救いと希望
揺れる錆び付いた船内の中、俺の咄嗟の発言で武装した隊員たちがざわめいている。
「…どうするつもりだ?」
「触るだけでいいんです、僕が。そうしたら何か起こるかも…」
それを聞いた隊員の1人が声を出した。
「隊長、どこからか来た者の事は信用できません!!それに…」
すると隊長は反対していた隊員に発言を止める様に手で指示を出した。それを見た隊員は直ぐに口を閉じた。
「根拠は?」
「無いです。」
「…よろしい」
隊長はアルバンさんから少し離れ、俺をアルバンさんの近くに連れてきた。
「どの道ゾンビになる、打つ手段があるなら未知でも打つまでだ。だが、それで我々に危害が及べば、君の命はないと思え。」
「…分かりました。」
俺の頬に冷や汗が滲み出る。俺はゆっくりと苦しんでいるアルバンさんの胸元、丁度心臓の部分に手を当てた。
…しかし何も起きない。相変わらずアルバンさんは苦しんでいる。
「やはりダメか…」
隊長がそう言った時、隊員の1人がなにかに気づいた。
「隊長、見てください!!」
アルバンさんの体の中から紫のオーラのようなものがゆっくりと出てきていた。それはまるで人の形をしている。たちまちそのオーラは完全にアルバンさんの体から離れ、消えてしまった。それを見た隊長がアルバンさんに近づいた。
「アルバン、聞こえるか?アルバン。指の数はわかるか?」
隊長がアルバンさんの目の前で4本指を出す。
「…隊長?えぇ、見えます、4本。見えます。」
それを聞いた隊員達が喜んでいた。「奇跡、奇跡だ!!」と。
アルバンさんが立ち上がろうとするが隊長がそれを阻止した。
「ゾンビ化は恐らく止まったが傷は残っている。治療が済むまでそこで座ってろ。」
「ありがとうございます、隊長。」
すると隊長が俺に向かって右手を差し出した。
「感謝する、少年。君のおかげで仲間を1人救うことが出来た。」
俺は右手を差し出し、握手をした。
「助かって良かったです。」
「君の名は?」
「山野 龍です。」
「山野 龍…」
俺の名前を聞いた途端、何故か少し考えている仕草をしていた。
「…なにか?」
「いや、なんでもない。龍くんと呼ばせてくれ。」
「はい。」
「私の名はベルンハルトだ。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「ところで後ろの少女は?」
俺は後ろにいた赤美ちゃんを連れてきた。
「赤美です。」
「赤美か、何を食っているんだ?」
「飴玉です、気に入ってからずっと食べているんです。」
すると赤美ちゃんが缶から飴玉をひとつ取りだし、隊長に飴玉を差し出した。
「あげる。」
「あぁ…、ありがとう。助かる、丁度食糧難だったんだ。」
そう言ってベルンハルトさんが受け取った。後に赤美ちゃんはアルバンさんも含めた隊員全員にひとつずつあげて行った。隊員達が赤美ちゃんと仲良くしている所を俺とベルンハルトさんとアルバンさんと見ていた。
「君の力、不思議な能力だな。どんな能力なんだ?」
「僕にも分かりません。…ただ、この手帳の指示で」
「手帳?」
俺は手帳を取り出し、ベルンハルトさんに例のページを見せた。
「己で書いたのでは無いのか?」
「それが不思議なことにこの手帳、書いても消えるんですよ、インクでも。」
「不思議な…手帳だな。奴が興味を持ちそうな物だな。」
「奴?」
「所で、君はどうやってここに来た?」
「それが、海に落ちてからこの船に乗っていて、甲板から落ちてここに。」
「甲板から落ちて?甲板に落とし穴でもあったのか?」
「いえ、地面が崩れて一気にここまで…」
それを聞いたベルンハルトさんは驚いていた。
「崩れただと!?」
「えぇ、それがなにか?」
突然、ベルンハルトさんは俺に詰め寄ってきた。
「山野 龍くん、我々と同行してほしい。」
「え?」




