異世界に転移?俺が勇者?
ep.1 異世界に転移?俺が勇者?
『お願い!目を醒まして、セート!』
誰かの必死な声が聞こえた。
少女……だと思う。すごく綺麗な声。
その澄んだ響きが、逆に眠気を深くしていく。
起きなきゃ……と思うのに、身体が言うことを聞かない。
意識はどんどん沈んでいって、俺はそのまま闇に落ちた。
――俺は寺和聖斗、15歳。
ごく普通の中学生……だったはずだ。
部活して、帰って、寝て、また部活。
そんな毎日を過ごしていた帰り道で、たまたま猫を見つけた。
最近じゃ珍しい、野良猫だ。
つい目で追っていたら、いつの間にか車が――。
猫の真横に迫ってきていたから、考えるより先に身体が動いた。
猫を抱きしめて庇ったところまでが、俺の記憶。
次に意識が戻ったとき、全身が怠くて、目が開かない。
ああ……死んだんだな、って思った。
せめて猫だけでも助かってるといいな……
やっと目を開けられた時、白い天井が見えた。
病院か?と思ったけど、周りには知らない人が大勢いて俺を見下ろしている。
俺は台座のような場所で、あお向けに寝かされていた。
部屋は洋風のホテルみたいだ。
……いや、ここどこ?
俺が身を起こすと…
「何故スキルが無いんだ!」
と怒鳴って来る。
スキル?
バイト経験とかそういう話じゃないよな?
周りの人は日本人ではない見た目なのに、聞こえてくる言葉は日本語?
普通に聞き取れる。
英語が苦手な俺には助かったけど。
身を起こした俺と周囲の目が合うと、視線がやたら冷たい。
「おお、目覚めたか、勇者殿。」
その中から豪華な衣装の老人が声をかけてきた。
「勇者って……俺のことですか?」
「そうじゃ、勇者よ。」
この老人だけは優しい。
周りは相変わらず冷たい視線のままで。
何なんだよ、何か言いたいことがあるなら、言えばいいのに…
話を聞くと、俺は“次元を渡って”ここに来たらしい。
ここはセント・フリージアという異世界。
魔族と人間が戦っている世界で、魔王が降臨したため、人間が不利になったから、古文書にあった“異世界の勇者”を召喚した……
それが俺のこと。
勇者は次元を渡る時“スキル”を授かるはずなのに、俺にはスキルが無いらしい。
だから周囲は絶望していた、と。
いや、俺だってスキル欲しいけど、無いものは無いんだよ!
でも国王様が
「スキルは後から発動するかもしれない」
と言ってくれたおかげで、冷たい視線は少し和らいだ。
そして国王様は続けた。
「セートを召喚したのは、この国の聖女なのじゃ。」
あの綺麗な声……あれは聖女の声だったんだ。
「聖女はセートを守るために結界を張り、その直後、魔族にさらわれてしまったのじゃ。」
「えっ……!」
俺を守ってくれた直後に……?
「恐らく魔族は、召喚で聖女が弱る瞬間を狙ったのじゃ。魔族の狙いは勇者の命じゃった。」
「じゃあ聖女は……俺の身代わりに……」
「そうなのじゃ。じゃからのうセート、聖女を救ってやってはくれんか?」
スキルも無い俺にできるのか?
でも、俺を庇ってくれた聖女を放っておけるわけがない。
状況は……まあ、断れない雰囲気だし。
スキルが後から発動することを祈りつつ、俺は聖女救出の旅に出ることにした。
まだタイトルのシーンまでたどり着けず…。
次回ようやくタイトル通りになる予定です;




