チャーラン村へ
――――『メリサー王国』の隣にある国
『チャーラン』。国というより村だ。
海辺が近くにあるため漁業が盛んだ。……まあそれ故に魚臭いのだが。
「やっと着いた……」
ジュードは歩き疲れてしまったらしく私がおぶっている。
「にしてもここの国、なんか活気がないな」
これも天災というやつのせいなのか。街中を見渡すとやつれた国民ばっかりだ。
とりあえず私は国王に会いたいので人に聞くことにした。
「すみません、あのー……」
私が肩に触れた瞬間だった。こちらに向いた顔。
「なぁんかよぉうですかぁー」
老人。だが、人間ではない。老人の顔にはたんこぶのような腫れ物が数十個できていた。
「ぁぁ……」
私が手を離した途端に倒れてしまった。
「一体……どういうことだ?」
とにかく村長に聞いてみなければ。
――――この村で一番大きな建物。
「あそこかな」
周りと違いひときわ大きな建物。中に入ると受付があった。
「すみませぇーん……」
声をかけるが誰もいない。受付の奥を見てみるとかすかに扉が開いていた。
(行ってみるか……)
ジュードをおぶいなおし奥に進む。
一応扉にノックをする。
「どうぞ、入ってください」
(ッ!?)
人がいるとは思わなくてかなり驚いた。
そっと扉を開ける。
「はッ!」
目に映る光景。ベッドの上に若い男が寝ている。しかしその顔にはさっきの老人のような腫れ物ができていた。
「おやおや、驚かせてしまいましたね」
「あ……あなたは」
「私はこの村の村長のノギです」
驚いて動けなかった体が『村長』という言葉を聞いて体が動き始めた。
「私はリンカ・アーランドと言います」
「そちらの方は?」
「私の弟のジュード・ファーランドです」
私はここにきた理由を話した。
「なるほど、メリサー王国からの助太刀と。これは助かりますねぇ」
「……あなたの顔のそれはなんですか。ここにくる前に老人に会いましたが同じようなものがありました……」
しばらくの沈黙が続いたあとノギさんは体を起こした。
「えッ!?」
起き上がると同時に服がはだけた。
体を見ると顔と同じものが小さいが体中にできていた。
「驚かせてすみません」
「その……腫れてるものはなんなんですか?」
そう聞くとノギさんは何があったのかを話し始めた。
――――二ヶ月前……
いつものように魚を釣りに船を出した。この日も大漁だったらしい。だが、ある船員が何かを見つけた。
「なんだこれは?!」
魚。いや、魚だったものと言った方が正しい。全体に腫れ物ができていてとても魚には見えなかったらしい。
そして、あの魚を見つけた船員は次の日に魚と同じような症状が現れたらしい。やがて村全体に広がり今では壊滅状態
「なるほど……」
魚から伝染したと。病気……あるいは呪いか?どちらにせよ調査をしないとわからないな。
「どうですか……何かわかりましたか?」
「……今はまだ何もわかりません。ですがこの問題、私が解決して見せましょう」
私の言葉を聞きノギさんは安心した顔をした。
「ありが……うッ」
突然胸を抑え苦しみ始めた。
「大丈夫ですかッ!」
「はぁはぁ……」
ノギさんはまだベッドの中に戻った。
「すみません……少し休ませてください。村の人々は山のふもとの宿にいます。その人たちは感染していないので安心してください」
私はノギさんのことを考えてそっと部屋を出た。
「ふわぁ〜〜」
ジュードが目を覚ましたようだ。
「あれ?ここどこお姉ちゃん」
「あっ起きた」
私は山のふもとに向かうまでジュードに今までのことを話した。ジュードは『ヘェ〜』と言ってあまりよくわかったないようだ。
宿に着く頃にはすっかり暗くなっていた。
「ノギさんが言ったたのはここかな?」
木造建築の宿。そしてかなり大きい。
「今日はここに泊まるの?」
「村長が使っていいって言ったたからいいんじゃないかな」
宿の扉を開ける。すると中には数十人広間に集まっていた。その中の男がこっちを見ると
「誰だお前ッ」
かなり強い口調でそう言ってきた。
「……ノギさんがここを使っていいとおっしゃっていたのですが」
「ノギさんが?」
その男は周りと目を合わせた。
「す……すまねぇな。ノギさんがいうなら間違いねぇや」
「いえ、心中お察しします。周りの人が急にいなくなったんだから……」
自分の大切な人が急にいなくなるのは寂しいもんな。
「……」
「お姉ちゃん?」
「……どうしたのジュード?」
ジュードが心配そうな顔をしている。周りもこっちをみている。
「なんで泣いてるの?」
「えっ?」
私は涙を流していたらしい。
「あぁ、ごめんね。お姉ちゃんちょっと疲れちゃった。
今日はここに泊まってもいいですか?」
「あぁ……それはいいがほんとに大丈夫か?」
「大丈夫です」
「それならいいが……」
私は涙を拭き取りながら部屋の鍵をもらった。
何も言わずに部屋に向かった。
(なんで泣いたんだろう)
部屋の中に入りベッドに寝転がる。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配しなくていいからね」
私はあらかじめ買っておいたパンをジュードに渡した。
「私はちょっと外に出るからそれ食べて待っといてね」
「わかった〜」
ジュードを置いて外に出る。扉を閉める。
「おい、ちょっと面貸しな」
扉のちょうど隠れる部分にさっきの男がいた。
「……わかりました」
二つ返事で承諾した。
――――外に出ると海の匂いをのせた涼しい風が吹いてきた。
「どぉだ、いい風だろ」
「はい。とてもいい風です」
どうやら私のことを心配して呼んでくれたらしい。
「この風を受けながらする釣りはまた格別なんだよ」
「そうなんですか?問題が解決したら釣り、やってみようかな……」
そんな話をしていると物陰からゴソッと音がした。
私は男を自分の後ろに隠し手を合わせた。そして徐々に手の間隔を開いていく。
「あんた、それは……!」
私の手には杖が現れた。
魔術師としての基本。杖を召喚する。
私は杖を構える。
「….ッ!」
現れたのは低級モンスターの中でも上位、『ウルフ』が三体現れた。
「あなたは宿の中に戻ってくださいッ!」
「はっ、はいッ!」
私からすればなんの問題もないモンスターだがこの人に怪我を合わせるわけにはいかない。
「ガウッ!――――」
ウルフが一気に飛びかかってきた。
「攻撃魔法『ノックノックノック』ッ!」
私の後ろから魔法陣が三つ。その魔法陣から拳が三本出てきてウルフをなぎ倒した。
「キューン……」
倒れ込んだウルフに手を触れる。
(なぜここにウルフが出てきたんだ?)
そう思っているとウルフの体から煙が出てきた。
(えっ?)
煙がウルフの体から出終わった。
「い……今のは!」
人の形をした煙になって消えた!?
「……しかもあの見た目は……人魚か?」
――――一方その頃
「村に来た者の情報はわかったか……」
「まだ魔術師ということしか……」
「そうか……わかったら早急に連絡を」
「わかりました」
チャーランから少し離れた海の中……
「あの村を全滅させればあの人に褒められるぅ」