒子が集まり、ショートジャケットとスリットスカートが編まれるように形成。
足元に水流が集まり、青×銀のロングブーツが装着される。
髪が水の風に揺れ、透明な水滴のイヤリングが耳を飾る。
青い天使の輪が頭上に浮かび上がって、変身完了。
ベルの歌声に呼応して、、
風の粒子が集まり、全身が緑の光に包まれる。
黄緑×白のショートジャケットが纏わりつくように形成。
ショートジャケットと黄緑のフレアスカートが編まれるように形成。
足元に風が渦巻き、白×黄緑のブーツが装着される。
髪が風に揺れ、風のリボンがふわりとツインテールに結ばれる。
緑色の天使の輪が浮かび上がって、変身完了。
キャスの歌声に呼応して、砂粒が舞い上がり身体を包む。
普段着が砂の光にほどけ、全身が茶色の光に包まれる。
砂粒の光が集まり、巫女風トップスとオーバースカートが編まれるように形成。
足元に大地の力が集まり、茶×金のロングブーツが装着される。
砂粒の光が髪を包み長い髪が自然に三つ編みに編まれ、金色の土の紋章飾りが結び目に浮かぶ。
最後に茶色の天使の輪が頭上に浮かんで、変身完了
ヴァルティアの歌声に呼応して、闇の霧が立ち上がり身体を包む。
普段着が影にほどけ、全身が黒紫の光に包まれる。
闇の粒子が集まり、豪華な魔導衣とロングスカートが編まれるように形成。
足元に影が渦巻き、黒×金のブーツが装着される。
紫の光輪が頭上に発光し、変身完了。
変身後に徐々に変身の理力が吸われていく。
変身が解ける前に、みんなは歌う。
自然にみんなで手を取り合い、円になって歌う。
みんなの歌がみんなに流れて、一つになる。
それは七色になり、結界を張る。
同時に俺の絆スキルが発動し、一つの七色の球になろうとする。
みんなの力が俺に溜まる。
「うああああ――っっ!!」
祈りを乗せて歌う。
口から血が流れる。
全身が痛い…キャパオーバーなんだろうな。
身体の血が口から流れる。
喉も痛い。
血反吐を吐きながら、俺は歌うのをやめない。
みんなも魔力の限界を迎えるが、歌魔法に集中する。
その時、怪物が変身の理力を奪おうと、結界に手をかけた。
俺達が魔力の塊を完成したのとほぼ同時に結界が割られ、変身が解除されると同時に、七色の球が、怪物へ向かい、内側から爆ぜた。
俺達が歌ったのは、『幸福の歌』。
「怪物は恐らく、自分だけの幸福のために神の力を欲したのだろう。」
ヴァルティアがそう告げた。
俺達は皆の幸福を願ったから、勝てたのかもしれない……。
怪物に吸われた歌魔法は戻ってこなかった。
闇と理が混ざったような、静かで強い輝き。
その光の中に、怪物と歌魔法は溶けていった。
「レティーシア……?」
俺はレティーシアの手だけ繋いだままだった。
レティーシアは笑おうとしたけれど、その瞳には涙が溜まっていた。
「もう……帰れなくなっちゃった……歌魔法が無くなったから…。神界にも……お母様にも……
お兄様にも……会えない……お父様にも…。」
ぽたり、と涙が落ちる。
俺は迷わなかった。
そっとレティーシアの指を絡めるように強く握った。
「……レティーシア…。」
「……セート……?」
俺はまっすぐにレティーシアを見つめた。
迷いが一つもなかった。
「俺が……レティの家族になるよ」
レティーシアの呼吸が止まる。
「天界に帰れないなら……ここで生きればいい。俺と……みんなと……この世界で。」
レティーシアの涙が、ぽろぽろと溢れた。
「……セート……そんなこと……言われたら……私……。」
レティーシアは声が震える。
「……あなたのこと……もっと……好きになっちゃう……」
俺は照れたように笑い、彼女の手をさらに強く握った。
「それでいいよ。俺は……ずっと『レティ』の隣にいるから」
レティーシアは胸に手を当て、涙の中で微笑んだ。
「……うん……じゃあ……今日から……あなたが……私の“帰る場所”……」
二人の手は、
もう離れなかった。




