レティーシアの復活
冥界の試練を越え、
俺たちはウェルナートの元へ戻った。
そこで目にした光景に、全員が言葉を失った。
敵の死体が、山になっていた。
「……なに、これ……」
ミアが引いている。
「ひ、一人で……?」
ベルも引いた。
ウェルナートは俺たちの前に立つと、無言で手を差し出した。
俺達の中から、集めた魂の欠片がウェルナートがに移る。。
ウェルナートはそれらを両手で包み込み静かに詠唱を始めた。
途中敵が襲って来たが、ウェルナートは詠唱中にも別な魔法で倒してるので、俺達も安全だ……出番が無い!
レティーシアが戻るかも知れないと考えたら、少し頭の回転するようになった。
やがて黒い魔力が渦を巻き、
欠片がひとつの“魂”の形へと戻っていく。
「……戻れ。
レティーシアの魂!」
ウェルナートの声が命令になり、魂は光となって、レティーシアの胸元へ吸い込まれていった。
俺たちは息を呑む。
……しかし。
数秒待っても、
レティーシアは動かない。
「「……え……?」」
ミアとエリンがハモる。
「ど、どうして……?」
「魂は……戻ったはずなのに……」
ベルとキャスも不安そうだ。
全員が不安げにウェルナートを見る。
ウェルナートは眉を寄せ、深く考え込んでいた。
「……魂が……足りないのかも知れないな。」
「足りない……?」
「そんな……全部集めたのに……!」
呟いたミアとエリンがその場に崩れ落ちる。
「もうタイムリミット間近だ…。」
(……時間が掛かりすぎた……?……生き返らない……?そんな……そんなの……)
今から探そうにも時間的にもう間に合わない感じだ。
胸が締め付けられる。
「レティーシアああぁぁぁぁっっ――!!」
俺はレティーシアを抱きしめ、
声を上げて泣いた。
「ごめん……っ……俺の……せいで……!!守れなくて……!!」
号泣する俺をよそに、ウェルナートは無慈悲に言う。
「……レティーシアの身体は連れ帰らせてもらう。」
その言葉が胸に突き刺さる。
連れて帰る?どこに?
そういえばウェルナートってレティーシアの何なんだ?
ちょっとだけ……いや、かなり嫉妬した。
嫉妬から焦り、俺は気付けばレティーシアの唇にキスをしていた。
俺の方が所有権があるとか、何かもう色々頭がごちゃごちゃだったんだ……。
唇を離すと、俺の中から金色の魔力が溢れ出した。
眩い光がレティーシアの胸へ流れ込み、
彼女の身体を包む。
「な、なにこれ……!?」
「セートから……光が……!」
「まさか……魂の欠片が……まだセートに……?」
そういえばレティーシアが死ぬ寸前、俺の中に光が入って来た気がした…。
それがレティーシアの魂の欠片だったんだ…。
「成程、レティーシアは死ぬ直前、無意識にセートに魂を委ねたのか」
あれ?俺名乗って無いよな?
最後の「金の神性の欠片」をウェルナートがレティーシアに翳すと、レティーシアはゆっくり目を開ける。
レティーシア
「……ん……」
「……レティーシア……?」
「……セート……?」
その声は、確かに――生きている声だった。
俺の堰を切ったように涙が溢れる。
「レティーシア……!レティーシア……!!」
レティーシアはぼんやりと周囲を見回し、自分が俺に抱きしめられていることに気づく。
「……あれ……?私……死んだはず……」
「死んだなんて言わないでくれ……!もう……二度と……!」
声が震えて言葉にならない。
レティーシアは俺の頬にそっと触れた。
「泣いてるの……?セート……」
「泣くに決まってるだろ……!レティーシア…大好きなレティーシアが…!」
勢いで言ってしまった、が後悔はない。
レティーシアは頬を赤くして、少しだけ微笑んだ。
「……ありがとう。呼んでくれたのね……私のこと……」
「呼んだよ……!何度でも呼ぶよ……!レティーシアが戻ってくるまで……!」
ミアが涙を拭いながら叫ぶ。
「レティーシアぁぁぁ!!よかったぁぁぁ!!」
エリンが泣きながらも茶化すように言う。
「ぐすっ……お姉さんを心配させちゃ駄目よ…」
「ほんとに……ほんとに……生き返った……!」
ベルはレティーシアにお菓子を差し出しながら泣いてた。
「レティーシア……!無事で……本当に……!」
キャスも涙ぐむ。
ヴァルティアは静かに目を閉じ、深く息を吐いた。
「セート、お前の“愛”は……本物だ」
そして――
ウェルナートがゆっくりと歩み寄る。
レティーシアは驚いたように驚いたように目を見開いた。
「……お父様……?」
ウェルナートは娘の頬に触れ、静かに微笑んだ。
「……よく帰って来たなレティ。」
「え?レティーシアのお父さんってことは……。」
俺がぽかーんとしていると、キャスとヴァルティアがウェルナートに跪く。
「その魔力は、闇神様ですね?」
ヴァルティアが敬語で言う。
「あれ、でもレティーシア、お父さんは黒髪金目だって……。」
「この格好も名前も人化する時のアバターだ。」
成程、本来は黒髪金目ってことか。
あれ、そうすると……俺、お父さんの前でキスしちゃった!?
え?え?拙くない!?
一人パニックを起こしている間に、レティーシアは、父との再会に父の胸で号泣していた。
そりゃそうだよな、死にかけ……いや、死んだんだから、さぞ怖かったろう。
「さて、と。そろそろ俺は帰らないとな。」
ウェルナートはそう口にした。
こんな戦力が一緒に行ってくれないのか……と溜息を吐く。
「本来神は地上にあまり関わってはならないんだ」
俺の心を読んだかのような答えだった。
「あと……今回レティーシアを生き返らせたのは特例だ。今後はこの方法は無理になるだろう。」
つまり、レティーシアだけじゃなく、俺達も安易に死ねるわけじゃない、ってことかな。
「ひとまずお前達に力を分ける。レティーシアを助けた礼だ。」
と言うと、凄い力で魔力が満ち溢れていくのを感じる。
「すっごい、拳が震えてるよ!」
「氷も鋭さを増してるわ。」
「風も唸ってる!」
「闇神様…こちらこそ、感謝いたします。」
「我が祈りの全ては、闇神様と共に!」
キャスとヴァルティア信仰心が高いから、ずっと跪いたままだった。
闇に溶けてウェルナートは帰って行った。




