急速旋回
「敵襲!!敵襲!!直ちに戦闘態勢!!」
サイレンが響き、甲板は怒号が飛び交う。今俺は戦艦大和の甲板にいる。そして俺の目の前には巨大なスケルトンがいつ攻撃してきてもおかしくない状態で俺たちを赤く光った目で上から見ている。
「目標、左舷スケルトン!!」
乗組員が戦闘準備でドタバタしている中、俺は突然現れた巨大なスケルトンに呆然としていた。すると近くのハッチから舞奈佳さんが現れた。
「龍くん!!これ!!」
そう言って舞奈佳さんが俺に近づいてアルフレッドさんから貰った銃を渡してくれた。
「あ、ありがとうございます!!」
「気にしないで。とりあえず、あなた達は船内に避難、安全を確保して!!」
「え!?俺戦います!!」
「駄目、あなた達をこれ以上危険な事には…」
舞奈佳さんと俺が会話していると背後で第一砲塔の主砲が俺たちがいる方向に旋回し始めた。
「とにかく一旦ここを離れて、それから…」
突然、何かが海面から浮上したのか水の轟音が聞こえてきた。そしてそれを見たベルンハルトさんが少しズレた自分のガスマスクを直した。
「どうやら、相手は待ってはくれないようですよ。」
そこにはスケルトンの左手が天高く上がっており、スケルトンの指の先端がこの空間の天井に当たって、当たっている部分だけ水が大量に盛れ出していた。どうやら、スケルトンは左手でこの船を叩き割るつもりだ。
「直ちに撃てる副砲、対空砲は全て目標の左腕を狙い目標に打ち込め!!目標の攻撃を阻止せよ!!あんなもの一発でも食らったらこの船は真っ二つだ!!」
長門さんの指示が響いた直後、戦艦大和から一斉砲火が開始された。とてつもない轟音、まるで至近距離で花火が炸裂しているような音だ。それに続いてベルンハルトさんが仲間に指示を出した。
「総員、ありったけの鉛を打ち込め!!隊長の仇をとるぞ!!」
「おおおおおお!!!」
隊員は雄叫びを上げながら銃を構え、引き金を引いて発砲した。隊員が放った鉛がほとんどスケルトンの左手に直撃している。凄い精度だ。他にも対空砲の弾や副砲の弾が当たり、スケルトンの左手からは火花が散っていた。しかし、どうやら効果はあまりないようだ。
「ダメか、こうなったら主砲しか効果は無さそうか…」
そしてとうとう、スケルトンが左手をこっちに向けて叩きつけ始めた。
「主砲旋回完了まであと何秒だ!!」
長門が慌てた声が伝声管から聞こえてくる。
「あと30秒弱かかります!!これ以上は旋回速度上がりません!!」
「くっ、ダメだ間に合わない…」
上を見上げると明らかにあと20秒もしないうちにこの船が叩きつけられる。
「え、三郎さん!?ちょっ…」
突然、伝声管から三郎さんに変わった。
「おい長門!!儂だ!!」
「三ちゃん!?なぜそこに…」
「そんなことはどうでもいい!!どこを狙えばいんだ!!」
「スケルトンの左肩の関節部分を狙えば攻撃は止めれるはず!だけど仮に止めれても既にスケルトンの手が大和の真上にある!!あんな質量落ちてきたらタダでは済まない!!」
「それならこちらが何とかしよう!!」
ベルンハルトさんの声が伝声管から聞こえた。
「ありったけの吸着地雷を我々が打ち上げてあの手を破壊できる!!今その準備中だ!!少しでもあの攻撃の勢いを止めてくれたらこっちの準備は間に合う!!」
「分かった!!そちらは任せる!!」
「長門!!旋回角度は!!」
「左に100度!!仰角は既に合わせてある!!旋回さえ済めばすぐに撃てる!!」
「100度だな!!あともうひとつ!!」
「なんだい?」
「今すぐ第1主砲に修理班を向かわせろ!!」
「え、第1主砲のパーツは最近点検で新品にしたし何も壊れていないはずだが、修理班を向かわす意味が…おい、まさか!!」
「悪いが、少し無理をしてもらおう!!」
そう言った途端、三郎さんが第1主砲の後頭部の左側を両手で押し出した。その瞬間、主砲旋回装置のモーターが外れ、砲塔の根元から鉄が擦れる音と共に火花を散らしながら砲塔がものすごい勢いで旋回し始めた。そして瞬く間に主砲の旋回角度は90度に達し、三郎さんはすぐさま主砲の反対側に回り、同じように押し出した。すると今度は砲塔からまるで列車がブレーキをかけた時のようなキキーッという音が聞こえ、そして主砲は丁度100度で旋回が停止し、そして三郎さんは叫んだ。
「撃てぇ!!!」
次の瞬間、第1主砲からとてつもない爆発音と共に砲弾が発射されスケルトンの左肩の関節を貫き、スケルトンの左腕が胴体から分離した。スケルトンからは断末魔のような叫びが聞こえる。だが、まだ窮地は脱出していない。残骸となった左手がかなり近くまで落ちてきている。
「ベルンハルト!!急げ!!」
「よし、間に合った!!」
ベルンハルトさんの周りには大量の筒が設置されており、その先には吸着地雷が固定されている。
「一斉射撃、撃て!!」
ベルンハルトの合図とともに隊員全員が一斉に筒に繋がっている紐を引っ張った。その瞬間、大量の吸着地雷が発射された。発射して3秒後、吸着地雷のほとんどが左手にひっつき、まるで祭りの花火の打ち上げのフィナーレのような勢いで爆発した。上空は爆煙で一時見えなくなったが、空から無数の白い欠片が降り注ぎ、まるで雨が降ってきたかのように海からザァーと音が聞こえ、左舷に巨大な腕の骨が巨大な水飛沫と音を出しながら落下した。次第に爆煙が晴れるとそこには左手は跡形もなく吹き飛んでいた。どうやら無事、攻撃を無力化したようだ。船からは歓声が沸き起こった。
「皆よくやった!!だが、これからが本番だ!!」
長門さんがそう言った瞬間、全員の指揮が高まり、全員が雄叫びを上げた。その光景を長門さんが艦橋から見ていると背後から船員が1人、報告を伝えに来た。
「長門艦長、第二、第三主砲準備完了。何時でも攻撃可能です。」
それを聞いた長門さんは静かに頷いた後、双眼鏡でスケルトンを見ながら右の口角を少しあげた。
「反撃開始だ!!」




