表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

光について

「猫も一緒に住んでるんだ」

 初めての電話で最初に聞こえたのは猫の鳴き声だった。


「猫となら言葉が無くても分かりあえるから」


 言い訳みたいな声。


「言葉を大事にするあなたが、そんなこと言うんだ」

「言葉なんて。無いほうがいいよ」


 あなたの言葉が好きだった。

 幾千幾万の砂粒の中、顔も知らないあなたの光に目を灼かれた。


 にゃあ。猫が割り込んで返事をする。


「月が見えるでしょう。きっと二人とも日本に住んでるから」


 夏の青さの真ん中に、

「確かにあった」

 輝くよりだいぶ前の月。


「二人で同じ光を見る。きれいだねって二人で感じる。ほら、」

「距離なんてゼロ、誰よりも隣どうし」


 どうして言っちゃうの。

 あなたは笑う。


「多分誰も気づいてないよ、光がここにあるって」

 だからきっとありがとう。


 二人で月を見る。

 青い空、赤い空、黄金色の空。

 時々思い出したようにあなたは歌う。僕は歌う。猫は歌う。


 体温も身体も言語もない、

 ここにはあなたの光だけがある。

「二人同じ世界を見たい。違うことを考えながら、ただ綺麗だねって」


 例えば僕らが猫と人ならそれで十分なのに。


「月が、」

「きれいですね」


 言葉だけが重なり合って夜に溶ける。


 本当にそれ以外、何もいらないのに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  素敵な物語だと思います。  二人の少し触れれば壊れそうな関係性と時折入る猫が好きです。  大人の男女の静かな恋愛を感じました。  文字数制限の関係もあるとは思いますが、「月が綺麗ですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ