【第一話】人間とは、愚かである。
世界がどんなに残酷であろうと、小さな世界しか知らぬ人間にはそれは分からない。
己が力を弁えぬ時、そこに未来はない。
序篇 籠の中の鳥
《自動制御システム57%損傷》
無機質な機械音声と警告音が操縦席の中に鳴り響く
手元のスイッチを切り替える。
《アシストモードからマニュアルモードへ移行》
一瞬制御を失われた衝撃が体に伝わる。
「こいつはもうダメだな」
自分の搭乗している機体を乗り捨てる。
僕のモットーは“最後まで”だ、そう思いながらブレードを取り出し起動する、敵に斬りかかる。
【エインヘリャル】
この人2〜3人分ほど大きな搭乗型兵器に生身の人間が勝てるわけが無い。
仕方ない、そう思い左手にある量産型魔晶石に意識を集中する。
それとほぼ同時に相手の銃口がこちらへ向けられる。
「バースト」
そう言い放った途端当たりが閃光に包まれる
レーザー光線みたいなものだ。
閃光と銃声
《状況終了:Draw 評価:B》
「まあそんなものか」
そう思いながら訓練用操縦席から出る。
「もう終わったの?これ、使っても?」
銀色の髪の長い赤と紫のオッドアイを持つ少女が言った、そう言ったのはヘレーネ・フォン・メンツェル。
この僕、神音 大楽と同じノイベルク士官学校の同期であり同クラスそして僕はへレーネを護衛する人間である、しかしへレーネはその事を知らない。
そんなことを思いながらも答える。
「ああ、問題ないですよ。」
「そ、じゃあ遠慮なく使わせてもらうわね。」
ここノイベルク士官学校は帝国にある4つの士官学校のうちの一つだ。
ここは陸軍の管轄ではあるものの、帝国の3つの有力貴族のうち、メンツェル家の運営下にあり、ヘレーネはそこの長女という立ち位置である。
彼女はメンツェル家の長女であるが、その下には男がおらず、婿養子が来るまでは次期当主である。
僕は大皇国が生まれだが、父は大皇国、母は帝国のハーフだ。
父は大皇国の有力貴族であるらしいが、母は父の愛人だったが、先の大戦で父は戦死、その後父の弟が神音家の実権を握り、権力争いの火種になりそうである僕達を嫌う形で神音家から追いやった。
そのため行き場を失った僕達だが、母の知り合いであるメンツェル家の当主が丁度同じ年の娘の護衛を探しており、子供とはいえ大皇国で父からその手の教育されていた僕が抜擢され今に至る。
普通の護衛と違い、と、まあ護衛系忍者みたいなものだ、まともに話したことなんてほとんどない、向こうからの認識なんて中学から同じ学校の奴くらいだろう。
そして長年帝国は共和国と対立しており、先の大戦、世界初の核戦争の発端はここにあるといってもいい。
先の大戦では一般市民の生活のレベルは大幅に下がったが、軍事技術だけはとてつもないほどに発展した、その代表例が魔術と、エインヘリャルだろう。
魔術、その存在自体は先の大戦の開戦前はなかったが、核爆弾などが大量に使用され、放射線を浴びた子供達が変異した結果が魔術だ、魔術というものが発覚してからすぐに研究を開始した帝国は魔力をほかの力に変える技術を確立し、それで最初に作られたのが
―エインヘリャル―
魔力を動力源とした2~3m程の人型の機械で、実際にそこに人が乗り込むモデルと、遠距離からリモートで操作する2タイプがあるが後者の方は魔力の供給が安定しないため短時間の局所的な場面でしか使用されない。
動力源を魔力としているこれらだが、魔力の個人差による活動時間などにはあまり差異がなく、どちらかというと兵器の方に差が出るため、そこを統一すべく兵装は基本実弾兵装となるが、一部のパイロットは魔力を使用した兵装を使うこともある。
そしてエインヘリャルはとても強力な兵装となるために帝国をまねた各国がエインヘリャルをまねたものをたくさん作った、それらのことを特に劣化した物と呼ぶ、合衆国や共和国などが共同開発で作ったクォルプタレースなどは魔力を高い純度で変換することができず電気などとのハイブリッドであったりする、しかし電気が主体となっているがゆえに扱える兵装も強く、帝国はクォルプタレースなどと呼んでいるが、両者一長一短といったところである。
そんなことを考えているとヘレーネが降りてきた
「あら、まだここにいたの?」
「考え事を少ししていたので。」
「あら、そうでは授業に間に合わくなる前に行きましょうか。」
「そうですね。」
次は...歴史だったかな? ともあれ最近になって思うのだがこの仕事の内容が故にストーカを疑われそうだな、今度から気にしておこう。
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「であるから、今の状態になったというわけだ」
歴史の授業である、この授業を説明すると要するにこれである。
10年ほど前に軍備増強をし過ぎた帝国と、軍事力が高かった共和国が対立しおきた戦争、世界大戦の説明である、核が大量に使われた結果、人類の文明は衰退した、しかし魔力も得た、まあその魔力を兵器として使うのも人の愚かさだろうが、そのような説明からつい最近までになる。
要するにまだ休戦というだけで終わっていないのだ、戦争は。
いつどちらかが破棄するだけで始まってしまうのである。ただでさえ軍人が少なくなったというのに。
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いつも通り護衛をしながら帰っていた時である。
突然サイレンが鳴り響いた。
《空襲警報、タダチニ防空壕へ避難セヨ。》
私は理解した。人は愚かだと。
初めてですので至らない点多いと思いますが。
修正、頑張っていきたいと思います。